自然共生(生物多様性)
目次
Ⅰ.自然共生社会の実現に向けて
「自然との共生」は、世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」やわが国の「生物多様性国家戦略2023-2030」において、最上位の「2050 年ビジョン」に位置づけられています。
その達成に向けた短期目標(2030 年ミッション)として、「生物多様性の保全と回復(ネイチャーポジティブ)」が定められました。豊かな生物多様性を保全し、その恵みを将来にわたって享受できる自然と共生する社会を実現することは、持続可能な社会を実現する上でも、私たちのビジネスを持続可能にする上でも、とても重要な社会課題となっています。竹中工務店は、生物多様性の保全及び回復に関わる深い知見と課題解決力を活かし、自然の恩恵を将来にわたって享受できる自然共生社会を実現していきます。
Ⅱ.生物多様性活動指針
竹中工務店は、2021年に発行した環境コンセプトブックにおいて、2050年に目指す社会の姿を実現する長期ロードマップの視点の一つに自然共生社会の実現を掲げるとともに、2050年からのバックキャスティングを行い、2030年の目標を設定しています。
これらの目標の達成のためには、新たな社会システムや技術革新が必要になることも想定しています。
当社が設定するロードマップでは自然共生社会の実現を達成するための重要な技術的アプローチとして、グリーンインフラに重点を置いており、その取り組みについては、次章以降でご紹介します。
当社は、生物多様性に関わる具体的活動を展開するため、2012年に「生物多様性活動指針」を定め、さまざまな取り組みを開始しました。
- 1.( 認識と共有) 事業と生物多様性の関わりを認識し、社内で共有する
- 2. (環境マネジメント) 生物多様性を環境マネジメント上の重要な課題と位置づけ、確実に実施する
- 3. (研究開発) 生物多様性に関わる知見を集積し、関連する研究・技術開発を推進する
- 4. (建設活動) 企画・設計においては、生物多様性に配慮した計画を積極的に提案する 資材やサービスの調達においては、協力会社とともに生物多様性の保全を推進する 施工においては、施工計画の段階から生物多様性への影響を回避、低減する
- 5.( 自社施設)自社施設において生物多様性に配慮した土地利用と運用・管理を推進する
- 6.(教育・啓発) 当社及びグループ会社の役員・従業員、協力会社に対し、生物多様性に関する教育啓発を推進する
- 7. (連携・協働) 生物多様性を推進するステ-クホルダーと連携・協働する
1. グリーンインフラコンセプトブック
当社は2021年に「グリーンインフラコンセプトブック」を発行し、複雑で多様な課題に対応し、多目的な解決力がある当社独自のグリーンインフラのソリューションの展開を進めています。
2. 生物多様性への配慮
生物多様性がもたらす恵み(生態系サービス)は持続可能 な経済・社会の基盤となる自然資本のひとつです。 当社は人と自然が融合する自然共生社会の実現に向け、生物多様 性向上をめざし、自然が持つ多様な機能を多目的に活かす グリーンインフラを導入したまちづくりを推進します。
(環境) 自然と共生し環境負荷の小さなまち
(経済)都市の魅力が高く人財を惹きつけるまち
(社会)誰もが暮らしやすく社会参加できるまち
(防災・減災)災害に強く安全・安心なまち
(健康)心身の健康と安寧が得られるまち
Ⅲ.竹中技術研究所「調の森 SHI-RA-BE®」での取り組み
1. 調の森 SHI-RA-BE®について
調の森SHI-RA-BE®は、千葉県印西市の竹中技術研究所に整備された生物多様性保全及びグリーンインフラの研究・実証フィールドです。
このフィールドが立地する千葉県北総地域の原風景である、野馬土手に代表される土盛りがつくり出す景観、イヌシデが優占する雑木林景観、脈々と受け継がれてきた草地景観など、今も残るこの地域らしい景観を参照し、場づくりに活かしています。
地域の自然景観を参照して生態系の原理に基づき注意深く緑地計画を行うことで、自然の力を賢く引き出す多機能な緑地として創生し、都市のレジリエンスやQOLの向上、生物多様性の回復などに寄与する多目的な課題解決力の向上に活用しています。
