DESIGNWORKS Vol.27
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シェルタードハウジング写真提供:上野淳小学校と高齢者デイサービスセンターの複合化写真提供:上野淳ある公立中学校と特別養護老人ホームが合築されている例は、もう20年くらい前のプロジェクトですけど、それはもう特別養護老人ホームをどんどん作らなきゃいけなかったのに土地がなくて困り果てて中学校の建て替えの時に特別養護老人ホームを下に入れたという。でもそれなりに上手くいっていますよ。生徒たちがクラブ活動を通して社会奉仕みたいなことを行っていたりもします。また、小学校を特別養護老人ホームにコンバージョンしたというのは都心の品川区や港区にあります。学校建築って8mスパンで非常に規則正しく並んでいるし、階高が高いんですよ。昔の天井高が3mで、懐に80cmくらい見ていたので、階高は3.8mから3.9mくらいあるわけです。なので、30cmかさ上げすれば配管がうまく回せるんですね。だから、サステナビリティというかフレキシビリティでは階高ってやっぱり大事なんですよ。ですが、日本の場合は色んな地域条件で病院建築なんかもタッパを詰められるじゃないですか。あれがやっぱりサステナビリティの首を絞めていますよね。病院建築では特に配管が多いですから、階高を高くとっておくことがニーズとして非常に強くあるんだけど、周辺の条件とかこれだけ詰め込まなきゃいけないということで、苦しみますよね。日本の病院建築の宿命ですね。デザインビルドと医療建築の可能性 設計施工に期待することがありましたらお聞かせください。上野 全ての機能が詰め込まれている1000床の最先端高機能病院というのもあるけども、例えばリハビリ病院だったり、内視鏡手術に特化した民間病院だったり、低侵襲医療に特化する病院だったり、あるいは予防という意味で人間ドックに特化した建物だったり、今はいわゆる機能分化が進んでいて、非常に特色がある医療機関・医療施設が増えてます。見せて頂いた4作品はそれぞれにそういうエレメントがあったわけですが、最先端の医療を勉強している非常に技術力の高い設計者集団だと感じました。一般に、設計者の職能と施工って分けるべきじゃないかという考えがありますよね。それはそれで分からなくはないのだけれど、日本の伝統的なこういう設計施工が、見せて頂いた作品のように高いクオリティの建築が建つ力になっているとすれば、私は評価すべきだなと思います。常々言っていることだけど、私はゼネコンの設計部の方も建築家だと思います。むしろその設計施工の良いところを活かして、クオリティが高くてしかもバリューエンジニアリングを行ってコストがきちんとコントロールされている建築が出来ていくということはあながち悪い事ではなくて、推奨されるべきじゃないかと思うんですけどね。一番典型的なのはPFIですよね。PFIって大きい設計事務所や建築家、ゼネコン等の会社が組んでやることになっているわけじゃないですか。PFIについて建築家の職能にこだわって色々と発言している人も居ますが、PFIはPFIで一つの物をつくる上での新しい方法論なわけだから認めざるを得ないし、そういう意味で言うと一つの方法論としての設計施工というのは十分あり得る。それがクオリティの高い病院建築に結びついてくれると言う事が大事なことです。作品を見せて頂いてとても心強く感じました。 本日はどうもありがとうございました。 ※1 PFI (Private Finance Initiative)公共施工等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うこと。効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図る考え方。※2 シェルタードハウジング(Sheltered Housing)イギリスにおいて1950年代より建設された高齢者向けの小規模集合住宅。ワーデンと呼ばれる住み込みの管理人が日常生活の援助に当たるほか、各戸に設置された緊急時通報システムにより緊急時の対応がスムーズにとれるようになっている。在宅サービスも利用でき、高齢者が生活しやすいような工夫がされているのが特徴。※3 全制的施設(Total Institution)中に収容される「被収容者」(例として入院患者、修道女、服役者など)を社会的・物理的に外部から遮断してその生活を包括的に統制・規制する度合いが高い施設のこと。アメリカの社会学者E.ゴッフマンによって提示された概念。Interview05上野 淳(ウエノ ジュン)/工学博士1971年 東京都立大学工学部建築学科卒業1973年 東京都立大学大学院修士課程修了1977年 東京都立大学大学院博士課程修了1977年 東京都立大学工学部 非常勤講師1984年 東京都立大学工学部 助教授1993年 東京都立大学工学部 教授2009年 首都大学東京 理事・副学長2013年- 公立大学法人首都大学東京 理事 首都大学東京 名誉教授2014年- 一般社団法人日本医療福祉建築協会 会長 著書 『高齢社会に生きる 住み続けられる施設と街のデザイン 』 (彰国社、2005) 『学校建築ルネサンス』 (鹿島建築出版会、2008) 『多摩ニュータウン物語』 (鹿島建築出版会、2012)共著(聞き手:藤田純也・菅原努・関谷和則・北原祥三・垣田淳・鈴晃樹・松浦勇一・入江祥太)
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