DESIGNWORKS Vol40
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Interview02本号では、竹中工務店の近作の中から、オフィス・研究所・生産施設を中心に、コンピュテーショナルデザインをテーマに特集しています。インタビューには、世界の先端のコンピュテーショナルデザインを日本に導入し、プログラミングや3Dモデリングを駆使して建築デザインへの応用を研究されている東京大学の小渕祐介准教授をお招きしました。竹中工務店では2016年から設計部内にアドバンストデザイングループ(ADG)やコンピュテーショナルデザインワーキンググループ(CD-WG)を組織配置しており、2018年3月には設計本部にコンピュテーショナルデザイングループを新たに創設し、様々なプロジェクトにおいてコンピュテーショナルデザインを実践しています。インタビューに先立ちコンピュテーショナルデザインを展開した「ペプチドリーム新社屋」、「日本海事検定協会本部ビル」を見ていただき、設計施工におけるコンピュテーショナルデザインの可能性についてお話を伺いました。   まずは、ご覧いただいた作品の感想をお願いします。小渕 ペプチドリーム新社屋ですが、綺麗で美しい建物で、デザイン的にいろんな工夫がされていると思いました。今回コンピューターに特化した話として、どこまでがコンピューター上でデザインされたものなのかなということにとても興味がありました。すべてがコンピューター上である種判断があまり要らずデザインがされつくされているのか、実はそうではなくコンピューターを使うことで現場で考えなくてはいけないことがどのくらい生まれてくるのかということです。この建物を見ながら思っていたのは、すべてがミリ単位で納まっていたので、竹中工務店ですからそこのところは全部コンピューターでデザインしつくされていて、現場ではここにくればCADでグリットスナップのように、ピシッとマグネットみたいに納まるように出来ているのかな、ということを考えながらずっと見ていました。しかしやはりところどころすごい気を使いながら収まりに苦労しているところが見える場面がありました。   具体的にはどの場面でしたか。小渕 1階の平面形状がカーブしている通路の床の板張りの部分で、つなぎ目を隠す逃げが全然ありませんでした。海外だとつなぎ目を隠す為にベースボードという壁が床に付く時に薄い10cm位の巾木があり、それが装飾的になっているのですが、見させていただいた限り、つなぎ目を隠すものがほとんどありませんでした。そういった隠すような収まりはしないという事に対して、コンピューターが何を助けてくれていたのか、それとも職人さんの技でそこを賄っていたのかということに凄く関心を持ちながら見ていました。また設計者の話を伺っていると、コンピュテーショナルデザインをする上で、ある種設計者の判断をあまり必要としないようなコンピューターの使い方をしているのではなく、建築主とのコミュニケーションの為のツールとして使われているなという印象がありました。またルーバー形状の決め方が主に内部空間からの要素に最適化しているように感じましたが、中からだけではなくて、例えば羽田空港やボートに乗っている人から見た時にどうなるかとか、都市的な要素もいれることで、コンピューターの使い方が全然違うのではないかと思いました。例えばルーバーは隈研吾さんの建築のように、壁にしたくないけどただ単にガラスの箱にもしたくない、そこでちょっとソフトなパラパラしたものをつけると、都市的に壁の強い印象が和らげるのではないかといった考え方があります。その際に、都市に対してルーバーを使う事によって、境界をどのように位置づけるのか、ということが重要です。仕切りでもあるけれども、繋げる役目でもある事に対してアイデアを盛り込まないと、コンピューターを使ってグラデーションを使って、ちょっと面白いオシャレな建物が出来ましたということになってしまう懸念があるからです。やはり視点を広げて都市までとはいかないまでも、環境的なフィルターなのか、文化的なフィルターなのか、この敷地を考えた時の、大きい壁をどういう風に位置付けるのかという視点で、コンピューターをどう使うのかという事を考えると可能性が広がると感じました。コンピュテーショナルデザインインテリアと都市から   内部空間に加え都市的な視点が必要という点を詳しくお聞きしてよろしいでしょうか。小渕 「日本海事検定協会本部ビル」を拝見して、中の環境と外の環境というのが同時に展開されるファサードはすごく重要なわけですから、ファサードのルーバーも都市の装置とは言わないまでも都市に対してどういう役割を小渕祐介氏に聞く設計施工におけるコンピュテーショナルデザインの可能性Interview竹中工務店 コンピュテーショナルデザインの取組体制設計本部東京本店設計部ADGCD-WG名古屋支店設計部大阪本店設計部国際支店設計部BIM推進室アドバンストデザイン部門コンピュテーショナルデザインGランドスケープG防災計画G伝統建築G構造設計システムGワークプレイスプロデュース本部連携・参画

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