DESIGNWORKS Vol.22
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東日本大震災を経験し、私たちは大切なことに気付いた。いつもは便利さや快適さを与えてくれるものが、もしものときには使えなくなること。まして大きな脅威にさえなり得ること。誰でも、何処でも、「いつも」と「もしも」は繋がっているのだから、私達には今、両者を同時にデザインすることが求められている。「もしも」のときに「いつも」が失われたこと、「もしも」にそなえて「いつも」を失うことは同義なのだから。東京都内には約16000haに及ぶ木密地域と呼ばれる場所がある。高層ビル群と対比的なその表情は、とても魅力的で、いきいきとした「いつも」の風景をつくっている。しかし、首都直下地震の発生が予想される中で、災害に対して脆弱な木密地域は、「もしも」を想定した都市計画による道路拡幅と建物の建替えにより、その在り方が失われようとしている。それに対し、私達は、もっとローカルで、建築的なスケールでの対処により、「いつも」の風景、生活の中に、「もしも」に備えた力を内包させることを提案する。簡潔に言えば、「いつも」は都市施設、「もしも」のときは防火帯、避難所となる耐火建築物=ウダツを木密地域に挿入することである。そこに「いつも」と「もしも」が融合した都市の風景を描きたい。講評 災害に対して脆弱な木造密集市街地(住宅地)に、生き生きとした「いつも」の良さを生かしながら、「もしも」に備える防災的な性能を持つ「木造建築物=ウダツ」を挿入し、様々な形をセミ・オープンに繋げ、面的な広がりを持たせた「木」の空間の提案。新しい路地空間として挿入された「ウダツ」が街と融合した将来の「木」による都市空間の可能性をも予感させる。平尾雅之・宮田二郎・渡辺勇太・戸田忠秀・秋谷稔・福西英知・興松美穂・栗原謙樹・佐田野剛(東京本店)優秀作品ウダツ06Special Issue

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