DESIGNWORKS Vol.10
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川瀬 貴晴(カワセ タカハル)/一級建築士・技術士・建築設備士・工学博士1950年 東京都生まれ1974年 東京大学工学部建築学科卒業1976年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻工学修士1995年 東京大学工学博士、株式会社日建設計入社 同設備設計主管、同設備設計室長、同設備統括部長2002年 第9回環境・省エネルギー建築賞国土大臣賞2003年 千葉大学大学院自然科学研究科教授 2005年 日本建築学会技術部門設計競技優秀賞2007年 千葉大学大学院工学研究科教授2007年 第8回JIA環境建築賞優秀賞優秀賞PENETRATION CUBE -自然の多様性を浸透させる知的創造オフィス-宮下信顕・有竹剛・石川敦雄・菊池卓郎・黒木友裕・関光雄・西田達生・番場正敬・福西英知・増田直記・宮本有祐・山川昭次(東京本店)講評̶̶̶日本は世界の工場として大きな経済成長を遂げてきた。しかし最近の状況を見ると、日本は今までの路線を大きく変えて世界の中での新しいポジションを模索しなければならないときにきているようだ。資源が無く、高齢者比率が高く、大きな財政赤字を抱える国が、今後世界の中での新しい役割を考えるとき、頼りになるのは国民の知力とモチベーションであろう。このような中で、これからの日本の建築に求められるのは、人類の将来に対する大きな制約条件となりつつある地球環境問題への対応はもちろんのこと、利用者(居住者)から知力やモチベーションを引き出す装置としての建築造りであろう。(川瀬)未来をつくる創造性を育み、持続可能な地球・社会の基盤となる建築のコンセプトモデルとして、「浸透(penetration)」を提案する。自然のダイナミズムを建築に浸透させ、有効に活用すると同時に、その刺激を脳へと浸透させる。4度勾配スラブ、環境シミュレーション、グリーンウォールという3つの科学的操作、ツールによって導き出された多様で有機的な空間は、創造的思考を生み出すとともに、ムラを許容し、エネルギー負荷を低減する役目を担っている。丘を思わせる緩やかな勾配と奥深く抉り取られたヴォイドが、利用者に積極的なモードチェンジを促す気流シミュレーション05Special Issue
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