DESIGNWORKS Vol40
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Interview05精密度でピシッと収めるには、特定の技術をもつこの会社しか出来ないんだというようなことがあったのだろうかという視点で見ていました。というように最適化すると、先ほどの矛盾の話につながるのですが、全然異なる作業や仕事が生まれてくるというのも、一つの可能性なのかなと思います。 インフラとなる3Dソフトの影響もあるのでしょうか。小渕 当初建築には2DのCADしかありませんでした。3DソフトのGrasshopperやRhinocerosは、プロダクトデザインの為に開発されたソフトなので、全部ピシッと収まることを前提としたソフトです。ということは、おさまりの逃げとかは、あってはいけないもので、最近あまり使われなくなりましたが、MAYAは元々アニメーションの制作に使うもので、建築設計には関係なく、どういう風に見た目として作れるのか、シミュレーションできるのか。または、3DMaxとかゲームのソフトとか、当初建築ソフトというのは、いろんなソフトを試してみたんです。ムービーのアニメーションを使ってみたりとか、プロダクトデザインを使ってみたりとか、使いながらよせ集めてそれで今のソフトが出来ている。または飛行機をデザインするBIMのCATIAはさまざまは機能をもったソフトが統合されてできている。しかし、建設現場のいろんな複雑な製品や人に頼った仕上げ等が集まってできる生産体制でつくられるものは他にありません。だから、すごい難しい。工場でピシッと作れば精度も機能も良くなるといったものではなく、建築が特に違うというのは、人の手が入ってくる。更に天気がどうなのかとか交通がどうなのかといった、いろんな複雑な状況の中で、コントロールしきれないところも配慮しないといけない。そのギャップがあるのは大きいと思います。私が研究室でやっていることは、まさしく精密さを上げることに対するある種の可能性を探していることもあり、難しさをどのように研究の中で位置付けるのかというのもので、極端な事を言うと、「間違いだらけの建築だから反対にいうと間違いのない建築を」という、コンピューターがある事によって、人が間違えた事を全て解消できるようなそういう施工方法があるかということです。竹中工務店も宮大工から始まった会社ですが、昔の宮大工さんというのは、全部ピシッとした設計図があってやるのではなく、各部材での適材適所を分かっていて、この問題が起こった時はこういう風に納めるとか、ちょっとズレてしまったら、こちらをこうやるというすごい微調整を全部していくといった職人技術がある。設計図とは異なっていても、なにかそういう昔の建物って間違えてないと思うんですよ。ここが納まらなかったから、また新しいものを考えてつくるといった調整がリアルタイムに行われていくような作り方みたいなものが、コンピューターを使うことによって出来る可能性があるのかなと思っています。精密になればなるほどコストが上がるというのではなく、精密ではないけれど質の良いものを造るという。たぶんピシッとしているものは精密でいいけれど、それがどういう意味なのかというと、たぶん視覚的にそういう均一的なものが、いいものだという先入観があるからで、ズレているとクレームがでるからだめだとかそういったことです。話が変わりますけど、東大のキャンパスはスクラッチタイルで構成されています。あれはフランクロイド・ライト設計の帝国ホテルの影響ですが、ライトはレンガを同じものとして造ろうとしたけれども、やっぱり火加減とか質が変わってしまうから、スクラッチすることによって、ある程度の均一性が得られるけれどバラバラにも見える。だからスクラッチタイルは面白いなといつも思いながら、スクラッチタイルに囲まれている一号館の私の研究室で、そういった柔軟性があることの可能性を感じています。 施工という職業自体にも影響してくるのでしょうか。私の研究室でもうひとつ施工とコンピューターとの関係で研究しているのは、どのようにコンピューターが施工の人たちをサポートできるかということです。ソフト面やシステムでといったことはもちろんですが、根本的な目的というか野心的な狙いは、施工という現場の職人さんをある種より魅力的な職にできないかという想いがあります。いま現代社会においては建築業はあまり格好良いというイメージが少なく、本当にものづくりが好きな人しか来ないのではないかと思います。将来何になりたいですかと子供に聞いて、職人や施工職ってあまりでてこないと思うのです。職人や建築の大工がより格好良く魅力ある職業にするためにはどうすればよいのか。建築を支える職人さんは実はコンピューターを使って世界の最先端の事をやっている、とても魅力のある仕事にどのようにすればできるのかを模索することもコンピューターの一つの使命だと考えています。
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