DESIGNWORKS Vol38
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Interview03が、一方で空調をコントロールする上では外乱要素になるので、安易に自然換気を入れることは、日本の気候ではエネルギー的にはあまり有効ではありません。自然換気を利用してエネルギー的にプラスになる方法の検討や、知的生産性向上への活用など、日本なりの自然換気をこれから先考える必要があると思います。また、人の振る舞いという点からみると、個人の行動というのは止められないので、人の振る舞いをうまくコントロールする方法について、もう少しアプローチを検討する余地があるように思います。住宅は、窓の開閉やブラインドなど、住まい手の自然な行為によって快適に過ごさせようとしていて、空調はその一要素になっていると思いますが、オフィスではいろんな人が混じって使うという前提で考えているからか、どうしても空調ありきで考えています。そのため開閉できる窓は後から追加された要素として空調に対する外乱要素となりがちです。オフィスであっても、場面や天候など、状況に応じて人は窓を開けたくなる時があるので、そういった人の振る舞いを利用したデザインができるといいと思います。働き方・使い方と、窓が開くということがうまく統合されると、カーテンウォールに自然換気の窓を設けることが定着していくと思います。いまは東日本大震災後の恐怖感で、災害時などのBCP対応としてビルに自然換気を設けることが当たり前になっていますが、やがてその恐怖感と自然換気を設ける意味も忘れられる可能性があります。ビルの寿命は長いので、これから先も自然換気の窓を設ける建物が作られ続けると、ユーザーが自然換気に習熟し、自然換気を使いこなしていくと思いますが、一時のここ5年10年の流行だけで終わると、ビルのストックの中で、大半は窓が開かない建物という状況が相変わらず続くことになります。そうすると、窓を開け閉めするオフィスや窓を開け閉めする意味というのが結局日本では追及されないままになってしまい、一時の流行として終わってしまうことを危惧しています。都市におけるビルストック   都市におけるストックという観点からは、建物がどこにあるべきなのか、といった点も含めて議論が必要かもしれません。清家 自然換気の窓といっても、密集したビル街のなかで窓を開けようという人はあまりいないので、そういう場所で無理やり自然換気の窓をつける必要はないと思いますが、立地によっては眺めのいい場所にみんなの憩いの場所をつくり、自然をちょっとでも感じるような仕掛けを作るとか、そういうことを一生懸命考えていくようにすると、いい場所にあるビルがいい室内空間を作るようになっていくと思います。一方で竹中工務店の東京本店のように、内部に光庭など自然をとりこみ光をとりこむような建物は、それなりのフットプリントがないとできないので、ある程度の大きさを持った土地にはそういう建築を実現する価値があると思います。それぞれの敷地や場所の条件に応じ、いい空間をつくって、そこにいると気持ちよく働けるというところを増やしたほうがいいと思います。いま特別なビルだけに価値があるように言われていますが、実は、立地が悪かったり・駅から遠く離れたところにあるほうが過ごしやすい環境にあるはずなんです。そういう競争ができてくると、ストックのバランスもよくなると思います。ものづくりの時間   建築の生産における点ではいかがでしょうか。清家 建築を作るときに、コストのことばかりが議論になりますが、もっと声を大にして言わないといけないのが時間についてです。建築をつくるときに、時間をかけさせてもらっていないというのは大変まずいことだと思います。設計も時間をかけることで良い設計ができますし、生産という点からみても、何をどうつくるかを余裕をもって早々に決めると製造ラインの範囲内で無理せず製作することができるため、安くつくることができます。時間を短くした方が安く上がると信じている建築主もいますが、本当は時間をかけたほうが見かけのコストも下がります。建築主にとってはタイムもマネーなので早くつくらないといけないということも理解できますが、何十年も使う建築をつくるのに短い時間で設計し、短い時間で作るというのは、失敗のもとだというだけでなく、いいものに発展する可能性がないと思います。早めにアイディアを議論し始めるというのはとても重要なことだと思います。設計施工であれば、設計だけでなくて施工の時間も含めて少し時間を作ることができるので、そういう利点を是非TRI-SEVEN-ROPPONGI写真:(株)ミヤガワ

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