DESIGNWORKS Vol.23
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して強調するという表現がありますね。例えば養命酒健康の森記念館、切妻型の移築された蔵に対して、対比的に増築棟がすーっとのばした水平屋根になっている。純粋な屋根形状だけでなく、そういう水平なものも含めて展開されているように思います。5.内外の反転小林 大きく内部を取り込むというよりはむしろ光庭とか中庭というような形、あるいは外部的な通路などに残っていますね。例えば東京本店も光庭があることによって、ある意味動線部分というのは外部的な雰囲気がでていますし、飯野ビルのエコボイドといわれる吹き抜け部分ですとか、ケントク本社ビルなども小さくボイドが入っているという点では、かたちを変えて展開されているなと思います。6.装飾的細部―強まる抽象性小林 装飾的細部ですが、施設によると部分的にそういうのが現れてくることもありますが、かなり減ってきているという印象です。さらに、具象的な装飾というよりは抽象度が高まっているように感じます。 装飾的細部は86年当時の分析の中ではワンポイントアクセサリーと語っていただいていますが、最近ではファサード全体が装飾的なファサードになるという作品が増えています。 小林 飯野ビルを拝見して思ったのですが、86年にあげさせていただいているものは、ある意味これ見よがしに装飾的細部を演出していますよね。一方で飯野ビルでは、壁のレリーフとかディテールなど、かつての建築で使われた装飾的なものを残しながら構築していますが、説明されないと意識されない部分がかなりあって、そういう装飾的ともいえる細部なりディテールを残すにしても、86年時点のように、明らかにこれはという感じで見せるのではなく、溶け込ませるというふうに変わってきていると言えるかもしれないですね。細部に対するこだわりというのは当然建築家にはあると思いますが、最近は環境対応でも、ダブルスキンまわりのおさまりとか、あるいは空調をどうするかとか、あるいは構造と建築のおさまりですとか、あえて装飾的細部にエネルギーを注がなくても、細部へかけるエネルギーが自然と立ちあらわれてくるのかなと思います。あるいは、素材についても86年のころと比べると、はるかに多様になりいろんな素材が使えるようになって、これを見てくれという装飾的細部を作らなくても素材である程度演出できるということがありますね。そういう方向に建築デザイン界全体が変わってきているように思います。飯野ビルで面白かったのは、貸会議室エントランスの水をイメージしたというフィンランド産の床石とかですね。この細部を見てくれというやり方ではない、それこそ素材であったり、本当はアート的な、装飾的な細部なのですが、あえてそれを意図的に目立たせるというのではないやり方で新しくつくる、共存させるというやり方に変わってきているように思います。また、萬福寺第二文華殿のプリーツ加工を施した朱色の布で包まれた展示空間も、素材のテクスチャーをうまく生かした抽象的な装飾的細部といえますね。7.ピクチャレスク―ボリューム分節による群造形小林 ピクチャレスクは86年当時、マッスに分節して、ランダムに配置してピクチャレスクな効果を生みだしているということで分析していましたが、86年以降の作品ということで拝見した感じではかなり減ってきている特徴なのかなと思います。一つの単体をピクチャレスクに面分割し、大きな面を部分の集積のように見せていくという傾向はあると思いますが。 群の建築というのは最近プロジェクトとしてもあまり見られません。86年当時と違って、集合住宅にしても学校にしても、都心型のプロジェクトが増加したこととも関係あるのではないかと思います。小林 ボリュームを分節し、それを外観に示すというタイプのピクチャレスクというのは確かに仕事の内容との関係もあって減っていると思いますが、客家文化センターにみられる斜めの柱による森のような空間というのは、タイプは全然ちがいますが、ピクチャレスク的な変化にとんだ見せ方ともいえますね。浮遊するボリューム/地形への配慮 86年時点で分析されている作品になかった傾向として、最近の作品にはボリュームを浮かせる、浮遊させるという手法が増えているように感じます。黄檗宗萬福寺第二文華殿 写真:古川泰造神戸松蔭女子学院大学養命酒健康の森記念館 写真:吉村行雄Interview03
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