DESIGNWORKS Vol.17
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Topic竹中環境シンポジウム2011「東日本大震災を受けて、今、私たちが提案・提言できること」Takenaka Environmental Symposium 2011 "Proposals and recommendations in the wake of the Great East Japan Earthquake"竹中工務店では、毎年開催している環境シンポジウムの内容を変更し、“東日本大震災を受けて、今、私たちが提案・提言できること”をテーマに全従業員からの提案を募集しました。幅広い職能の社員が参加し、海外を含めた部門を横断する各チームから計166件の提案・提言が寄せられました。7月6日に行われた本年度の「環境シンポジウム2011」には約300人が参加し、前半は東日本大震災復興構想会議検討部会の委員を務められている京都造形芸術大学教授の竹村真一氏をお迎えして基調講演をして頂きました。シンポジウム後半では7本支店とタイ竹中をTV会議システムで結び、寄せられた166件の提案・提言から社内選考された15件を、5つのセッションに分けて各案代表者がプレゼンテーションしました。さらに、小泉雅生氏※1、伊香賀俊治氏※2、三浦展氏※3、渡邊暉生氏※4、門川清行氏※4の5人の社内外パネラーが5件の提案を選択し、発案者とパネラーの間で内容を深める充実した討議が行われました。震災から時間を置かずに開催されたこのシンポジウムは、これからの建築・都市を考える端緒になったのではないかと思います。ここではシンポジウム当日にプレゼンテーションを行った15件の提案・提言を紹介します。セッションA:復興の仕組みこどもと築く復興まちづくり 被災地のこどもが復興に関与する「こども復興参画カリキュラム」の導入岡田暁子(東京本店 営業部)岡田慎(プロジェクト開発推進本部)※1 首都大学東京 都市環境学部教授、建築家※2 慶応義塾大学 理工学部教授※3 カルチャースタディーズ研究所※4 竹中工務店副社長全てを失った人々。一見、元気そうなこどもたちも被災者。20年スパンの復興の「主役」たちに元気を与え、成長を促す仕組みを提言する。復興まちづくりは単なるハコづくりではなく、人々のくらしや希望を取り戻し、継続することが大事である。こどもたちを長期の復興に参画させながら多様な成長を促す「こども復興参画カリキュラム」の被災地学校等への導入を提案する。自治体が 「仮想クライアント」になり各学校にテーマに応じて検討を依頼し、「こども研究員」からの提案を反映した復興事業を実行する仕組みである。運営は「まちづくり学習」の先進自治体がペアリング支援する。また、国は総合特区等の導入で、大学や企業、NPOもそれぞれの専門性に応じて支援する。[伊香賀俊治氏コメント] 復興は段階的に10~30年の長期にわたるもの。次世代を担う子供たちの教育に都市計画、建築、行政のプロが関わり、社会貢献できるという仕組みが大変良かった。※本提案は、こども環境学会「子どもが元気に育つまちづくり東日本大震災復興プラン提案競技」Adult部門(25歳以上)にてGOLD PRIZEを受賞しました。土地利用の「地球環境ポイントシステム」 震災復興を機会に、日本全体に真にサステナブルな環境を実現する新しい仕組み結城哲治(国際支店 生産統括部 設計グループ)現在、津波による壊滅的な被害を受けた土地の再生計画において、町ぐるみの高台への移転や大津波に耐える巨大な堤防の築造などが議論されている。自然の土地に新たに大規模造成を行うことや、大自然の営みに力で抵抗するがごとき人工物の築造があるならば、同時に、今この国に存在している自然環境的価値の総量を維持すべくコントロールする。スプロールの流れを断ち、輝かしく快適で真に持続可能な環境を作ることを考えたい。このため、土地利用の自然環境的価値をマクロレベルの都市計画からミクロレベル個々の建築行為に至るまで複数の階層で定量的に評価し、その総量が減らないように一貫したシステムの中で制御する。国土全体の自然環境的価値が確実に上がることが担保され、人間にとっての居住環境も着実に向上する。地域復興型スマートタウン 『ロスZERO』工場を中心とした雇用創出産業都市栗原卓馬・山中一克・鈴木亨・川原圭貴・丸谷謙介(エンジニアリング本部)雇用の確保、さらにはものづくり技術の海外流出防止のためにも、東北にあった高い技術力を持つ工場を中心とした産業都市をつくることで、街の復興を目指す。街の復興の中心となる工場エリアには、東北の高い技術力をもったものづくり工場を集積し、それぞれの工場で発生する排出物を エリア内で再利用することで、エネルギーロスのない『ロスZERO』工場エリアを実現する。『ロスZERO』工場エリアが雇用を生み、街の発展を支え、街に余剰のエネルギーを供給する。電力以外の水・熱・有用廃棄物、さらには労働力をも街のエネルギーとして捉え、それらのエネルギーを地域内で効率的に管理し運用することが可能な『地域復興型スマートタウン』を提案する。26Topic
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