DESIGNWORKS Vol40
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Interview03するのかを評価することが大切だと思いました。一般の方は、海の波のイメージとして認識するのだと思いますが、都市に溢れる一般的なリズムのファサードと違い、建築と都市との関係性、あるいは内と外の関係性において、どのような効果が生まれているか、ということです。現地を見させていただいた時に「向かい側の建物の方とお友達になれますね」と言いましたが、今回の建物は、窓際に人が張り付くとアクティビティがファサードに対して外向きなんですよね。普通であればファサードに対して、そのちょっと手前から内向きにデスクレイアウトが始まるんですけど今回は外向きで、カウンターの所に向かって仕事が出来るという事で、道をはさんだ向こうの会社とこちらの会社の人たちがお互い外を向き合って仕事をしている関係性が、この都市の中で出来るというということを感じました。そして裏側は東京ならではのごちゃごちゃしたマンションや雑居ビルがあって、そういったある種ドメスティックな空間だからこそ、ちょっとしたリフレッシュコーナーをもったレジデンシャルなアクティビティで、前面の都市としてのファサードとレジデンシャルなファサードを繋げる道のような新しい都市空間として感じられました。海外では表と裏って凄く重要なんです。表はやっぱり都市的な表現をする、裏は、ある種ソフトな住居的な小さいスケールでというものなので、中の家のデザインを見ても、リビングルームが表側にあって、キッチンは裏にあってという、そういうアクティビティのヒエラルキーが中にある、似たような配置だと思いました。ファサードというヨーロッパでの街並みの話ですと、社会的責任として街並みを崩してはいけない建物という捉え方があります。これはもっと発展していて、もっと地域と社会そのものを取り込んで、関わろうという話です。コンピューターをどう使うか   コンピューターをどのように活用するかについて先生の考えを教えていただきたいです。一昔前はコンピューターによる情報を共有や納得する手続きも要らなくて、問題なく建物が出来ていたように感じます。例えば丹下健三さんの国立代々木競技場は、もちろん坪井善勝さんも構造的にきちんと設計なされているけど、最終的には「やっぱり構造はこうだ」みたいな建築家の判断とそしてそれがきちんと工学的に説得され、建築主にも伝わり、働いている仲間にも共有されていたと思います。2作品を見させていただいた時、コンピューターを「説得する為のツール」として使っているのか、もしくはコンピューターを使うことによって「全然考えていなかったようなものを期待しているのか」どちらなのかなと考えていました。例えば今まで私がAAスクールとかでやってきたのは、コンピューターを使って想定外のものが出来てしまうものを「どうしようか」といいながらも、想定外のものとして良いものにしていきました。他にも例えばザハ・ハディッドが曲面を重視した形を、これはもちろん感性的な事もあるんですが、構造的に最適化していくとこういう建築を作ることが出来てくるという、そのギャップというものがすごく大きいんです。彼女らはそのギャップが好きなんですよね。だからショッキングなものを使うことによって、アイコンとしての価値観を与えていると思います。おそらく拝見した2作品は、目指していないゴールをそれによって発見しようとは今のところしていないかもしれない。以前だったら設計者が自分たちの面白いデザインをしたいだけなのではと思われる懸念を工学的に説明していましたが、今回は光環境だとか、日射とかをクライアントに見せて共有していく流れを強く感じました。   ショッキングなものの価値観とはどういうものですか。小渕 ショッキングといっても悪いイメージではなく、例えばクルマのデザインでも、ちょっと古い話ですけども一時期ベンツがAクラスを出した時に、一部の人には「えーこれが」といったデザインに一瞬違和感がありました。けれども、2・3年すると当たり前になるような感じとなるようなちょっとした違和感のようなものが、デザインの中で一番今後目指すものじゃないかなと思います。そのギャップがどれくらいなのか、全く拒否されてしまうのか、これなら大丈夫か、おそらくそのあたりがブランディングや広報的な手法に入ってくると思うんです。環境という事に対してなのですが、ノーマン・フォスターのロンドンのシティ・ホールや30セント・メリー・アクスは、環境環境と言ってデザインしたんだけども、最終的には、あれほどガラスを使う事に対して、間違いだったという風に彼らは考えているんですね。ガラスを使う事自体が環境に良くない。ガラスを多く使う事で凄い空調負荷がでますが、なぜガラスにしたのかというと、やはり街を資本的に考えて景観を売り物にする一環としてガラスが凄くペプチドリーム新社屋写真:小川重雄日本海事検定協会本部ビル設計:井上登

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