DESIGNWORKS Vol.14
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旧事務所棟南へ下る斜面新ビザ棟新事務所棟大使公邸新マンション棟Interview陣内秀信氏に聞く今号では、インタビューに先立ち、パークフロントタワー・フランス大使館・文英堂ビルの3つの建物をご覧いただきました。東京という都市のコンテキストが、それぞれの敷地・建物の中にどのように反映されていることが読み解けるか、建築史家の陣内先生にお伺いしたいと思います。東京の「下絵」として残るもの陣内 普段から僕自身も興味を持って見てまわっている所と重なる場所に出来ているものばかりでした。パークフロントタワーの敷地は、江戸時代の塔頭※1だった場所であり、更に前の時代には海が迫っていて、古墳が今でも残っていますよね。不思議な場所にお寺がある訳ではなく、地霊の存在する必然的な場所ということですね。敷地の前面の緑地は本堂の風格を高めるために取られていたんでしょう。時間が介入して、民間の土地になったり用途が混在したりしていますが、基本的には都内でも最も重要な、聖なる空間ですよね。そもそも東京の下絵としては江戸があるわけですが、その上にどんどん油絵を描いているようなところがあって、建物は残らないのだけども、土地の形状・敷地割の仕組みとか、道のネットワークとか、聖と俗の関係とかは残されているんですよね。それに対して、パークフロントタワーの公開空地は、緑道と連関する形で、人工的・幾何学的な美しい構成の広場となっていて、東京の下絵を大切にしながら新しい意味を加えて、現代の東京らしい風景をつくっていくことにチャレンジしていました。オフィスから見おろすと、寺、古墳、一体になっていて、地形や起伏と組み合わされて、独特の風景をつくっているわけですね。どんどん開発で潰されているけれど、その全体像が継続されているからこそ東京は魅力的であるわけです。だから日本で我々が議論しているようなことが、今はヨーロッパ人に非常に伝えやすいんですよ。欧米の近代・現代建築において、地形や自然と一体となった作品が評価されることは少ないような気がするんです。F.L.ライトの落水荘※3のような例は別として。フランス大使館のある広尾のあたりも、ヨーロッパには無い独特の都市空間ですね。具体的に言うと、山の手の台地の上に尾根のほうからアプローチして、下りの緩やかなところに庭園をつくって、上にはお屋敷、下には町人地があるといった様子ですね。江戸時代にはそのような土地利用・建築の作り方・風景の見せ方が意識されていましたが、近代になって無くなってしまいました。フランス大使館の敷地は、始めは旗本屋敷、そして田畑となり、明治になって徳川家のものとなった経緯があるということでしたよね。やがてフランスが取得し、大きな単位の敷地として受け継がれて来たから、表からは見えないところで江戸の形式が残っていました。———南に下る斜面を活用するっていうのは江戸からの習慣だったようですね。陣内 1657年の明暦の大火を契機に江戸は拡大して、三田や麻布は大名屋敷になっていきますが、その頃からある習慣のようですね。大火で禿山のようになった後、ここ300年で成長した、割合と近世の緑の遺産がいっぱい現在も残る塔頭を丸ごと見れるという贅沢な視点が得られ、海から山へ昇っていく参道という東京の隠れた都市軸が伺えました。例えばパリのエッフェル塔から見ると、パリの街並みはとても計画的に秩序だっていて、セーヌ川に直行する軸線がはっきり見て取れますが、東京は雑然として大きな秩序や方向性がないところが、逆に面白いんです。江戸から続く、建築と自然の関係陣内 イタリアに歴史的な都市をre-qualifyする都市計画家の協会があります。最近その会議に参加したのですが、ヨーロッパの国々の人が、都市計画上の一番最先端の話題について議論していました。彼らにとって文化的、歴史的価値のあるものは、今まで建築だけだったんですよ。ところが段々発想を広げて、風景や景観に非常に関心を持ってきています。intangible、immaterial※2という言い方があるんですけど、建築のフィジカルな部分だけでなく、人間のやわらかい部分、例えば祭・無形文化財・人間国宝といった類のものも非常に重要な文化だと彼らも段々わかってきたんですよ。それからヨーロッパ人はどうしても、今まで人間が作った文化と自然とを分けていました。僕もイタリアで都市の読み方を勉強したときには、まず建物のプランニングの理屈、それから建物の集合する理屈、街区ができて都市が広がっていく理屈を歴史的な観点で調べたものですが、それを東京に応用しようとしたときに、必ずしも出来ない。東京は寺や神社の境内には緑がいっぱいあるわけだし、江戸時代から皇居も含めて自然と都市がパークフロントタワーの緑地写真:小川重雄フランス大使館建替フローマンション棟の完成建替前事務所棟の完成東京に隠れる都市のコンテキスト‐江戸から残る都市の図と地・超高層という現代の風景Interview
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