2. 自然共生サイト認定及びSITES認証を取得
竹中工務店は、環境省が発足させた「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しており、2023年に調の森SHI-RA-BE®で自然共生サイト認定を取得しています。
自然共生サイトは、「民間等の取組によって生物多様性の保全が図られている区域」を環境省が認定する制度で、 2030年までに国土の30%を保全する目標である「30by30」を達成するために令和5年度から始まった取り組みです。
また、調の森SHI-RA-BE®で米国発で世界的な屋外環境の認証制度であるSITES(The Sustainable SITES Initiative)でゴールド認証を取得しました。 SITESはLEEDと同様に米国の認証機関Green Business Certification Inc.(GBCI)が運用する屋外環境に特化した認証制度で、グリーンインフラを実装する際の定量的指針であり、生物多様性を含めた屋外環境のサステナビリティを包括的に評価するものです。
当社は、これらの認証取得の知見を展開することで生物多様性保全に貢献していきます。
3. 調の森 SHI-RA-BE®に適用されている技術
1.レインスケープ 「都市型水害リスクを低減し、雨水を有効活用する植栽空間」
レインスケープⓇは、平時は魅力的な景観として生物多様性保全に寄与し、豪⾬時は⾬⽔の貯留・浸透・流出ピークカットを⾏います。
併せて⾬⽔の有効利用や地下水涵養も図ります。近年頻発する豪雨水害に対し個々の敷地で雨水を貯留・浸透させる分散型流域対策技術であり、自然を活かした解決策であるグリーンインフラの構成要素として、健全な水循環系の回復とみどり豊かな地域社会づくりに寄与します。調の森SHI-RA-BE®のレインスケープでは、隣接する生態池に調整容量を与えたり、地形や仕様を工夫し貯留・浸透量を増やします。2019年10月の24時間で248mmの降水を記録した豪雨時には、集水域の総降水量の約43%に相当する236m3をレインスケープ部分のみで貯留浸透し、下水道への流出負荷を削減しました。
2.都市鳥類に配慮した緑地計画支援技術 「生物多様性の保全に貢献する緑地計画技術」
都市の生物多様性の指標とされる鳥類に着目し、様々な 都市緑地の鳥類相データを基に、独自の鳥類の生息モデルや選好する樹種等のデータベースを構築しました。
調の森SHI-RA-BE®では、地域の生態系調査や許容緑地条件等と、各種の生息モデルを照し合せ誘致可能な目標種を決定し、それらが選好する実を付ける樹種を植樹したり、水浴びに適した水深の小川を設けたりし野鳥が生息しやすい緑地を創出しています。またGIS上で鳥の多様性を評価したポテシャルマップ等を活用し、都市スケールの緑地計画も提案しています。
3.半自然草地の再生技術
かつて私たちの身近に存在した草地は、1960年代以降の土地利用の変化に伴い、著しく減少しています。その結果、秋の七草として親しまれたキキョウやオミナエシなどの草原に特有の植物の多くが絶滅の危機に瀕しています。また、そこに生息する草原性の蝶類、鳥類、哺乳類の多くも希少種に指定されています。
このように在来種の草本類からなる半自然草地の再生は生物多様性保全の観点からも重要な社会課題となっています。半自然草地の再生は、生物多様性の保全と地域に根差した美しく魅力的な里山景観の創出に寄与し、失われつつある生態系の保全を通じて良好なコミュニティを醸成します。
調の森SHI-RA-BE®では、近隣の自然度の高い半自然草地景観を参照しつつ、大学、市民、行政と協働して、半自然草地の再生技術の研究に取り組んでいます。
4.希少な水草の生息域外保全
水草には、多様で複雑な水中環境を作り出し、トンボなどの水生昆虫をはじめとしたさまざまな生きものの住み処となるだけでなく、底泥の巻き上げ防止にも機能し、豊かな水辺環境を創り出す役割があります。
