Interview05塩尻市との地域連携協定事業 酒蔵再生 宿泊施設 BYAKU Narai写真:ココロプロデュ―ス林広明いうと国土交通省が壊れるほどのリセットじゃなく、なんとか復興庁がつくられて、旧来型の方法で復興をすることができたので、これもぎりぎりリセットではない。つまり、リセットのない76年目は、初めて私たち日本人が経験している状況です。それは別に悪いことではなく、むしろ良いことです。戦争にもなってないし、日本沈没みたいなことも起きていない、ということです。リセットなき76年目の都市の特徴は何か、冒頭にもちょっとお話したことにも近いんですが、「都市にいろんなタイプの建物がある」ということです。建物のクセとか寿命とかがそれぞれ違う、生態が違う建物が共存している状況、そこに生物多様性のようなものがあり、そんな視点で都市を眺め直すことが大事かと思います。住宅の生態、商業建物の生態、個人商店、スーパーマーケット、カテゴリーキラーの生態、産業系の建物の生態が違う。全体としてとても複雑な生態系になっているので、それぞれの寿命や新陳代謝を見極めて、ひとつ一つの建物に適切に「技術」を投入していくことが、都市を持続させることにつながると考えています。都市を持続させる、という問いは大きな問いですが、ひとつ一つみんな違う生き物の集まりとしてとらえ、個別の解を集積していくしかないということですね。とても当たり前のことですが。 まちづくり企業として竹中工務店は、都市を活性化する設計施工や行政と連携しまちづくりを展開しています。どのような印象をもっていらっしゃいますか。饗庭竹中工務店は大工集団というイメージで、建築ディテールを楽しく語り、つくり方や(聞き手:関谷和則・鈴晃樹・田中裕大)工法について考えることが好きな人が多いっていう印象です。長野県塩尻市奈良井で酒蔵をリノベーションした宿泊施設を手掛けたりしていますよね。専門性がある人たちが、行政をサポートしたり、地方に技術を伝承するのはありでしょうね。地方の工務店組織がだいぶ弱くなっていると聞きますので、逆にそこを再生するみたいなことが起きると面白いと思います。今後のまちづくりの展開が楽しみですね。 本日はどうもありがとうございました。饗庭 伸 (あいば しん)/都市計画家、東京都立大学教授 (工学博士)1971年1993年2000年2017年2020年兵庫県生まれ早稲田大学理工学部建築学科卒業東京都立大学工学研究科建築学専攻首都大学東京教授改称により東京都立大学教授著作 『都市をたたむ』花伝社、2015『津波のあいだ、生きられた村』鹿島出版会、2019年(日本建築学会著作賞)『平成都市計画史』花伝社、2021(日本建築学会著作賞・日本都市計画学会論文賞・不動産協会賞)『都市の問診』鹿島出版会、2022
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