DESIGNWORKS Vol38
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Interview05る建築にしないで欲しいということです。建築主が気に入って、改修してでも使うと言ってもらえる建築をつくることが設計者が全力を尽くすべきところで、そこは迷う必要がないと思います。解体やリサイクルのことを考えることも重要ですが、50年くらいたった時、建築主がほかの用途に変えてでも使っていきたいと言ってくれるような建築を作ること、そういうことを考えるのが大事だと思います。設計という面で言うと、いいものをつくるということがよっぽど環境に効果があると思います。先を見越して良いものを作るというのはなかなか難しいことですし、いろいろな圧力に負けて壊される時もあると思いますが、いいものをつくるということを超えるものはないと思います。   設計施工に取り組む竹中工務店の作品について、これからの可能性や期待することなど、最後に伺いたいと思います。清家 設計施工である限り、今回検討して実現しなかったことでも次回、同じ技術で同じアプローチを検討することができます。複数の現場を通して積み重ねて、技術を前に進めていくとか新しいことにチャレンジすることができます。二回チャレンジしてダメだったけど三回目もう一回というときに全く縁が切れるわけではなくて、ゼネコンという組織の中に技術を蓄積できるわけです。あるいは本来建築が進むべき技術を技術研究所が開発したり技術部が検討して探して来たりということもできるので、すごく技術に近い設計ということができるというのがゼネコンの設計施工だと思います。三回目の現場でやっと出来たとか、そういう単独の設計事務所だと無理なことにチャレンジしてほしいと思います。まず設計事務所として壊されないような良いものを作ってほしいと思いますが、ゼネコンという組織を通じて技術を発展させた設計ができるというのが設計施工の他にはない魅力なので、設計事務所としてしっかり競争してほしいのと、他にできない技術としての検討ができることを生かし、さすがだなというところを見せていただけると良いかなと思います。東京本店の外装PC板は、型枠の工夫によってバリエーションを作っているところや、コストも抑えているという点など大変好感が持てます。とてもゼネコンの本社らしいデザインだと思います。1+1が2になるのではなく、1+1が3になるのがゼネコンで、そうであるべきだと思います。ゼネコンの技術力の違いというのは、見たことのないものができるという点ではなく、技術の工夫で何かを克服している点だと思います。そういうところを時々出していただくとこちらも知見が広がっていくので、是非頑張ってもらいたいと思います。   本日はどうもありがとうございました。(聞き手:関谷和則・千賀順・鈴晃樹)清家 剛 (せいけ つよし)/工学博士1987年1989年1991-99年1999年1999-07年2007年-主な著書東京大学工学部建築学科卒業東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了東京大学工学部建築学科助手東京大学にて博士 (工学)東京大学大学院新領域創成科学研究科 助教授東京大学大学院新領域創成科学研究科 准教授『3D図解による建築構法』(松村秀一編著 (共著)、彰国社、2014)『建築再生の進め方 ストック時代の建築学入門』(松村秀一・新堀学・清家剛・佐藤考一・脇山善夫 角田誠 (共著)、市ヶ谷出版、2007)『ファサードをつくる』(松村秀一・清家剛編 (共著)、彰国社、2005)『サステイナブルハウジング』(清家剛・秋元孝之 (監修・共著)、 東洋経済新報社、2003)竹中工務店東京本店

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