DESIGNWORKS Vol.09
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になるという構図ですよね。再帰的な行楽文化ってわけでしょうか。温泉で、昔の人の入浴をリピートしつつ自分をうまくレイヤーとして重ねて2重に楽しむ。成熟ということでしょうか。———都市が一回成熟してワンサイクルを終えたという感覚で見るセンスが必要ですね。土居 現代社会の中では個人が原子となっています。だから個人と社会の関連付け方をもう一回考えなきゃいけない。社会性というのはその関連付け方です。そういう役目を担う空間が、小さくてもあちこちにあるというイメージでしょうか。世田谷や杉並区の住宅地は成熟しています。連想するのは、たとえば伊東豊雄さんが作った座・高円寺※5とか。世田谷区には個人美術館が多いとか。ちょっと散歩するだけでアート巡りができます。隈さんも個人美術館の改修をしましたね。戦後、アーティストがまだまだ田園的だった世田谷に移り住み、アトリエ兼住居を作ったんですね。それがいまは個人美術館になっている。世田谷美術館のサテライトになっているものもあります。世田谷画家ユニオンみたいなものもあって、会員は200人ぐらいいるそうです。それが広い世田谷区のなかに点在していて、見えないネットワークを形成しています。それが住宅地にある種の雰囲気を与えているということだと思います。世田谷区は戦後住宅地の成熟のひとつの良いサンプルです。———本日はありがとうございました。(聞き手:原 弘・川建 康・重野 匠)土居 義岳(ドイ ヨシタケ)/建築史家・フランス政府公認建築家1956年高知県生まれ1979年東京大学工学部建築学科卒業1983年フランス政府給費留学生としてパリ・ラ・ヴィレット建築大学、ソルボンヌ大学に留学1989年東京大学大学院建築学専攻・博士課程満期退学1990年-東京大学工学部助手、九州芸術工科大学助教授、同教授などを経て現在九州大学大学院 芸術工学研究院 教授(工学博士)著書「言葉と建築 ― 建築批評の史的地平と諸概念」(建築技術)「対論 建築と時間」( 磯崎新と共著・岩波書店)「アカデミーと建築オーダー」(中央公論美術出版)「建築キーワード」(住まいの図書館出版局)ほか多数※1 組物(=斗栱):柱の上部に設け軒の荷重を支える。斗と肘木から構成され、構造材でありながら装飾としての意味合いも大きい。※2 一手先組:組物の形式の一つ。壁面から肘木を一段持ち出したところで桁を支える。出組。※3 ヴィオレ・ル・デュク(Viollet-le-Duc):1814-1879年。フランスの修復建築家、建築史家、建築理論家。ボザール(国立美術学校)の古典主義に反対し、ゴシック建築を合理主義の観点から体系化。(「言葉と建築 ― 建築批評の史的地平と諸概念」建築技術より)※4 ウィーンゼセッション:19世紀末のウィーンで結成された、総合的な芸術分野において新しい造形表現を目指した芸術家組織。ウィーン分離派。※5 座・高円寺:東京都杉並区立杉並芸術会館。小劇場や区民ホールなどを含む複合劇場施設であり、舞台芸術の作品上演、人材育成などを行っている。Interview
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