DESIGNWORKS_60号
7/36

Interview05MIYASHITA PARK 2020年竣工写真:堀内広治かってくれるんだと思います。模型やCGは当然つくるんですけど、全部決め切っているわけではないですね。場所性をつくってるんだけど、それはあくまで世界観の主役を示しているだけで、素材を決めたときも、それ以外の部分をどれだけ曖昧なまま調整代として最後まで保って、コストを含めてコントロールできるかが重要だと思っています。2021年竣工した隠岐島のホテル+ユネスコ世界ジオパーク拠点施設Entô、地域との関係性のつくりかたや構法に離島立地ならではの特徴がありますね。渋谷PARCO 2019年竣工写真:島尾望な外が支配的な環境が手に入るんじゃないかと考えた訳です。それは、あの島の環境、景観にとってすごくいいなと思いました。さらに、外廊下にしてレセプションを通らなくても自分の部屋に入れるようにすることで、街で知り合った人たちがそのまま部屋に入ってくるように街と繋げています。動線的にはコテージの様なホテルです。サイドテラスをつけて街と部屋の関係がすごく近くなるようにしました。島の人々がとてもいい。都市のようなサービスが無い島だから、全部自分たちでやってるんですよ。世界の中にダイレクトに暮らしている人たちの生きる力みたいなものが魅力的に見えるんです。また、2300人しかいないからみんなの職業が一つじゃないんです。半農半漁みたいに半役場、半ホテルとか半農業半厨房とか、そういう人がいっぱいいて、ホテルの中に居る人もホテルの中に閉じてないんです。その人と付き合うとどんどん世界が繋がっていくんですね。島の人も、外の人達と接点が欲しいんですよ。富裕層が来ると産業を支援するエンジェルとなってくれる可能性もあるので、それもやっぱり大事なことだろうなと思って、外と繋がれるような形式にしたんです。予算が限られていたので、すべてひとつの形式で解くってことをやっています。そういういろいろなことをデザインによって一太刀で解決するのは、最初の作品であるXXXXという陶芸アトリエ以来の作家性かもしれません。その時のDNAが残ってるんでしょうね。  最後に、設計施工に取り組む竹中工務店に対し、一言コメントをお願いします。原田 竹中工務店は一番「作品」を意識しているゼネコンだと思っています。有名な話ですが手が(聞き手:関谷和則・佐田野剛・鈴晃樹・吉田直弘・ 原康隆・奥村崇芳・陳小可)原田 真宏 (はらだ まさひろ)/建築家、芝浦工業大学教授1973年1997年静岡県生まれ芝浦工業大学大学院建設工学専攻修士課程修了隈研吾建築都市設計事務所文化庁芸術家海外派遣研修員制度を受けホセ・アントニオ & エリアス・トーレスアーキテクツ(バルセロナ)に所属磯崎新アトリエ原田麻魚と共に「MOUNT FUJIARCHITECTS STUDIO」 設立慶應義塾大学COE特別講師芝浦工業大学工学部建築学科非常勤講師慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科非常勤講師芝浦工業大学工学部建築学科准教授東京大学工学部建築学科非常勤講師東北大学工学部建築社会環境工学科非常勤講師芝浦工業大学工学部建築学科教授芝浦工業大学建築学部建築学科教授1997-2000年2001-02年2003年2004年2005-06年2007年2007年2008-16年2014年2015年2016年2017年-主な作品『道の駅ましこ』2020年(日本建築学会賞作品賞)『知立の寺子屋』2021年(BCS賞)ほか多数けた建築物を「作品」と呼んでいるゼネコンは竹中だけですから。以前青山の隈事務所で働いていたころ、近くにあった外苑前のBMWショールームが入ったビル(北青山吉川ビル)がいいなと思ってよく見ていました。構築的でありながらイタリアンモダンのような洒脱さがあるところが好きでしたね。作家性という記名性がある不思議な組織設計かなっていうことを昔から感じています。竹中工務店全般として、「研ぎ澄まして行く」という印象はかなり昔からありましたし、実際、その遺伝子が強いと思うんですが、一方で、CORNES HOUSEやMIYASHITA PARK、渋谷PARCOのように、研ぎ澄まして行くようなものとはまた別のよい意味でほどけた、取り付き易い価値観も並列してあって、そういったところに奥行きを感じます。そういう考え方がいくつもあるのは素晴らしいし、個々の多様性が発揮できる組織っていうのは価値があると思います。   本日はどうもありがとうございました。Entô 形式でいくつもの機能をいっぺんに解く原田 制約条件がとても厳しかったです。人口2300人の島なんですが、ユネスコの世界遺産に登録されたから、インバウンド対応として富裕層をもてなせるようなホテルをつくろうということで始まりました。島に建設会社が無いので、どれだけ現地の作業量を少なくできるかを考えてCLTにしました。かなり細密な加工ができるので、サッシとか設備とかそういうのも全部済ませて、組み立てたら構造と断熱と仕上げが終わるんですよね。海沿いということと、ホテルなので遮音性を考え、無垢の壁の利点もありました。短手の断面を見ると、客室と中廊下を分ける壁、部屋間を分ける壁、それに3層積まれたスラブによって、H形鋼を積み重ねたみたいな感じの構造になるので、大開口がとれるんです。都市型のホテルは間口が狭くて奥行きが深いから外がすごく遠くなるし、空間に対しての外部環境支配率が小さくなるので、逆に間口を最大にして奥行きを薄くすることで、外に寝てるみたい

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る