ハレミライ千日前写真:エスエス大阪ハレミライ千日前 広場写真:エスエス大阪空間として、何かしたくなるような仕掛けが鍵となりそうです。商店街の特性がもつ共同体を起点に今後ますます賑わいが創出されてくるといいなと思いました。様々なスケールのイベントホールを内蔵した多機能な建築と商店街の組み合わせは、このエリアに新たな環境を生むように思います。ハレの日としてオシャレしてきている人だったり、普段着の人たちがいたりと、日常の中にハレの日が重ね合わさる多様な様相を生む面白さがあると感じました。「文化こそ社会の核」だと思うんですが、文化をどのように時間をかけ醸成していくかは難問だと思うんですよ。でも、ここは文化を発信するホールが商店街というヒューマンスケールな街の中にあることが端緒となり、文化を生み出していく可能性を多分に持っていると思います。地方では敷地が広い場所にこのような建築が建てられ、駐車場がその周りを取り巻く形式が多い気がします。その点では敷地があまり広くなかったことが功を奏しているんじゃないかと思いました。大きな建築ではあるけれど商店街の一部のような近接性が感じられとても人に近い新鮮な印象を受けました。竹中工務店岡山営業所については、自らの敷地を公に提供して、普通の人が入れる緩やかな境界をつくっているところに好感を持ちました。街に提供している歩行空間は少し幅が広いのですが、中央に植栽エリアを取り入れていることで人はその内側や外側を通りたくなるデザインに仕立てられていて良かったです。さらに、植栽帯も立ち上がりをつくらず地面とフラットにつくられていることでより自由な広がりを与えているように感じました。欲を言えば、そこに腰掛けたくなるようなものがデザインされていると、さらにいい余剰空間になると思いました。また、竹中工務店岡山営業所写真:ナカサ&パートナーズデジタルファブリケーションを駆使して製作された外壁のルーバーは、その取り付け金物ひとつひとつの形状が違い、設計者自身もすべてを把握できていないけれど組み上げると綺麗に納まったという、新たな設計手法として興味深かったです。内部は天井を張らないスケルトンなので全て配管が露出され、均質的なオフィス空間の持つ堅苦しさを感じさせない大らかさと、上品さを持ち合わせた空間になっているのが印象的でした。こういったデザインは適当にやったら絶対こうはならないので、緻密なバランス感覚で検討し設計しつくされてるのだろうなと思いました。外部のゆるい境界の余剰地は内部空間にまで一般の人を招きいれてしまうお話を伺い、デザインが公的なふるまいを人に促していることが素晴らしいですね。商店街とまちづくり前田 福山の街路樹は、紅葉になる前の時期に強剪定をするんですね。紅葉の時期には見るも無残な姿になっており、何のために街路樹を植えているのか未だに憤りを感じています。福山で「とおり町Street garden」というアーケード改修のプロジェクトの際に行政にヒアリングしたら、落ち葉が路上に散らかっていると住民から苦情の電話が入るそうです。行政が苦情に対して樹木を切る暴挙は理解に苦しむのですが、根本的な問題は市民側に大きくあると思うんですよね。落ち葉になったら自分で掃除したらいいし、それが風情だと感じられる人は季節を楽しめばいいと思うんですけど、落ち葉が家の前や敷地内に入ってきたら、その原因を糾弾するという、ますます利己主義的な感じの世の中になっていることを残念に感じます。前田圭介氏に聞く「建築」で地方都市を変える−人びとのつながりやコミュニティの場を再構築する本号は、地方都市において人の集まる場づくり「ハレミライ千日前」「竹中工務店岡山営業所(TAKENAKA DESIGN WORKS 55号掲載)」を建築家の役割についてお話を伺いました。 視察いただいた感想をお聞かせください。前田ハレミライ千日前は、巨大な建築だと来る前から感じていましたが、周辺の街並みに合わせた低層部と、高層棟がシンボルになる構成で設計され、実際訪れてみると圧迫感みたいなものはあまりなく、路地的な雰囲気を感じられたのが興味深く印象的でした。もともと千日前商店街があった場所で、それが廃れてきた場所にあえてホールがつくられたということを伺いました。低層で面的に広がる商店街に対して、スケールの大きな建築を配置すると、そこで完結してしまいがちとなり、街を散策する歓びや商店街の連帯性のようなものが失われやすいと思います。しかし、通りに面したがらんどうの空間に、もともとあった過去からの路地的なスペースをトレースして接続しているので、散歩している人や、裏通りから自転車で通り抜けする人など、いままで持っていた街の特性を上手く取り入れていると感じました。さらに、この広場的なスペースは様々なイベントを開催することによって市民に使われていることも伺えました。一方で、そのようなハレの日だけではなくて日常的に使うにはどうしたらいいのだろうかということも考えさせられます。通過交通だけになってしまわないような、アクティビティ溢れる滞留02に取り組んだプロジェクトを特集しています。出身地広島県福山市を中心に活躍されている前田圭介氏(近畿大学工学部教授・建築家)に視察いただき、地方都市における建築の役割、InterviewInterview
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