DESIGNWORKS Vol.04
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になっていて良いと思います。不整形と整形の取り合いがテーマだったと思いますが、もちろん整形なものが中心にあってフォーマリティーをどう解くかは大事で、全部シンメトリとか軸線っていうのはファシズム的で良くないって言う考えはあるけれども、形式感覚は大事にする。その中で心理的な「逃げ」があるというのがとても良いと思いますね。私は普連土学園※5という大江宏(※5)さんが設計された学校がとても大好きなのですが、それは正方形の単位が市松のように並んで内側に廊下があって、外側にはベランダのような場所が付いていて、そして外階段が所々にあるので二方向避難がランダムに出来る。学校側はそういうベランダがあるので窓を生徒に自分たちで拭かせるという教育にもなると言っていますし、大江さんは「ああいうふうにあると、むしろ逃げがあって良いだろう」と仰っていましたね。一見ランダムだったり、ちょっとした驚きがあったりする場所。つまり心理的「逃げ」が有る場所ですね。モニュメンタルに造られたものが好きな人もいるのかも知れないけれど、目立たずいられる、それぞれ好みの場所が見つけられるようなゆとりがある場所というのも、学校においては非常に大事なのだと思いますね。それらの点で、 今回見せて頂いた作品は良く出来ていたと感心しました。———では最後に竹中工務店設計部に対してご意見を頂けますか?鈴木 施工がある意味では前提条件になって設計がされる。そのメリットもあるけれど、 逆に言うとだんだんひとつのタイプに整理されていく可能性もある。ですが、今回の作品からは、これが同じ組織の設計とは思えないなと感じました。それは設計・施工のあり方にとって非常に重要なものじゃないかと思いますね。同じ組織の中にいても、作品を見た他の設計部員から「こういうことをやっているんだ」とか「こういう発想もあり得るんだ」という応答があるし、各自が自由かつ主体的に動いている印象を受けます。会社というより学スクール校みたいな雰囲気を受けましたね。今後のご発展をお祈りしています。———本日はありがとうございました。(聞き手:関谷 和則・横田 隆志・田口 裕子・岡田 朋子)鈴木 博之(スズキ ヒロユキ)/建築史家1945年東京都生まれ1968年東京大学工学部建築学科卒業1974年-東京大学工学部専任講師・助教授現在 工学研究科建築学専攻教授1974-75年ロンドン大学コートゥールド美術史研究所留学(英国政府給費留学生)1984年工学博士1993年ハーヴァード大学客員教授(美術史学科)1997-8年日本建築学会副会長2000年-早稲田大学客員教授(併任)2005年紫綬褒章 受章著書建築の世紀末(晶文社)建築の七つの力(鹿島出版会)東京の「地霊」(文藝春秋)明治の洋館100選(講談社)日本の「地霊」(講談社現代新書)都市の記憶(白揚社)他多数※1 ヴォーリズ(William Merrell Vories):1880年アメリカ生まれの建築家。後に日本に帰化。日本で数多くの西洋建築を手懸けた。代表作は同志社大学啓明館(国登録有形文化財)など。※2 HACCP(ハセップ):誠心調理師学校の作品ページ(P.20)参照※3 「首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律」工業等制限区域での工場及び大学等の新設及び増設を制限した法律。既成市街地への産業及び人口の過度の集中を防止し、都市環境の整備及び改善を図ることを目的とした。既に廃止されている。※4 松村正恒:1913年生まれ。日土小学校(ひづちしょうがっこう、1958年)は「日本の近代建築20選」、「日本におけるDOCOMOMO100選」に選定されている。※5 大江宏:1913年生まれ。建築家。普連土学園(ふれんどがくえん、1968年)は「日本におけるDOCOMOMO100選」に選定されている。Interview

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