DESIGNWORKS_60号
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02千代田インテグレ本社写真:島尾望原田 千代田インテグレ本社についてですが、オフィスと住宅の間ぐらいのスケール感で、作り込みの仕方とかもアトリエ建築家のような感じといい意味での竹中設計らしさが同居している作品でした。外壁がかなり囲われているので、風景が見えなくてどうかと外観を見て思っていましたが、吹き抜けとボリュームの関係や、真ん中の階段で外部にも繋がっている場所であることを感じられたので、広がりを感じました。簡単な操作なんですが、道路の反対側にある隣地の階段道がそのまま建築の中に入り込んでいるような、街の連続の中にいるような風情はすごく効いていました。また、平面的に軸が6度振れているというのもとても効いてて、奥の方が巾着袋的に膨らんでいるところとか、空間に流動性が生まれて、それも空間の良さになってるなと思います。ディテールについては、研ぎ澄ますようなディテールですよね。そこにとても執着がある感じが見て取れたのは、興味深かったです。そういう、モノへの執着みたいなものが作品性だなと思って見ていましたが、竹中工務店には、モノというかそのあり様への執着みたいなことを毎回感じますよね。それがあまり強く見えすぎると、今度は空間の方が見えづらくなったりして、 視察いただいた感想をお聞かせください。Interview東宝日比谷プロムナードビル写真:浜田昌樹経験とか空間が見えづらくなったりもするんですが、でもやっぱりこれはひとつの作家性で、むしろアトリエよりも作家性が強い組織なのかもしれないなと思ったりしていました。東宝日比谷プロムナードビルは、ひとつの自立した建築でありながら、日比谷ミッドタウンや街との連続性を考慮し、連歌のように周りの要素を引き取って、あり方を引き継ぐようにつくっていて、孤立しない佇まいになっていることがよく分かりました。地下鉄との接続や、オフィスエントランスを2階に設け、2階のエレベーターシャフトのスラブを二重化することで1階を使えるようにするなど、厳しい制約の中でこれだけの到達点に到ったというのも良かった。オフィス部分の換気窓についても、アナログに開けたいときに開けるというやり方で自分のいる場所を制御できるというのは、自律神経的にも非常に大事なことなので、それだけでも健康なオフィスになるんじゃないかなと思いました。さらに、建築主である東宝さんとの関係性も素敵だなと思いました。日比谷公園を臨むコーナーのテラスは、1㎡でもオフィス部分を大きくしたいと要望されそうなんですが、これからのオフィスは少し気が抜けるような場所や、心地良い場所みたいなものを持っていなければならないんだという定性的な提案を、床面積という机上の定量的な基準だけで判断するのではなく、信頼関係によって実現しているというところが、素晴らしいと感じました。建築の完結性とか自律性みたいなものは、それがなければ建築じゃないようにみられがちですが、でも自律しているから閉じてなければいけないということもなくて、「開いていながら自律している」という、生き物のような状態が建築でできないかな、と思います。ゴジラ広場に面するコーナー柱をV型にしてまちに開いていることとか、既存CORNES HOUSE写真:井上登地下躯体を山留として利用するために柱が傾いているとか、意匠発ではない自律性の揺らぎ方、ほどきかたが好ましいなと思いました。CORNES HOUSEは設計の密度が高く、楽しませてもらいました。特徴が異なる好ましい場所をたくさん芝公園脇につくって、それに合わせて使いたい人が集まってきて、使いたい時期、気分によって移動して場所を変えていくような建築です。むしろランドスケープなんでしょうね。オフィスに対して能動的に居場所を選ぶ自由があるっていうのは、これまでの均整を目指すオフィスとは対極にあるあり方だと思います。これがテナントビルだったら相当難しいですが、本社オフィスビルとしてできたっていうのもすごい収穫だと思います。また、それをアトリエ建築家ではなく、ゼネコン設計部で実現したということが面白い。不合理や説明不可能な事象に対しても、提案の未来像に共感したので仕事を頼みますというのは、アトリエ建築家の仕事依頼のされ方だと思うので。竹中設計の仕事は、研ぎ澄ます建築という印象がすごく強いんですが、CORNES HOUSEはどちらかというとブルータルな感じがして、そのラフネスの度合いのコントロールが非常に適切だったなと思いました。トイレ洗面台の鏡下タイルの選び方ひとつとっても、揺らぎ方の度合いがちゃんと建築の持っている世界観として統一されていて、共有しているその価値観、世界観みたいなものの範囲が広い感じが、ここいいな、と思えることに繋がっていると思いました。原田真宏氏に聞く都市と建築の関係− 読みかた、つくりかた本号は、周辺環境との関係性を丁寧に読み込み、「都市との関係性」を再構築することを目指したオフィスを特集しています。芝浦工業大学教授であり建築家の原田真宏先生に「千代田インテグレ本社」「東宝日比谷プロムナードビル」「CORNES HOUSE」を視察していただき、「都市と建築の関係の読みかた、つくりかた」についてお話を伺いました。都市と建築の「質の対話」―コンセプトで建築を扱うことを丁寧に避ける   先生の設計事務所ホームページに「質のInterview

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