DESIGNWORKS Vol38
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Interview02本号では、竹中工務店の近作の中から、オフィス・研究所・生産施設を中心に、環境エンジニアリングをテーマに特集しています。インタビューには、建築と環境とのかかわり、設計・生産段階の意思決定プロセス等を研究されている東京大学の清家剛准教授をお招きしました。今回、清家氏にはインタビューに先立ち「銚子商工信用組合本店」、「YKKファスナー専用機械部品工場」、「川崎室町ビル」、「TRI-SEVEN-ROPPONGI」を見ていただき、建物に求められる環境に配慮した「あり様」についてお話を伺いました。 まずは、ご覧いただいた作品の感想をお願いします。清家 どの作品も、売りをどこに作るかがはっきりしていると感じました。きれいなものを作るのは当たり前で、その上でどこに上乗せするかというところをしっかりと考えているとどの作品でも感じました。外観をきれいに納めるためには、徹底的なモジュールの整理や構造の考え方など、どこかで無理しないといけないと思いますが、構造に力をいれているところがポイントなのだとわかりました。構造が整えば、あとは比較的楽に色々な形を整えられるということがわかっていて、構造の調整に徹底して取り組んでいるということを、まず銚子商工信用組合本店で強く感じましたし、川崎室町ビルでも同じようなことを感じ、それが大変興味深い点でした。設計事務所では、外装を整えるために構造で無理をするということがなかなか共有しにくいと思いますので、トータルの費用も含めていろいろ工夫の余地があるという点もゼネコン設計部らしいところなのではないかと思いました。YKKファスナー専用機械部品工場は、モノリシックに見えるのではなく、いろんな色のパネルがあって清潔感がある建物というのが最初に見たときに感じた印象です。外装の金属パネルを、標準品と特注品を組み合わせることで質感の違いを生み出しているという説明でしたが、こういった作品は写真のとおりではないものが多い中で、写真のとおりだという印象でしたので、きちんとスタディされている結果だと感じました。コストを上乗せすればいい材料が手に入るのは当然のことなのですが、与えられたコストのなかでいかに工夫できるかというところが一番大事なことだと思います。大面積になったときにどう見えるのかというのを把握しているという点も含め、好感が持てました。また、一般的に窓を設けない精密機械工場において、窓を設けて光を取り入れている意味が、中に入ってしばらくいるとだんだんわかってきました。1日過ごしていないとなかなかわかりにくいところですが、光が時間によって変化することを感じられるということと、室内の環境を安定させるということを両立させており、興味深いと感じました。川崎室町ビルは銀行が入る小さなビルですからさりげなくデザインされていますが、機械換気用の換気口を壁側の目立たない位置に設け換気を行っていたり、自然換気の窓を開けても目立たないところに配置するなど、高度に工夫された建物だと感じました。また、外装のPC板に種石や色のばらつきがあり、製作上のばらつきなどを建築主とどう合意したかというのが一番気になった点ですが、どこまで建築主やテナントに受け入れられるかというのがポイントだと感じました。ばらつきや模様も含め、素材とはどんなものかということを徹底して建築主と議論して、それを納得させているのが大変興味深いと思いました。TRI-SEVEN-ROPPONGIは、建築主がアメリカの企業ということもあり、ガラス張りの個室をもつのが重役で、その重役の部屋がたくさんとれるほどいいオフィスという価値観に合わせ、それに向けて徹底的にプランや空調・設備機器のスイッチコントロールがなされていて、これがアメリカだと言われた感じがして、大変興味深いと思いました。自然換気をとらえなおす 環境エンジニアリング的な点ではいかがでしょうか。清家 今回の作品の多くに自然換気が取り入れられています。ここ10年くらい自然換気を採用する建物は増えているのですが、それをどう使うかはユーザー次第になっている傾向があり、自然換気をどう使いこなすのが良いのかという点については今後議論が必要だと思います。自然換気の有効性という点からみると、被災したときなど、機械が止まった時を考えると非常に有効ですが、普段から開け閉めできるようにしておかないとあまり意味がありません。開けられるというだけで、人間はストレスが緩和されるような場合もあるので、自然換気をつけるのは悪いことではないです清家剛氏に聞く壊されない建築をめざしてInterview銚子商工信用組合本店写真:FOTOTECAYKKファスナー専用機械部品工場写真:宮下信顕川崎室町ビル写真:上田宏
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