DESIGNWORKS Vol.05
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Interview小野田泰明氏に聞く今回はインタビューに先立ち、東京本店作品から、東宝スタジオ、東宝シアタークリエビル、ミロードモザイク通りを視察して頂きました。小野田先生は建築計画者として多様な立場から設計のプロセスに関わられていますが、今回の作品について印象をお聞きするにあたり、まずは、先生の建築計画への関わり方を含め、お話を伺いたいと思っております。綿密さと曖昧さ小野田 建築計画者として実際の建設プロセスに参加する場合、クライアントのエージェント、共同設計者、設計コンサルタント、という三種類の関わり方をします。せんだいメディアテークでは市のエージェントとして関わったのですが、コンペのプログラム・企画から、設計者選定後の設計支援、開業後の企画・運営サポートと長期に渡ってお手伝いさせて頂きました。共同設計者の場合は、面積配分、機能構成、そして実際の平面デザインから建具構成など、利用者の行為に関わるところを中心に、建築家と一緒に設計します。設計コンサルタントとして関わる場合は、設計者の下について施設型についての知識供給やプログラムのサポートなどを行います。———自治体のホールや学校などの施設を多く計画されていますが、公共施設と今回掲載作品のような民間施設とでは計画の進め方に違いはありますか。小野田 民間施設は公共施設と目的が違いま小野田 機能変更と耐震補強を一体で行われた点がいいですね。PFI※1なので最初にパッケージで考えなくてはいけないからそうなったのでしょうか。耐震補強は学校などでも多く行われていますが、行政内で耐震改修を指導するルートと教育施設の機能変更に関するルートとが別々になっているので、耐震改修にあわせた機能変更が中々やれない状況にあります。ですから耐震改修だけ行われて建物としては保存されても、21世紀の学校としてふさわしいかについては疑問を感じる例がかなり多いんです。———PFI手法による公共資本整備の可能性についてはどうでしょうか。小野田 難しい質問ですね。もともと英米法の体系の中で開発された仕組みを大陸法の体系を持つ我が国に移植したので様々な限界がある訳です。詳しくは、僕たちの論文※2を参照して頂きたいのですが。このPFIの問題の一つに、事前に示される要求水準書の不完全性をどこで解消するかという点があります。イギリスのPFIでは、事業者決定後に交渉で双方が了解の上、それを補っていきますが、日本の場合は会計法の制約もあって、ほとんどが入札-契約という形にならざるをえない。つまり、要求水準書の内容調整が契約後にずれこみ、非常に窮屈な状況の中で、設計の再調整を行う必要が出てくることが多い。そういう厳しさを知っていたので、きらめきプラザでなされている様々な試みには正直驚きましたし、それを実現された技術力はさすがだと感じました。ただ、機能の配分については、 すからね。例えば同じホールでも東宝シアタークリエなどは、どのように営業するかが、あらかじめ綿密にくみこまれていて、その上で設計者がクライアント側の技術者などと調整しながらそれを具現化していくという感じだと思います。それに対して苓北町民ホールのような公共施設の場合は、そこまで詳細な事業計画はないし、使う人がアマチュアだったりします。目的も「地域コミュニティを活性化する」といった公共性を含み込んだ幅広なものであることが多い訳です。そうした抽象的度合いの高い要望を、どのようにしたら最高の形で具現化出来るか、というのが私に期待される事柄でしょうか。最近は、建築の計画だけでなく、運営コストや人材配置のシミュレーションと連動しながらの作業が多くなっています。———規模や費用の設定含めプログラムを大きく変えるような方向の議論になる場合もあるのですか?小野田 最近では、予算は減ることはあっても増やせることはないですから(笑)。でも、基本的な機能は満たしながらもそれを少し組み替えたり、ちょっと違うものを足したりするだけで、色々な相乗効果があらわれることがあります。そうした仕掛けをお手伝いして、その結果、公共性が獲得されていく。そういったほうが正しいかもしれません。———きらめきプラザでは、PFIというスキームのなかで、耐震補強に合わせて、プログラム自体の変更をおこなっています。東宝シアタークリエビル「きらめきプラザ」写真:(株)ミヤガワ写真:古川泰造都市再生の試み‐建築の公共性‐Interview
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