DESIGNWORKS Vol.17
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セッションD:防災の要素技術Tsunami Damping Flutters 人の命を守る新しい考え方の防潮堤の提案西岡浩是・成山由典・奥村隆史・大木克清(タイ竹中)防潮堤は常に自然の破壊的な力にさらされているため、長期的な防護を提供するには不断の保守を必要としてきた。しかし、今回の震災を受けて、世界一と言われた防潮堤までもが破壊されてしまい、津波に対する防潮堤による防備の方法については、なす術がないのが現状である。そこで、従来とは違った新しい防潮堤のあり方を提案したい。考え方としては津波の力・量を全て受け入れ耐えるのではなく、波の力を受け流し弱めるといった考え方に発想を転換してみる。既存の防潮堤よりも沖合に配置することで、景観を乱すことなく波の力を弱め、まちを守るものになる。波力発電を組み合わせることでエネルギーの生産が可能になるほか、漁礁として機能することでまちの漁業産業を復興する足掛かりともなる。[小泉雅生氏コメント] 自然の破壊力を受け流すという柔構造の発想で提案され、防災に対するパラダイムシフトの可能性がある。どのくらいの期間とコストで実現できるかという課題はあるが、視点と発想が素晴らしい。Mutual aid~支えあう都市~ 都心部の密集した建物群を対象とした耐震改修手法(相互扶助型耐震改修)長谷川勇樹・阿部洋・津司巧・樋口満・山下真吾・小野晋・山崎僚平(東京本店 設計部)狭小な敷地に密集して建てられる都心部の建物を対象とした耐震改修手法として建物連結制震を提案する。固有周期の異なる隣接する建物同士を制震デバイスで連結させることにより、応答の大きい建物と、隣接する応答の小さい建物とが、互いの固有周期の差を利用し応答を低減する。建物 の機能を維持しながら外部から改修が可能である。有機的地盤改良による地震波増幅低減効果に関する提案 弱地盤に地盤改良を施すことで地表面付近で増幅される地震波を低減させる小澤宣行・安岡千尋・大場紀代人・高橋雄治(東北支店 設計部)濱田純次(技術研究所)本提案は地盤改良により地震波増幅低減効果をねらう技術提案である。本提案の特徴は個々の建物に対する耐震性の向上に留まらず、広域な地盤改良を施すことで都市全体の耐震性を高めるという点にある。その方法として有機的地盤改良を提案する。改良材はゲル化された多価金属化合物(例えばカルシウム化合物等)と微生物とから成る。これにより環境に悪影響を与えることなく広範囲の改良が可能になる。本提案の技術によれば既存建物直下の改良が可能になり、さらに直接建物に干渉することなく耐震性を高めることができるので、都市部の軟弱地盤上の建物密集地域においても地震波増幅低減効果が期待できる。30Topic

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