DESIGNWORKS Vol.16
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ただの裏方になってしまうなと思ったのです。本来建築物は力の流れ方とか空間へ入ったときの感じとか、外から見たときの印象とか全部がつながっているものだと考えています。木村俊彦先生も著書の序文で、構造の骨組みが建物の形を決めていると書かれていますね。建物の骨組みと関係なく外装ファサードを張子の虎のように、建築家がおもう形態が建築で、柱や梁はただ支えるためにあるなんてことは本来ありえないのです。建築家と構造設計者は早い段階から協働すべきで、別々に仕事を進めて頑張ってみたけど、結果的に意味がないっていうことは、あってはいけないことです。———建築家と構造設計者の知恵をうまく集積していく体制が必要ということですね。和田 コラボレーションは重要です。江戸時代前から日本では棟梁がいて、要するにデザインアンドビルドを行ってきた歴史があります。竹中工務店もそうですね。明治になってヨーロッパの建設手法の考え方を導入して、建築家すなわちアーキテクトっていうのは独立していて、施工する会社は別で、アーキテクトの言うとおりに作る人は作ればよい、というような考え方を日本に持ってこようとしました。しかし、設計と施工を完全に分離するということに絞り込むことに無理があったため、日本では設計と施工の分離体制によるやり方だけではなく、設計施工一貫という体制も続いているという背景があります。確かに、作り方や出来上がった後の使い方、トラブルが発生したときの対応とか、最後の取り壊しとか、すべてを同じ人達がやる方が合理的な場合もありますね。意匠設計者と構造設計者の知恵をうまく集積していく体制もつくりやすいといえます。設計と施工を完全に分離したケースでトラブルが発生した場合、設計した人はもう次の仕事をしているでしょうし、施工者と設計者が一緒の会社に居たほうが合理的なこともあると思います。一方、設計と施工は別れているべきだという人達の主張も強いです。しかし、両方のやり方が共存してもいいのかもしれない。分離する方がいいって主張している人は、例えばヨーロッパの高級レストランに行ったときに、注文を取りに来るおじさんが居て、それで色々その味だとか、サラダドレッシングとか聞いて戻りますね。それででき上がって持ってきて、お客さんがちょっとこれ塩っ辛いなとか、薦めたような味じゃないとかって文句言うと、そのウェイターは厨房に戻って、大きな声でお客さんに聞こえるように「なんでお前、言ったとおりの味を作らないの。駄目じゃないか」って。そういうときに竹中工務店に対しては失礼な言い方になりますが、厨房で作っているコックさん達がゼネコンで、ウェイターがアーキテクトみたいなものだって。つまりウェイターはお客さんの側に立って、より美味しいものを提供するというんですね。これが全部お店側だと、お客さんの味方がその店には全然いないっていうことになってしまう。だから分離するべきだって主張しています。ただし、日本のように地震や災害の対策、夏は暑く冬は雪が降ったりする風土においては、ヨーロッパの仕組みをそのまま持ってくるだけではうまくいかないのかもしれません。三次元で構造を考える———東日本大震災における地震そして津波は、基準という過去の現象から導いた数値・想定を超えてしまいました。今後建築構造設計における社会的責務も増大が予想されます。建築界においてグッゲンハイム美術館(ビルバオ)東日本大震災被災地の様子今後取り組むべきこと、そして、被災地を訪問されて考えてらっしゃることなど、聞かせてください。和田 この本の読者の中には、まだK※2≥0.2という概念しかなかった1981年より前に仕事を始めた人もおられますよね。「>」が付いているのを忘れ、K=0.2が地震だと思って、それで必要な鉄筋の本数決めたり、自分の決めた断面で足りるか足んないかって悩んだりします。0.99ならよくて1.01だと、明日地震が来たら壊れる。ほんとに来る地震のことを考えているのではなく、「0.2という係数によって求まる地震力に耐えることが地震に耐えること」だと、私自身が思い込んでいましたから。1981年に法律が変ってから、一挙に5倍の地震を考える事になりました。そのかわり傾くが倒壊を防ぐ、二度と使えなくなっても仕方ないんじゃないかって、皆がイマジネーションを働かすようになりました。それでも今度はC0※3=1.0というのが極めてまれに来る地震だと皆思い込んでいます。実は佐野利器先生は、1924年に震度を決めたときからK≥0.1とされていて、今話題にしている性能設計は初めからあったわけです。より丈夫な建物を作りたいという気持ちは、法律の上で今にも引き継がれています。地震学者はマグニチュード8.4のときの津波は予想できても、9のときの予測はしていなかった。多くの研究や過去の被害経験などから、法律や仕様書や設計法などのルールが生まれていきます。人間の作った世界が段々出来てくると思うのですね。構造解析をこうやってやろうとか、塑性率をどこまで認めるとか。「最後にこの図面で良い」って決めるのは、全部人間の作った世界の中で、始まって終わるってことですよね。今回みたいな大きな地震があると、「紙に書かれた人間の作った世界で、ほんとに自然に対して ※2 K:設計用地震力の算定に用いる係数。1981年より前の旧基準で用いられた水平震度。(現在も地下・塔屋などには用いられる。また地震の震度階とは異なる。)※3 C0:設計用地震力の算定に用いる係数。1981年以降の新耐震基準で用いられる標準せん断力係数。Interview
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