しかし、湖沼の干拓や湖岸堤の建設、水質汚濁、水田の管理密度低下などにより、日本に分布する水草は、その40%が絶滅に瀕しているとされています。とりわけ沈水植物は水中を透過した光を利用して光合成し、水中の栄養塩や多様な物質を吸収して生育するため、その生育可能性は水質の影響を強く受け、絶滅危惧種が多い分類群です。印旛沼流域に位置する調の森SHI-RA-BE®では、かつて印旛沼に生息し今は絶滅危惧となっている、ガシャモク、オニバス等の希少な土着の水草を湖底の埋土種子から復活させ、清浄な水質の下で維持・保全しています。
地域の遺伝情報を保持したその土地に土着の水草(水生植物)を維持・保全し、希少な生態系の保全、および地域の豊かな水環境保全に貢献します。
5.トンボ類のハビタット創出
水草・水質・隣接樹林地を適切に計画・維持することにより陸水域生態系の指標であるトンボ類が生育する生態系を創出します。
6.養蜂
植物の花粉を媒介するミツバチは、農業生産や植物の種の維持にも欠かせない存在です。調の森SHI-RA-BE®では、都市養蜂の地域の生態系へ貢献する側面だけでなく、環境教育やコミュニケーションツールとしての側面にも注目し、養蜂を通じた自然共生社会の実現を目指します。
7.都市農業の生態系サービス評価
食糧の生産・供給の機能だけでなく、都市農業がもたらす多様な便益が現代の都市の様々な社会課題を解は決する手段になりうるとして都市農業が注目されています。
調の森 SHI-RA-BEでは、近隣の有機農家の協力を得て、有機菜園に関する知見を蓄積するとともに、野菜の有機栽培やブドウ栽培等を実践することにより、従業員の健康を促すような野菜の栽培・収穫や収穫野菜の食堂での提供などを行い、健康増進やコミュニティ醸成効果の検証を行うなど、都市農業の多面的機能の実証を行っています。
8.IPM
調の森SHI-RA-BE®では、維持管理において農薬や化学肥料などの化学物質を極力使用しない IPM (総合的病害虫管理)を実践しています。自然の管理は計画通りに進まないことを前提に、モニタリングに基づいた順応的管理とIPMに基づく緑地管理を行い、周辺の地域生態系と調和し人と自然との共生を実現する環境を創生するために、安易な薬剤使用は行わない維持管理を行っています。
9.健康遊歩道
日健康に寄与する歩幅の基準値に基づいたペイントにより、従業員の健康増進に資する遊歩道の実証を行っています。
10.ソトワーク指数
当社では、屋外スペース利用を促進する一連のプロセスを「ソトコミ」と呼んでいます。
・環境条件の把握
・快適な屋外環境の創出
・屋外への誘導
の3つのプロセスを繰りかえすことにより屋外スペース利用へ人々を効果的に誘導します。今回開発したソトワーク指数は、ソトコミを支える技術です。
ソトワーク指数は、風速・日射量・気温などに応じて屋外スペースの快適度を算出し、「ソトワーク指数」段階表示で分かりやすく数値化することで、屋内にいながら屋外の快適性が分かるシステムを開発して、屋外スペースへの誘導効果の検証などを行っています。
Ⅳ.竹中研修所「清和台の森」での取り組み
1. 竹中グループが生物多様性保全に取り組む理由
現在、世界人口の過半が都市に集中していますが、その都市は生物多様性がもたらす恵沢(生態系サービス)に依存して成立しています。そして世界で加速する生物多様性の劣化の原因の多くが都市の社会経済活動にあると考えられています。
2015年に国連サミットで全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)達成のためには、17の目標のうち社会・経済側面の目標の基盤となる自然資本の目標、つまり生物多様性を保全することが世界共通の課題となっています。
当社グループは、成長戦略に掲げる「まちづくり総合エンジニアリング企業」として、これまで「生物多様性活動指針」を具現化する「竹中生物多様性促進プログラム」を推進してきました。このプログラムを通して、生物多様性保全を含む社会課題の解決力を高め、持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。
