DESIGNWORKS Vol.11
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てもとても大きな転換期です。日本の大企業はかつての成長路線のまま、皆が互いを意識し合い、結果としてどの企業も似たような商品やサービスを提供できる産業界を形作ってきました。国際的にはこの状況がJAPANブランドを確立させることに寄与するでしょうが、これからの国内市場を見た時には、このままの路線では無駄が多くなるでしょうし、建築的な仕事の環境はそれぞれに貧弱なものになっていかざるを得ないでしょう。ですので、竹中さんも含めて日本のゼネコンや組織事務所には、自らの伝統と人材を見つめ直し、それぞれの個性を発揮するための着実な準備を行うことを期待したいです。竹中工務店設計部にはその個性の確かな源があると思っていますので、そうした方向を明確に打ち出して欲しいですね。̶̶̶本日はありがとうございました。(聞き手:横堀 伸・加 真一・真鍋 展仁)鈴鹿サーキット ピットビルGRC 3Dモデル松村 秀一(マツムラ シュウイチ)/工学博士1957年 兵庫県生まれ1985年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 博士課程修了 1986年 東京大学工学部建築学科専任講師1990年 東京大学工学部建築学科専攻助教授1992年 ローマ大学客員教授(イタリア)1996年 トレント大学客員教授(イタリア)2004年 南京大学客員教授(中国)2005年 大連理工大学客員教授・建築産業化 及び技術研究所所長(中国)2006年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授 2007年 モントリオール大学客員教授(カナダ)著書 「住区再生」(Chinese Machine Press) 「住に纒わる建築の夢」(東洋書店) 「建築とモノ世界をつなぐ」(彰国社) 「団地再生-甦る欧米の集合住宅」(彰国社) 「『住宅』という考え方-20世紀的住宅の系譜-」 (東京大学出版会) 「『住宅ができる世界』のしくみ」(彰国社) 他多数※1 BIM(Building Information Modeling):コンピューター上の3次元建築モデルに、コスト、仕上げ等の属性情報を与えた建築物のデータベースを構築し、設計、施工から維持管理までの情報の共有化を図る手法。※2 CI(Corporate Identity):企業の持つ特徴や理念を再構築し、明確に表したもの。※3 CAD+CAM(Computer Aided Design+Computer Aided Manufacturing):コンピューターの支援により設計を行う「CAD」、製造や生産を行う「CAM」が統合されたシステム。は芸術と言ってもいいかもしれない。それと同じようなことが今でもあるかもしれませんね。他産業から人材がでてきて、情報技術を自由自在に操る人と自分たちはなにが違うんだろうって。その正解が最後の一筆かどうかはわかりませんけどね。̶̶̶建築という技術は紀元前から途方もない時間をかけて発展してきました。そこから得られるものが何かを見つめ直すことが、情報技術に飲み込まれないために必要かもしれませんね。松村 冷静に考えてみると、建築を専門にすることの楽しみというのは、仕事そのものが楽しみっていうことであって、それ以外にそれほど価値がないんじゃないかと思います。やはり建築を考えたり作ったりすることを「面白い」と思える世界をどうやって保持できるかということが決定的に重要だと思います。最後にどんなものができるかとか、誰に評価されるかとかという以前に、自分たちが設計していること自体が面白いという世界を保持するためには果たして本当にBIMという方向性を信じていいだろうか、という見方もあると思います。BIMを使ったらもっと楽しくなるのか、それとも楽しくなろうと思ったらBIMをこんなふうに使わなきゃ楽しくならないとかっていう議論があってしかるべきだと思います。̶̶̶最後に、竹中工務店設計部に期待されることをお聞かせいただけますか。松村 現在はご承知のように建築業界にとっ05Interview
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