DESIGNWORKS Vol38
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Interview04生かして少し時間をかけて検討したものづくりをやるといいと思います。時間がないというのが一番質を落としますから。決定プロセスとBIM清家 建築家の丹下健三先生は、丹下チームと呼ばれる各メーカの担当者のチームを抱えていて、毎回技術を検討し提案してもらっていたそうです。丹下チームだった人に、面倒なことを毎回やっていて大変ではなかったかと聞いたことがあるのですが、丹下先生の注文はこだわりがわかるところが良く、また利益もでるといいます。担当者として信頼され、また決定が速いところが良いというのです。打ち合わせは変更も含めてその場で決定し、一回で終わることがほとんどで、何度もやり直したことはほとんどないといいます。難題を出されてもそこからゆっくり検討すればよく、時間があれば作れるといっていました。意思決定が早く、変更が少ないことで利益もでて、いいものになるということです。設計でもゼネコンのBIMでも同じですが、意思決定者がはっきりしていればBIMは有効だと思いますが、誰か強烈なトップがいないと物が決まっていかないと思います。どうしてもゼネコンでBIMを発達させると意思決定もBIMのルートでやろうとする傾向があります。20年くらい前にコンピューターが流行り、CADが出てきたときにゼネコンが同じことを開発しました。このときは開発して上手くいかなかったのですが、何が上手くいかなかったかというと、意思決定ができずたらいまわしが起きるということです。部門を超えて判断をしないといけないことがあるとコンピューター上では誰も意思決定ができないので、やっぱり会議になります。デザインと性能とコストのバランスを見て、やりとりするようなダイナミックな意思決定は、BIMの中にはなかなかつくれません。それの権限を持っている人がいないといけないと思います。一方で設計の条件が今までの建築の常識から離れ、どんどん複雑になってきているという点を感じます。BCPや環境設計も多様になってきているので、かつては、建物のペリメーターゾーンを考え、PAL値をいかにコントロールするかで何とか外装の設計ができていましたが、今は照明エネルギーが得になるから全面ガラスで良いとか、BCPのために自然換気を入れるとか、外装に求められる与条件が全く変わってきているのが実情です。BIMを何のために使うかという点も考え直す必要があると思っていて、設計のためのBIMというのはそういう複雑な問題を解くために使われるべきだと思いますが、そこにはまだ遠いかなと思っています。建物解体とリサイクル   建築における解体やリサイクルといった点についてお考えをお聞かせください。清家 解体やリサイクルは重要なテーマだと思います。たとえば普通のビルは重量比で92~93%が鉄とコンクリートです。残りの8%のうち、ガラスと石膏ボードとアルミが7割くらい占めていると思います。これらは解体はできても、きちんと分離してリサイクルに廻さないと、たかが8%でも小さなビルでも数百トン、大きなビルだと数千トンなので、大変重要ですし、それはゼネコンの使命だと思います。また、職人が少なくなる中で、建材が複合化してきています。複合化しているものほど分離しにくいものになりつつあるので、今それをどう扱うのかという問題があります。ゴミとして少量しか出ないと処分場に埋めたほうが安いため、リサイクルが進みにくくなります。複合化されている建材、分けにくくなっている建材というのは、複合化することで人手を減らそうとしているわけですが、それは一方で解体しにくい、最後は分けにくいものになりかねません。本当は複合化しながら解体やリサイクルといった視点でもチェックしていく必要があると思っています。ビルは大量に同じものが出るので比較的安定していて、たくさん量が出るという意味ではリサイクルにとっていいのですが、住宅が問題です。個別の建材ごとにどんどん複合化しているというところがあります。あらゆる建材が複合化して本当は分離しにくいものになりかけてないかというのは観察すべき点だと思っています。壊されない建築をつくる   建築を作る時点で解体やリサイクルといった点も考慮した材料の選定などが重要ということでしょうか。清家 そういう視点ももちろん重要なのですが、長寿命にはかなわないので壊されない建築をつくるのが一番だと思っています。設計者に対して必ず言うのは、30年で壊され建築モデル構造モデル設備モデルBIMモデルによる設計の例

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