DESIGN WORKS VOL31
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やっていますが、大雑把な括り方をするとキャンティレバーに表皮です。キャンティレバーは外装がカーテンウォールなので自由になんでも出来るわけです。なんでもできるからといって、何をしてもいいかと言われるとそういうわけではない。そこが難しいのだと思います。結局は構造と表皮という差になってしまう。日本橋日銀通りビルもキャンティレバーじゃないですね、そういうキャンティレバーを避けるというのは、結果的にプレキャストの魅力を引き出しているような気がしました。継承するリニューアル 近年、既存を生かしたオフィスのリニューアルが増えています。そのことについてはどう思われますか。日本橋ダイヤビルディングは面白いと思います。これが新鮮だったのは、リニューアルや増築をする際の作法として古い部分と対比的に現代的なデザインを導入するというのが、一番一般的なやり方なのですが、新しい構造の部分を古い部分のテイストを引継ぎながらやるというのは、私の頭の中の選択肢に無く、最初はこれは無いだろうと思っていたんです。しかし、改めて見てそういう手法もあるのかなと思ったんですね。なぜ無いだろうと思っていたかというと、過去に対する敬意を表現しようがないからです。だから、新しい部分を古い部分のテイストを引きずりながらデザインする、というのは無いと思っていました。しかし、先ほども言ったように建築は、下のベース、本体、上の頭という構成ですが、それを救っている。ついでですが、低層部のペントハウスのような部分が、既存を残せず復元したものである点が、少し残念ですね。もう一つこれの面白いところは、一番最初は倉庫だったと聞いてますが、その古い倉庫をオフィスとして使っていた。その使ってきた行為を一番大切にしようという発想が素晴らしい。その結果、ファサードだけ残すのではなく空間として保存しようということになった。商業的なリニューアルだとファサードだけの保存になってしまうことが往々にしてあるので、それは健全な建築の保存なのかといつも疑問に思ってしまいます。設計施工の誠実さ 設計施工の竹中工務店の今後の可能性についてお伺いします。ゼネコンとして設計施工で全ての建築の責任を担うわけですよね。そういった形式で仕事をしている人の持つ誠実さのようなものをプロジェクトを拝見していて感じました。それは、我々のようないわゆるアトリエ設計事務所のやり方や、大規模組織設計の関わり方と少し違っていて、施工側と極端に線を引かずに、良い距離感でどこまでも付き合っていく、どこまでも設計が関与していく。それが、なんだか誠実という感じがして、設計者として幸せでもあるように見えました。やはりそういった環境というのは現在はだんだん失われつつあるので、竹中工務店の設計部は、このどこまででも関わっていく姿勢、その特徴はこれからも自覚して継承していって欲しいですね。 本日はどうもありがとうございました。日本橋ダイヤビルディング写真:ナカサ&パートナーズ※1 オフィスランドスケープ1970年代に提唱された幾何学的な配置と異なるオフィス。オフィスのスペースを間仕切り壁で区画せずに、プライバシーと話し合いを調和させるオフィスレイアウトの手法。 ※2 ミース・ファン・デル・ローエ (Mies van der Rohe)ドイツ出身の建築家。近代建築の三大巨匠。柱と梁によるラーメン構造の均質な構造体が、その内部にあらゆる機能を許容するという意味のユニバーサル・スペースという概念を提示した。※3 シーグラムビルミース・ファン・デル・ローエ(フィリップ・ジョンソンとの共同)の設計によって建設された。高さは159.6m。モダニズム建築の代表作。 ※4 SOM (Skidmore, Owings & Merrill)1936年にシカゴで結成された、アメリカ合衆国最大級の建築設計事務所。鉄とガラスからなる箱状の「インターナショナル・スタイル」と呼ばれるモダニズム建築様式を世界中に広めることに貢献した。※5 レバーハウスSOMが設計した、インターナショナルスタイルの精髄とも呼べる簡素なガラス箱のような摩天楼で、ニューヨーク市に建てられた最初のガラスカーテンウォール工法の建物である。高さは94mである。※6 ル・コルビュジエ(Le Corbusier)フランスで主に活躍したスイス出身の建築家。近代建築の三大巨匠。ドミノシステム、近代建築の五原則などモダニズムの思想を多く示した。※7 サヴォア邸20世紀の住宅の最高作品の一つであり、近代建築の五原則のすべてが、高い完成度で実現されている。※8 フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)アメリカの建築家。近代建築の三大巨匠。プレイリースタイルのロビー邸、キャンティレバーのカウフマン邸(落水荘)、ジョンソンワックス社が代表作。岸 和郎(きし わろう)/建築家1973年 京都大学工学部電気工学科卒業1975年 京都大学工学部建築学科卒業1978年 京都大学大学院修士課程建築学専攻修了1981年-93年 京都芸術短期大学にて教鞭をとる1993年-10年 京都工芸繊維大学にて教鞭をとる2003年 カリフォルニア大学バークレー校客員教授2004年 マサチューセッツ工科大学客員教授2010年- 京都大学大学院工学研究科建築学専攻 教授著書 『デッドエンド・モダニズム』 (LIXIL出版 、2015) 『重奏する建築ー文化/歴史/自然のかなた に建築を想う』(TOTO出版 、2012) 『逡巡する思考』(共立出版 、2007)作品集 『WARO KISHI + K.ASSOCIATES』 (Equal Books、2014) 『WARO KISHI 1987-1996』 (el croquis editorial、1996)(聞き手:垣田淳・花岡郁哉・千賀順・松浦真樹・藤晴香・奥谷将之)Interview05
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