兵庫県川西市にある竹中研修所内の「清和台の森」をフィールドにした、SDGsを支える自然資本への当社の取り組み「清和台の森づくり」活動を紹介します。
2. SDGsの実現に貢献する「清和台の森づくり活動」 ~生物多様性の保全と向上へ向けた人づくり~
竹中グループでは業界に先駆けて環境への取り組みを進めてきました。
当社の取り組みは、1971年に「設計に緑を」を標語に掲げたことから始まり、1992年に地球環境憲章、2009年に環境方針、2010年に環境メッセージ「人と自然をつなぐ」、2012年には「生物多様性活動指針」を制定しています。
そして、2017年には環境方針や生物多様性活動指針を具現化する竹中生物多様性促進プログラムのひとつとして「清和台の森づくり」プロジェクトを立ち上げました。
「清和台の森づくり」は、生態系・生物多様性保全のモデルをつくり、実践する活動で、
- 1.従業員主導による整備・保全活動
- 2.体験型研修
- 3.研究開発・環境技術発信
- 4.ステークホルダーとの連携・協働
という4つの活動を行っています。
3. 森づくり活動の開始にあたって
これらの活動を進めるにあたり、外部専門家として「兵庫県立人と自然の博物館」の協力を得て、「清和台の森」を日の光の入らない常緑樹林から、落葉樹を中心とした明るく生物多様性の高い里山林への転換を図っています。 活動の開始にあたっては、まず、森づくり活動の拠点となる「フィールドセンター」や「自然観察路」の整備を行いました。 2018年からは、②体験型研修を本格的に始動させ里山の保全・利用の実例に学ぶ活動も開始しています。
4. 従業員のマインドセットを変える「清和台の森づくり研修」
「清和台の森」が位置する北摂地域には、「日本一の里山」といわれる黒川地区があります。里山のクヌギを使って生産される炭は、500年以上前から「菊炭」や「池田炭」と呼ばれ、茶の湯に使う高級炭として重宝されてきました。黒川地区周辺には、菊炭の原木であるクヌギを10年周期で輪伐することで様々な樹齢の林がモザイク状に分布する独特の景観や、アカマツ、コナラなどからなる里山林の景観が今も見られます。
この「日本一の里山」から学び、竹中研修所「清和台の森」をつくる「森づくり研修」は、単に緑地管理技術を学ぶものではなく、「初級研修」「中級研修」のステップを通じて、社会や地域に貢献できるスキルを発掘し磨くためのプログラムであり、竹中グループ従業員が一体となって、広く社会課題を解決できる次世代リーダーの育成を目的としています。
「初級研修」
初級研修は、黒川地区の見学から始まります。里山から伐り出したクヌギを炭焼きにする窯を見学し、茶道に用いられる貴重な「菊炭」づくりについて、炭焼き農家の今西さんからお話を伺います。里山からその恵みを受けるためには、人間がいかに長い年月にわたって里山を手入れし続けることが重要かを実感します。
また、近傍の妙見山で活動している市民団体「川西里山クラブ」や能勢電鉄(株)の活動フィールドを訪問し、川西市の天然記念物エドヒガン群生地の保全・再生活動などを見学します。翌日の座学では、生物多様性を守るための里山管理の重要性と「清和台の森」の価値について学び、野外実習では、「清和台の森」において、森の中での植物観察を行う他、方形区画を設定して植生調査を行います。
「中級研修」
中級研修では、専門家から生物多様性を高めるために、光を遮る常緑広葉樹を伐るなどして林内に光を入れ、多様な植物の生長を促す必要があることを学び、その後実際に初級研修で調査したエリアの常緑広葉樹を伐採します。約4時間の作業時間で見違えるほど見通しが良く明るい林になります。
最後に、初級・中級あわせて4日間の研修を振返り、自分が考えるサステナビリティとは何か、清和台の森を今後どう活かしていくかなどをテーマにワークショップを行い、社会課題の解決につながる幅広いアイデアを出し合い、ここで出された多くのアイデアを具体的な施策へと展開する検討を進めています。
「上級研修」
2018年から稼働した初級・中級研修の修了生を対象に、2021年より、生物多様性に関わる社会課題を解決できる次世代のリーダーを育成することを目指しています。
