DESIGNWORKS Vol.23
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今日は首都大学東京の小林克弘先生に、近年の竹中デザインの傾向と今後の可能性についてお話いただけたらと思います。小林先生は1986年の新建築別冊『竹中工務店設計部』※1において、「竹中デザイン読解のための7つの鍵」と題した論文で、当時の竹中工務店のデザインについて7つのキーワードを掲げて分析をいただきました。今回のインタビューに先立ち、見学いただいた飯野ビルと台湾客家文化センターをはじめとして、近年の作品について分析いただき、これからの竹中デザインの方向性を探っていくきっかけとしたいと考えています。1986年「7つの鍵」小林 86年の時は、新建築に掲載されている竹中作品すべての資料を時間をかけて見て分析を行ったわけですが、そこで読み取ったのが「ファサードの自立・ポツ窓・曲面・屋根・内外の反転・装飾的細部・ピクチャレスク」の7つの鍵です(P6「竹中作品の傾向と分析」ー2013)。当時の分析では、可能な限り平面構成や構造形式を含む多様な局面の考察を試みたわけですが、結果として抽出されたのはここに挙げたように、すべてが視覚的効果に関する特徴といえるものであり、竹中デザインとは「視覚的効果のためのデザイン」であると判断しました。平面構成の部分には無理な冒険をせず、視覚に直接訴えかける部分に意匠を凝らす、それが竹中の方法であると考えました。また、竹中の特徴として、「論理的というよりは感覚的」であり、「大胆というより洗練」を目指し、「前衛であらんとするよりは着実」たらんとし、「難解であるよりは親しみやすさ」、「抽象よりは現象」を重んじ、「厳格さよりはやさしさ」を求め、「単純であるよりも豊富」であらんとする。さらに言えば、「コンセプチュアルであるよりはポピュラリズム」を志向し、「古典主義的であるよりはロマン主義的」であると分析しました。さらに、そうした方向性を持ちつつも、竹中の作品はその時々の建築界との間に微妙なずれを示しており、そのずれこそが竹中らしさである、というのが当時の結論です。86年当時は、ロンシャン第2ビルなど大阪の作品に個性的なものが多く、竹中デザインのイメージを構築していたと思います。今回、現在のデザイン分析を行うに当たって、ホームページに掲載されている作品と23号掲載作品資料を一通り拝見してきました。また賞の審査などを含めて近年の竹中作品を拝見する機会をいただいていますので、それらを基に分析を行っています。日産自動車グローバル本社、ヴィラロンド、東京本店、養命酒健康の森記念館、テクニカハウスなどです。それをふまえて、「7つの鍵」が今どうなっているのかを整理しました。86年当時と比較すると、ボリュームとして建築を扱うような在り方や都市空間への配慮、といったあたりは新たなデザイン傾向として顕著になってきたと思います。1.ファサードの自立小林 86年のときは一枚のファサードをどう扱うかということが大きな特徴でしたが、最近の傾向として、フレーム、水平垂直のファサードという形で展開されていると思います。日産自動車グローバル本社の低層部や、ヴィラロンドをはじめとする集合住宅など、非常にうまく使いながら構成していると思います。一枚の壁をどう扱うかという視点から、門型や水平垂直の面の組み合わせという方向にかなり変わってきているという印象を持ちました。2.ポツ窓小林 規則的なポツ窓というよりは、ポツ窓の名残はあるけども配列はだんだん現代的なデザインになってきていると思います。規則的な表現をしないといけない場合は、ポツ窓よりむしろ格子状のフレームになっている。飯野ビルもそうですね。ポツ窓から変化を遂げていると思います。また、比較的規則的なポツ窓であっても、開口部周りの外壁部分はリズムをつけるなどの工夫で複雑化されています。3.曲面小林 緩やかな曲面は今日の作品にも残っていると思います。日産自動車本社のファサードの緩い面や、妙智会群馬教会※2の屋根形状、客家文化センター※2の平面形状などもそうですね。強い曲面というよりはゆるい、柔らかい感じの曲面という形で継承されているのではないかと思います。4.屋根ー水平な屋根小林 大屋根であったり切妻をみせるような表現が残っていますね。霊友会第二十七支部講堂※2もそうですね。一方で水平な屋根、これは1番目の水平垂直の線を強調してということにも関係しますが、水平な屋根と小林克弘氏に聞く「竹中デザイン読解のための7つの鍵」-2013Interview妙智會群馬教会 写真:堀内広治VILLA RONDO 写真:堀内広治日産自動車グローバル本社 写真:SS東京 石井哲夫Interview02
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