DESIGNWORKS Vol.10
4/36

Special Issue竹中環境コンセプト2050 デザインコンペティション“環境建築を考える”竹中工務店は「環境の竹中」を目指し、2050年には標準的な建物でCO2排出量の50%以上を削減、先進的な建物でカーボン・ニュートラルを実現することに取り組んでいます。この長期目標に向け、新たなコンセプトの構築と具体的行動を開始しています。地域の自然、気候、生物多様性、といった「自然のシステム」では、自然と交歓し再生する建築を、社会、経済、文化といった「人のシステム」では、新しいライフスタイルを生み出し感性や創造性を誘発する建築を創造することを目指しています。同時に革新的な環境負荷低減技術の開発や導入に加え、資源循環型の建築生産システムやストック建物の有効活用を積極的に推進していくことが必須となります。そのような中で、2050年に向けた建築を社内コンペティションとしてアイデアを公募し、社外専門家による公開審査と、次世代環境建築をテーマとしたシンポジウムを開催しました。このコンペは、車のコンセプトカーに相当する「環境コンセプトモデル」の提案を求めるものです。「人と人、人と自然の良好な関係を考えた次世代の建築」をテーマに、設計・施工・その他が部門を超えチームを編成、各本支店から43作品の応募がありました。1次選考通過の17作品について7月2日東京本店2階ホールを主会場に7本支店、タイ竹中をTV会議で結んでの公開審査が開催され、600名近い参加者があり、小玉祐一郎教授、川瀬貴晴教授、三谷徹教授、当社副社長渡邊、服部の審査員5名と各プレゼンターによる活発な議論が行われました。環境コンペ・シンポジウムWG髙井 啓明、小川 知一、酒井 利行、首藤 泰彦、遠山 幸太郎、平井 雅子、松隈 章、向山 雅之、山口 広嗣負荷はこれからの全ての建築に求められる必要条件と考えるべきであろう。その上で魅力的なデザインであることが望ましいのは言うまでもない。むしろその方が美しく、情熱的で、心地よい、魅力的な建築が創られると考えたいものだし、そのように考える根拠も少なくない。例えばレンゾ・ピアノの幾つかの建築などはそのよい例ではないだろうか。そのピアノがロジャースやフォスターらとREAD※4という研究会を立ち上げたのは1993年のことであった。環境建築はどこをめざすかともあれ、竹中工務店はいちはやく地球環境問題に取り組んできた。社是としてデザインに重きを置いているのは定評があるし、持続可能なデザインとして評価も高い建築も数多く発表してきた。その竹中が、社内で環境コンセプトデザインコンペを実施するという。技術的洗練とデザインの革新をどのように両立させるか、地球環境をキーワードに新たな地平をどのように切り開くのか、竹中ならではの試みに期待したのは私だけではないだろう。コンペには海外も含め数多くの参加があった。第2次審査は、激戦の1次審査を通過した案の公開審査で、地方の会場ともテレビ回線でつながれ、熱のこもったプレゼンテーションと質疑応答が1日がかりで進められた。2次への進出を果たせなかった提案にもプレゼンテーションを聞いてみたいと思うものが少なくなく、時間の都合とはいえその機会がなかったのは惜しいことであった。このコンペでは2050年を想定した環境配慮総評 審査委員長:小玉祐一郎建築における地球環境問題建築関連の学会や業界団体が連名で「地球環境建築憲章」※1を発表したのは2000年であった。その後、COP3京都会議※2の約束を日本はどのように達成するか、現実的な議論がされている間にも地球環境に対する国際的な危機意識は強まり、その後の負荷削減目標はどんどん高くなってきた。政権交代をした日本政府は、2020年まで1990年比25%削減※3という目標を掲げ国際的な高い評価を受けた。産業界は、高い目標に厳しい表情を示しながらも具体的な対応策を模索し始めたようだ。これまでの経験と実績はやることなら早く始めた方が良いし、景気高揚にも繋がることを示している。どのように先手をとるか、再び高度で熾烈な競争が始まったといえるだろう。建築における地球環境問題対応は、技術的な対応を伴うことから大手設計事務所や大手ゼネコンがリードしてきた。テクノロジーが絡むゆえにというべきか、建築の世界ではデザインの問題としてはとらえられてこなかった一面もある。組織や技術に支えられた設計はとかく高い精度と洗練さが求められる傾向にあり、技術的には高度で建物としては高性能であるけれども、建築としての強さ、新しさ、熱さがないと指摘されることがあるのである。また、地球環境問題自体がポリティカルコレクトネスに関わるものだとして、シニカルな目で語られることもあった。しかしながらこれはきわめて残念なことである。省エネ・省資源を売り物にして醜悪な建築がまかり通るのは論外だが、省エネ・省資源による低環境02Special Issue

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る