ワークショップを主体に、生物多様性の保全・向上を図る上で、実際に具現化できるソリューションを様々な角度から検討します。
2022年12月のCOP15(第15回生物多様性条約締約国会議)により、生物多様性への取り組みが大きくクローズアップされ、世界的な潮流となることが予想されるなか、この研修の成果が大いに期待されています。
5. 「森づくり」から「人づくりへ」
今後は、「活動② 体験型研修」を継続しながら、「活動④ ステークホルダーとの連携・協働」を強化しながら、「活動①竹中グループ従業員主導による整備・保全活動」を行い、「活動③ 研究開発・環境技術 発信」へとつなげていきます。そして、「清和台の森づくり」を通じて得た知見を、他の地域での建築作品やまちづくりへと生かし、展開していきます。
現在、清和台の森の保全・整備・活用に向けたゾーニングを行い、今後20年間の森づくりのシナリオを作っています。とくに、広大なグラウンドでは、原寸大の緑地モデルや苗木を育てる苗圃をつくるなど、人が集い、気づきを得る新たな学びの場として機能するフィールドとして活用し、部門や組織を超えたコミュニケーションから、新たなビジネスモデルが生まれることも期待しています。
都市を支える社会・経済の基盤は自然資本です。自然資本を支える生物多様性の保全を自分事化し、仲間を増やし、楽しみながら、ゆっくりと、しかし着実に、地域の課題解決やまちづくりといった複雑かつ多目的で統合的なミッションに立ち向かい、新たな時代を担う力を養う「人づくり」活動をこれからも継続していきます。
Ⅴ.プロジェクトでの生物多様性への取り組み
当社が関わるプロジェクトを通じて自然が持つ多様な機能を活かした最適な土地利用を促進するため、生物多様性に着目し、地域の植生や土地利用の歴史への配慮、生態系ネットワークの創出、関係者参画による計画・設計から竣工後の維持管理・運営までの一貫した取り組みなどの活動について、適用実績を蓄積しています。
サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場
見学に訪れた人が水源涵養林保全・育成の活動を体感できる場所づくりを行っています。
お客様・専門家とチームを組み、ドローン測量や現地踏査により現況の植生・地形などを把握し、来訪者が敷地を巡る園路の最適な位置を決定しました。園路沿いや水景に、敷地内にあるかつて川が運んだ巨石を配し、景観づくりに役立てています。
林相転換や老朽化した危険木除去に伴う伐採木を建材・家具・マルチング材へ活用しさらに造成の影響を受ける林地から実生苗の採取・再移植に加え新植範囲に地域性種苗を導入し、地域の自然景観資源を活かした計画としています。
WITH HARAJUKU
WITH HARAJUKUは創建100年を迎えた明治神宮・原宿駅前と竹下通りを結ぶ敷地に店舗・コワークキング・ホール・集合住宅などが入る複合商業施設です。 東西で8mの高低差がある敷地に対し,建築の中央に「パサージュ」と呼ぶ半屋外の街路空間を設け、東側の竹下通りまで通り抜けができる新たな街路空間を設けています。 このパサージュに沿って、江戸時代の丘「源氏山」を再生した緑に包まれたテラスを階段状に設け、原宿の街並みを見渡す豊かな環境を街に向かって開放し、外装には明治神宮の歴史に呼応する肉厚な木をまとい、時の推移とともに深みを帯びた表情を街に現しています。
アクロス福岡
1995年、福岡市の中心・天神地区の旧県庁跡地に誕生した「アクロス福岡」。
「国際・文化・情報の交流拠点」をコンセプトとした公民複合施設です。
このビルの最大の特徴は、「ステップガーデン」と呼ばれる階段状の屋上緑化で、頂上には福岡市内を見渡せる庭園があります。竣工から26年補植などを行いながら、丁寧に育まれてきたステップガーデンには、野鳥が運んできた種によって自生した樹木など、年月の経過とともに樹種は増え、新たな生態系を生み出しました。
自然の山のように、豊かな緑が溢れるその姿は、地元の人たちから「アクロス山」と呼ばれ、隣接する天神中央公園と一体となって憩いのスペースを創出しています。また、ステップガーデンによるヒートアアイランドの緩和効果が実証され、地球温暖化の抑制にも貢献しています。