DESIGNWORKS Vol.19
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———建築の21世紀はまだ始まっていないけれども、そこで求められる価値観とは成熟社会における建築的な「質」なのだというお話を伺い、設計施工というスタンスに対する確信と責任を、改めて感じました。馬場 その考えを進めていくと、21世紀は中世と同じになるのだろうと思います。中世は暗黒の時代であると、かつては言われていましたが、それぞれの地域が独自に文化を成熟させていた時代として現在では見直されています。20世紀は人口の流動が激しかったけれども、21世紀において人々は、それぞれの場所に定着する。旅行はするし、情報は交流するけれども、それぞれの地域に定住するようになり、地域文化も充実する。そのようなグローバルかつローカルな社会において、設計施工というビジネスモデルは活かされるのではないかと思います。企業としての社会的責任———近年は、企業にも社会的責任(CSR)が求められるようになってきました。例えば、初代社長の竹中藤右衛門が竹中育英会を創設し、社会的に有用な人材を育てるために奨学金を準備しました。続いて2代目の竹中鍊一相談役が1964年に機関誌「アプローチ」を創刊し、定期的に発行して、社会全体として建築文化を高めようということに、取り組んでまいりました。馬場 そのような社会的実践は素晴らしい取組みであると思いますが、重要なのは、竹中工務店の場合は、自由な思いつきでそのようにしているのではなく、冒頭にも申しましたとおり、歴代のトップによる「重石」が、そのような成果を上げていることを指摘したいと思います。つまり、社会において建築がいかに貢献できるかという問いがまずあって、それぞれの時代に合った答えを模索しながら、様々な実践に結び付けている、そのことが重要なのだと思います。———その他にも、1984年に創立85周年記念として、神戸に竹中大工道具館を開館させました。大工道具を重要な遺産として収集、保存、展示、研究することを目的に、企業博物館としてスタートしましたが、1989年に財団法人となり、翌年には博物館法に基づく公益法人として発足しました。2005年には東京本店新社屋建設に合わせて、「GALLERY A4(エー クワッド)」を開設し、2011年12月に、財団法人に認可されました。馬場 企業博物館やギャラリーの運営に関しても、社会において建築がいかに貢献できるかという問いがまずあって、その答えとしての取組みを選択する、その順序は重要です。経済的な観点では、迂回生産という考え方があります。例えば、魚を捕るためには、手づかみだと大変だけれど竿で釣ると効率的であり、網で捕獲する、更には船を利用すると更に効率が上がる、というように、手段における迂回が大きくなるほど効果が上がる、というものです。ここで、どこまでが迂回生産の許容範囲なのか、という見極めが、重要になってくるわけです。博物館やギャラリーという竹中大工道具館ギャラリー A4馬場 璋造(ババ ショウゾウ)/建築情報システム研究所代表1935年埼玉県生まれ1957年早稲田大学第一理工学部建築学科卒業1959年早稲田大学第一政経学部経済学科卒業1959年株式会社新建築社入社1971年株式会社新建築社取締役編集長1990年株式会社建築情報システム研究所設立現在に至るのは、企業としては遠くへ迂回しているという印象を持っていますが、経済活動としてではなく、企業としての大きなヴィジョンにおける社会的取組みとして考え、ぜひ続けていただきたいと思います。———本日はありがとうございました。(聞き手:川北英 Gallery A4 館長)Interview

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