DESIGNWORKS Vol.23
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えていると思いますし、また客家など、とても大胆ですよね。前衛たらんとしているかどうかは別として、現代建築デザインの最先端に近い極めてレベルの高いデザインをやられているという意味で、そう言い切れない部分もでてきているなと思います。 「前衛であらんとするより着実」というのは設計施工一貫で進める竹中工務店の一つの原型みたいなところがあるのかなという気がしています。小林 86年の時点で感じられた特徴が変わってきていたり、あるいは影をひそめてきたものももちろんありますけども、総体として見ればより幅ができているのだと思います。一方でいかにも竹中デザインだというズレみたいなのは少し減ってきている。86年の時点だと、これはいかにも竹中だって思えるものが相当ありますよね。竹中らしさ いい意味でのズレが個性として竹中らしさがでてくるということですが、今の時代は非常に普遍化されていますし、社会状況から言っても、ある特色を強く組織が出すということは一般論としても大変難しいですよね。そういう中での竹中デザインとは、今でもある特色を持っていると思いますが、その特色というのがかつてほど見えにくくなったという意見は聞こえてきます。小林 ただ、明らかに竹中らしいと思われないとしてもそんなに悪いことではなくて、全体的な質やデザインレベルが高ければそれでいいわけですから。竹中らしさが以前に比べると見えにくくなっているということですが、例えば、テクニカハウスのような門型的な構え、あるいは低層の集合住宅にみられるようにコンクリート打ち放しで水平垂直の線を使って構成をするという建築のあり方はいかにも竹中だなという印象はありますよね。不規則なポツ窓とかも大手ゼネコンの設計部あるいは大手設計事務所ではやらないというか、やれないのではないでしょうか。 門型的な造形や水平垂直の線を使って構成する造形が多くみられるということでしたが、竹中工務店設計部内で参照されている傾向は確かにあるかもしれません。小林 門型と一口に言ってもいろんな門型のデザインが当然ありうるわけですし、門型だからやめなさいという話ではなくて、前とは違う門型を作ってみようとか、そういう努力をされるというのはすごく大事だと思いますね。より発展させる、あるいはより洗練していくということ。そしてもうちょっと都市的な回答をするとか、まだまだ可能性はありますよね。 内部で確立したものを破壊することは難しいですが、大変重要なことですね。小林 内部参照しながら内部を超えるという、そういう意識をもって臨めば、今のいかにも竹中らしいといわれるものがさらに磨きがかかると思いますね。むろん、内部参照が行き過ぎると自己閉鎖的になってしまう恐れもあるので、内部参照と外部の新しい動きの参照のバランスが大切でしょう。今回のインタビューは四半世紀以上も前に書いたものを再考する機会を持つことができた点で、私自身にとっても大変貴重な経験でした。10年後、7つの鍵の文脈がどう変遷していくのかとても楽しみです。 本日はありがとうございました。 (聞き手:増田俊哉・関谷和則・鈴晃樹・米正太郎・ 岡田朋子・垣田淳)※1 別冊新建築 日本現代建築家シリーズ11 竹中工務店設計部 ※2 23号掲載作品を示す。小林 克弘(コバヤシ・カツヒロ)/ 建築家1977年 東京大学工学部建築学科卒業1979年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 修士課程修了1982-84年 コロンビア大学客員研究員1985年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 博士課程修了、工学博士1986年 東京都立大学工学部建築学科講師1988年 東京都立大学工学部建築学科助教授1998年 東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻教授 首都大学東京大学院都市環境科学研究科 建築学域教授現在に至る著書 『アメリカ様式建築の華-マッキム、ミード、 &ホワイト』(1988、丸善) 『アール・デコの摩天楼』(1991、鹿島出版会) 『ニューヨーク 摩天楼都市の建築を辿る』 (1999、丸善) 『建築構成の手法-比例・幾何学・対象・分節・ 深層と表層・層構成』(2000、彰国社) 『建築転生 世界のコンバージョン建築Ⅱ』 (2013、鹿島出版会) 他多数テクニカハウス 写真:小川泰祐Interview05

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