DESIGNWORKS Vol.17
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セッションB:復興のまちづくり森と海のあいだ 津波で流された地域を21世紀型自然共生群として再考する北原祥三・垣田淳・栗田実(東京本店 設計部)小島倫直(技術研究所)人は古来より“森と海のあいだ”の恩恵を受けて生活を営んできた。一方、人は自然を制御するためにダムや堤防をつくることで森と海の関係を切断し、生活基盤を脆弱にしてしまった。3.11以降、人が再び自然と共生していくために森と海と人のあいだを再考する。ここでは失ったものを再生するのではなく、この場所に残った力(森・海・人の営み)を紡ぎ合せることで、新たな人と自然の柔らかな関係性を生み出し、“森と海のあいだ”にある自然治癒力と新陳代謝を高めていくことを目指した。具体的には、森と海のあいだの関係性を示す【5つのレイヤー】を重ねる事で21世紀の新しい里山風景を生み出す仕組みを提案する。[門川清行氏コメント] 防波堤により津波をねじ伏せるのではなく、自然の力を受け入れるとともに、津波被害の記憶を継承し美しい景観を生み出す。阪神淡路大震災後の神戸地区とは異なった都市再生の提案として次の3代にも伝えていくものと感じた。five layers connecting forest and sea 「森と海のあいだ」の関係性を示す5つのレイヤーを重ねることによって、この場所の新しい柔らかな関係性が浮かび上がるmemorial line津波の記憶(3つの等高線:3.11以前の海岸ライン、3.11後の海岸ライン、3.11津波到達ライン)のあいだ=「森と海のあいだ」をリ・デザインする。emergency route等高線に対して垂直な津波からの最短距離による避難動線を「森と海のあいだ」に通す。建物も津波の被害を最小限にできる方向へ合理的に配置される。biodiversity toneこの場所の生業やエネルギー全ての基盤となる森から海への生態系の多様性を高める為に、柔らかな襞状の海岸推移帯が「森と海のあいだ」を繋いでいく。carbon neutralこの地域の生態系からなる自然エネルギーを最大限活用し、カーボンニュートラルなエネルギーシステムを「森と海のあいだ」に構築していく。community cellこの地域の生態系と共存する漁業と農業を生業とするコミュニティセルが集約かつ分散してセミラティス型のネットワークを「森と海のあいだ」に形成していく。new landschaft between forest and sea「森と海のあいだ」に無数に拡がっている生態系の繋 がり。互いに切断したり拒否することなく、互いに許容し多様に重層していくことでより濃密な生態系が構築され、そこに人間の生業が溶け合うことで一つの美しい風景(=landschaft)が生まれる。それはまるで21世紀の新しい里山のように森と海と人間が共生した状態である。27Topic

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