写真:SALHAUS写真:ナカサ&パートナーズ金沢美術工芸大学立命館大学 大阪いばらきキャンパス H棟では卒論やゼミ形式の指導が行われるなど、高等学校の学びや空間が、大学に近づいてきているように思われます。先日、立命館の高等学校も拝見したのですが、探究学習にかなり時間と人的なリソースが投入されていることに驚きました。背景には立命館大学への推薦による進学があると思います。一方で、高校生にとっては生活の延長線上にある「居場所」は必要です。大学生ならキャンパスのカフェや図書館のような場所を転々としていても何とか過せますが、高校生だともう少しホームとなる場所が必要では、と感じています。部活にものすごく打ち込むとか、仲間と濃密にコミュニケーションがとれる場所、そういう居場所が重要と感じています。 コロナ禍を機にICTを活用した遠隔教育が一気に普及し、「学校」「教室」というリアル空間の必要性が、あらためて問われました。日野 先ほど申し上げた通り、これからの学校建築は教室がフレキシブルに使用されるようになることで、居場所が分散・流動化していくようなイメージがあります。しかし小学校から高等学校までは、やはり学級への帰属意識も重要だという意見もあります。それに対応して生徒児童の拠り所になるホームルーム的な場所がどうあるべきか、というテーマはこのリアルな空間の必要性と関係が深いと思います。コロナやICT化は改めてそのことに気づかせてくれたと言うこともできると思います。私たち建築家はリアルな空間を扱う職能ですし、これまで山本理顕氏や小嶋一浩氏たちがの人達が入れるところもあれば、そこに居づら成立しているよい事例で、自分自身にとってもICTも活用した多様な探求に対応できる学び決まった時間に集合し、少しレクチャーを聞いアドレスがすでに一つの働き方として普及してないという話をよく聞きます。広さについてはオープンスペースを活用しながら対応しているわらなければならないと思われます。今の教室04意味で、今日拝見したキャンパスは、一つの到達点だと思いました。多数の人が使う空間でありながら、個人の逃げ場もつくる。一般い人達の逃げ場もある。そういう事がかなり大変参考になりました。空間を開くこと、閉じること 教える場としての一般教室だけでなく、の場が求められています。日野 北欧などの最新事例では、従来の教室が完全に撤廃されている学校もあります。オープンスペースにいろんな場所が用意されていて、出題された課題をグループワークで取り組んでいる子もいれば1人でやっている子もいる。思い思いに散らばって学習して、てまた散り散りになる、みたいな自由な授業形態です。大人のためのオフィスではフリーいますが、子供のための学校でもより自由な学び方が実現しているのは非常に面白いと思います。またICT対応では、教室の広さと壁面が足り学校もあると思いますが、壁面が足りないとなるとオープン化だけではなく教室自体も変は個人の荷物を置くために、教室内に収納スペース・ロッカーが設けられていることがInterviewよくあります。壁面を確保したり、新しい授業形態に対応するためにより高いフレキシビリティが求められたりすると、生徒個人の荷物を教室の中に確保する余裕はなく、教室外にロッカールームが必要になります。大学の講義室のようなイメージです。せっかくロッカールームを外につくるなら、そこをどうやって魅力的な居場所にするか、ということも今後のテーマだと思います。そしてフレキシブルな教室の次の段階として、特別なキャラクターに色づけされた教室をどれだけ選択肢として用意できるか、という議論が必要だと思います。新しい学習形態を空間側から誘発するような教室とは、どのようなものか。今回、立命館で拝見した階段状のグループワーク教室というアイデアなどは、その実証実験としてとても興味深いと感じています。 高等学校に関しては、基礎学力をつける従来的な教育をベースに、主体的な探求型の学びの場が求められています。日野 高校生の基礎学力すなわち大学受験に合格する為の能力は、疎かにできません。けれども今はもう、四割ぐらいが推薦で大学入学していて、現実として受験勉強から解放されつつあると言うことができます。だから高等学校でも探究学習が積極的に進められるようになってきましたし、そのまま大学で継続的に研究を進めるケースもあると思います。今までの画一的な高等学校の学びが少し変わり始めていて、いわゆるアクティブラーニングやラーニングコモンズといった考え方が高等学校にも導入されようとしています。先進校
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