DESIGNWORKS Vol.22
7/36
日本の一般的な在来木造建築は、日本特有の環境下での湿気や白アリからの構造体の保護、通気・断熱、材積の合理性などさまざまな問題への対処を、ひとつずつ機能を持った層を加えていくことによって解決し、高性能のスキンを構成するように進化してきた。この木造の特性を、外部環境と内部環境の境界を調整する所作ととらえ、内外のアクティビティに合わせてそれらの層を調整することによって、新たな質をもった空間を作り出す建築を提案する。多層のスキンを透過する光、風、熱によって、少しずつムラをもった環境の空間が連なる。半外部的な環境の差異が五感から身体に刺激を与え、日本の伝統的な可動の建具と同じように層を調整することによっても、四季や時刻に合わせた環境調整を可能とする。多層のスキンと面で切り替わる層によって、外部のような内部や小さな空隙の連続がうまれる建築を提案する。講評 「構造体」や「仕上げ材料」としてだけの「木」の使い方を越えて、本来「木」が持っていた特質を積極的に生かすという本質的な課題を解いた提案として高く評価できる。外部から内部環境まで複数の境界を「木」により再構成し、居心地の良さそうな空間の可能性も感じさせる。「日本」を意識した考え方やプレゼンテーションの美しさも特筆すべきである。大橋祐介(名古屋支店)優秀作品木層建築05Special Issue
元のページ
../index.html#7