02Interview東京ミッドタウン八重洲 東京駅側外観 * *写真:小川重雄東京ミッドタウン八重洲 地下バスターミナル *新種の、やや脈絡のない複合建物とも感じました。これは都市計画の方法の変化に大きく影響されているのですが、バブル経済が崩壊し、その後の2000年以降、経済をいかに活性化させるかが課題となります。東京がどんどん世界から取り残されていき、どうしようかっていう時に考え出された開発の活性化の方法が、「容積率の緩和をインセンティブにし、緩和と引き換えに、建物をつくる時にその都市に必要な機能を一緒に開発してもらう」という方法です。開発の中で公共貢献をすると容積率がアップするという方法です。その方法がかなり細かく組み立てられ、20年間それを実践してきて出来たのが今日の東京です。この方法を使って、八重洲には、小学校、商業施設、バスターミナル、そして最上階の最高級ホテルまで、さまざまな機能が詰め込まれたという印象です。でも、それらが乱雑に複合しているわけではなく、デザインの力というか設計の力でうまくおさめられたと思います。地下の商業施設は、八重洲地下街とシームレスに繋がっているし、バス乗り場に立つと旅立つ気分になりました。超高層ビルの中に学校があるということを認識させないような校門の構えや道路との関係など、通っている小学生へ配慮したデザインが展開されていて、すごくいいなと思って拝見しておりました。また、今日の都市部では、建物高さが問題なのではなく、ビルの足元空間の質が問題であることを改めて感じました。1970年代ごろの日照権を争点とした住民運動では、「住宅地の日照が奪われる、どうしてくれるんだ」と、2階建て住宅地の中に立つ4〜5階建マンションに対し、大騒ぎをしていました。東京ミッドタウン八重洲 小学校外観 *その当時、人々にとって高いと感じる建物は5階建程度で、あとは遠くに霞が関ビルが建っているみたいな状況です。2階建て住宅地における5階は、すごく気になるんですね。4階と5階の違いも大きい。それが3階になるだけで日当たりが全然違ってくる。しかし現在の東京都心部は超高層ビル時代に入っているので、48階です、55階ですといわれても、下から見ている分には全然違いがわからないわけで、都心では高さはもう問題になっていないのかもしれません。そして問題はむしろ、高層建物の足元廻りがどうつくられるのか、人の目線の高さにどういう仕上げが使われるのか、どういう材料が組み合わされ、どういう質をもった空間がつくられるのか、にシフトしている。都心部の都市計画では足元が問題になっている、その問題解決の最新形を見た、と思いました。 スクラップアンドビルドではなく、既存インフラを再利用してオフィスビルを再構成した「竹中セントラルビルサウス(以下サウス)」の感想をお願いします。饗庭 一般的に壊して建て替えたほうが、早くて安いみたいな話はありますよね。また普通だと既存の躯体を活かす場合、床スラブを抜いたりすることを最初に諦め、構造的な見直しや外装改修も結構諦めると思うので、そこまでよく取組み、すごくダイナミックで面白い事例を見せていただいたと思いました。最近の流行りの共創スペースは、本当に使われていて、うまく共創するんだろうかって斜に構えてみてしまうのですが、意外と使われていた、という感想でした。コロナ禍が収束したので、饗庭伸氏に聞くリセットなき76年目の東京を俯瞰する本号は、テーマ「再構成される都市・建築」を特集しています。東京都立大学 都市環境学部都市政策科学科 教授 饗庭伸先生に、東京駅前大規模再開発プロジェクト「東京ミッドタウン八重洲」と、竹中工務店東京本店の横に建つオフィスビル(2000年竣工、他社設計施工)の再構成改修プロジェクト「竹中セントラルビルサウス」を視察いただき、これからの都市のあり方についてお話を伺いました。 八重洲地域を再構成した「東京ミッドタウン八重洲(以下八重洲)」はいかがでしたか。饗庭 はい。巨視的な視点からは、これからの東京についてちょっと考えてしまいました。「いつまで超高層ビルをつくり続けるのだろうか」と。でも建物には罪はなく、出来上がった建物は全部面白いなっていつも思います。建物は進化していくじゃないですか。竹中工務店が手掛けるような大規模再開発は特に、新技術の塊みたいなところがありますから、新種の蝶を捕まえた昆虫採集少年のような気持ちで建物をみていました。八重洲は、間違いなく新種、もしかしたら日本ではこの先できないかもしれないという建物だと感じました。このような新種は、お金が集中するところに生まれやすい。コロナ禍対策として実装された、エレベーターボタンの非接触対応などは、これからの建物の遺伝子になっていく技術なのかもしれません。色々なことが試され、難しいことをやり抜いた結果が技術として確立して、次の世代に繋がっていくわけですね。また、これは都市計画の仕掛けが導いたことですが、Interview
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