写真:酒井広司(動画よりキャプチャー)写真:小篠隆生写真:小篠隆生04Interviewせんとぴゅあ 全景芝生広場での写真甲子園せんとぴゅあⅡ 芝生広場に面したペリメーター部くるとか、人が入れ替わってくるとか、そういったことが起こり得るので、それに対して建築が対応できないと使われなくなってしまいます。社会全体が成長する時代ではそこで、建築を建て直すということが行われてきたわけですが、これからは必ずしもそうではない。地域の価値をどのように定め、建築がその価値を支える資源となるように改修、再利用するということのプログラムを説明できないといけないと思います。 市民や住民の人にとって行きたいなと思う場所とか、そこに居たいなって思う場所をつくるうえで、お考えがあれば伺いたいです。小篠「せんとぴゅあ」増築部の図書機能は、蔵書7万5千冊で、パッと見ると図書館に見えますが、公立図書館としては位置付けていません。当然、図書館としてのサービスは全てできますが、施設としては図書機能だけで閉じているわけではないので、利用者の利用の仕方の自由度が図書館というステレオタイプと比較すると高くなっています。おしゃべりしていても構わないし、場所を限定しての飲食も自由で、ゲームしても構わない。その中で人気のスペースが、芝生広場に面したガラスカーテンウォール沿いの場所で、芝生広場での活動やイベント、行き交う人が眺められます。自分一人という領域は確保されているのですが、間接的にその活動にも参加しているという感じになれて、そういうことを人がすごく求めてるんじゃないかと思います。建築の内外部を問わず、交流の強度を自分で自由に調整できて居続けることができる場所が、一番魅力的な場所になるのではないかと思います。旧校庭側に行った増築部分には、図書館機能や美術、博物館機能が入り、校庭は芝生広場にしています。東川町は、全国の高校写真部日本一を決める写真甲子園を30年にわたり開催していますが、その際には、主にOBの大学生が企画する写真展を芝生広場で開催しています。一方で「せんとぴゅあ」地域交流センターは、小学校の敷地と都市公園の敷地が一体になったものです。公園に小学校のアクティビティがはみ出したり、水田や畑、果樹園では、環境教育や食育をしています。全体で約20ヘクタールにもなる敷地を計画するという話になった時に、図面を描いている場合じゃないと思いました。まずそこを使うプログラムを考えて、それを運営してくれる人たちをまとめ上げるっていう作業をしないと、とてもじゃないけど図面は描けないと思って、学校教育と社会教育を連動させる学社連携推進協議会を立ち上げることをさまざまな方にヒアリングして1年かけて報告書にまとめ、いろいろな方達に参加してもらいながらチームをつくって協働しました。 設計者の役割を超えていますね。仕事の可能性が限定されてきます。そうであってから文部科学省の国立教育政策研究所の検討委員会の委員になり、そこで東川の事例を報告したら、学校の地域での運営プログラムの検討から施設計画、設計、再利用の検討など長年を通じて関わることを職能として位置づける必要があるのではないかという議論が出ました。検討委員会のテーマは、老朽化した校舎の活用です。廃校や統廃合で余った校舎の転用は、幅広く地域のをつくる4年前に移転竣工した東川小学校・小篠設計業務を請負っていると考えているとはいけないと僕は思い続けています。2024年情報がわかって考えられる人がいないとできません。考えていくプロセスは単純ではなくて、地域で事情も違うので、長く地域に入り込まないとそれらのことが理解できないし、改修したとしても運営まで関与しないと計画通りに改修後の運営を実現していくことができません。それをやる職能をつくっていく必要がありますし、少なくとも、建築を計画し、設計してつくり、その後どうしていくのかを考えられる職能が必要だという話をしています。所属する会社がダブルアポイントメントを認めるかどうかも重要だと思いますが、先ほどご紹介したイタリアの場合は、最初学生だったメンバーが大学の先生や弁護士になったり、社会福祉系の仕事をし始めたりして、いろいろな職業の人たちが組んで社会的協同組合という組織体で活動をしています。地区の家の企画とか運営を仕事としてやることができて、本業をしながら運営に関わる人が何人もいるという状態です。日本でも、今後人口減少がさらに進む地方都市では行政サービスを地域が支えていくことが必要になっていくことは十分にあり得る話で、イタリアに限った話ではありません。 建築が市民と住民を結びつけるということを考えたときに、設計者の役割はどういうところにあるとお考えでしょうか。小篠 プロジェクトに参加する市民、行政、企業などに「彼らが説明しにくい、イメージしづらいことを説明し、共有できる価値を構築する」というのが設計者の役割だと思っています。ワークショップをしたり、模型でプレゼンテーションをしても、建築のイメージをフルに伝えることは不可能ですし、それであるイメージをつくったとしても、何年か経ってやりたいことが変わって
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