サプライチェーン

Ⅰ.竹中工務店のCSR調達

竹中工務店は、調達方針と活動指針および「取引先活動ガイドライン」に基づき、品質・価格・納期・安全に加え、環境・人権・労働など、従業員とすべての取引先(協力会社など)が一体となってCSR調達を推進し、持続可能な建設サプライチェーンの構築を進めています。

1. 調達方針

当社は、取引先と一体となってCSR調達を展開するための調達方針を制定し、すべての調達活動の原点としています。

2. 活動指針

当社は、調達方針に基づく調達活動を推進する上で、基軸となる9項目の活動指針を制定しています。

3. 取引先活動ガイドライン

当社は、取引先と一体となって調達方針を展開するため、活動指針の具体的な活動内容を「取引先活動ガイドライン」にまとめ、サプライチェーン全体で共有することでCSR調達の浸透を図っています。

4. 環境配慮活動

当社の環境コンセプトを通じて脱炭素社会・資源循環社会・自然共生社会を実現するために、サプライチェーン全体で環境配慮活動を積極的に展開しています。

5. 人権方針

当社は、基本的な人権と労働基準を尊重し、相互の理解と尊重に努め、健やかで働きがいのある環境を実現するために「人権方針」を掲げ、調達活動の前提としています。

6. 人権尊重活動

当社は、人権方針を実現するため、建設現場やサプライチェーンにおける人権リスクに着眼し、取引先と一体となって人権尊重活動を展開しています。

人権デューディリジェンス

2018年に外部有識者を交えて「人権デューディリジェンス」を実施し、人権尊重に関して5つの人権リスクを特定・評価しました。そのうち、調達分野では「海外調達先工場の労働者(児童労働・地域住民への影響など)」及び「国内で就労する外国人労働者(技能実習生・特定技能など)」の2つの人権リスクを特定しました。

外部有識者によるレクチャー
外部有識者によるレクチャー
関係部門によるワークショップ ①
関係部門によるワークショップ ①
関係部門によるワークショップ ②
関係部門によるワークショップ ②
人権デューディリジェンスで特定された
「5つの人権リスク」
人権デューディリジェンスで特定された 「5つの人権リスク」

具体的取り組み事例:協力会社と協業した外国人労働者の人権尊重確認

外国人労働者の人権尊重状況の実態を把握すべく、2019年に技能実習生を直接雇用している当社グループ会社を訪問しました。同社の管理部と国内の受入機関(監理団体)立ち会いのもと、技能実習生と対話をする機会を設け、処遇の確認や社員寮の完備状況など実態調査を行いました。
また、2021年には、技能実習の適切な実施及び保護を所管する外国人技能実習機構(OTIT)や、特定技能の適正就労監理機関である国際建設技能振興機構(FITS)の助言を受けながら、当社協力会社で組織する竹和会会員企業で技能実習生・特定技能の資格を有する外国人労働者を直接雇用する会社を訪問しました。労働時間管理や割増賃金の支払状況、年休の取得状況や年休取得日の賃金支払状況、不適切な控除の有無、パスポートの本人保管状況などについて確認を行いました。
さらに、日常のコミュニケーションや生活支援の状況、改善要望に対する会社の対応状況など細部にわたる確認も実施し、竹和会会員企業と、確認活動の範囲を広げています。

技能実習生との対話
技能実習生との対話
当社グループ会社を訪問しヒアリングを行いました
当社グループ会社を訪問しヒアリングを行いました
社員寮の状況
社員寮の状況

今後の取り組み

技能実習生や特定技能の就労資格を有する外国人労働者は、一次会社よりもむしろ二次会社や三次以降の会社で雇用されていることが多いのが実情であることから、竹和会会員企業とともに、傘下の二次会社で外国人労働者を雇用している企業を訪問し、実態調査を行っています。
契約先の一次会社に留まらず、二次会社、三次以降の会社へと活動の範囲を広げることで、人権尊重に対する取り組みと意識の向上をはかる活動を進め、人権問題発生の未然防止に努めていきます。

二次会社を訪問しての実態調査 ①
二次会社を訪問しての実態調査 ①
二次会社を訪問しての実態調査 ②
二次会社を訪問しての実態調査 ②

〔外部有識者のご意見〕~LRQAサステナビリティ(株)冨田秀実氏~

実際に企業を訪問して実態調査を行うなど定期的にレビューを行い、PDCAサイクルを着実に回していこうとする竹中工務店の継続的なアプローチは、建設業界においても模範的取り組みと思われます。
欧州を中心に人権デューディリジェンスの法制化・義務化が進みつつある状況において、日本でも政府によって人権デューディリジェンスのガイドラインが策定され、人権の尊重に関する取り組みが強く求められています。取り組みが進めば進むほど、社会的な仕組みが追いついていない難しさなどにも直面することと思われますが、人権尊重活動に関する先進企業として継続して取り組んでいただきたいと思います。

外部有識者によるレクチャー ①
外部有識者によるレクチャー ①
外部有識者によるレクチャー ②
外部有識者によるレクチャー ②

7. パートナーシップ構築宣言

当社は、内閣府、中小企業庁などによる「パートナーシップ構築宣言」の趣旨に賛同し、サプライチェーン全体における共存共栄と新たな連携による相互の付加価値向上をめざす「パートナーシップ構築宣言」を公表しています。

8. 労務費見積り尊重宣言

当社は、(一社)日本建設業連合会の「労務費見積り尊重宣言」を踏まえ、建設技能者の処遇改善に取り組むとともに、お取引先(協力会社)の技能者の人材確保や育成支援を推進しています。

Ⅱ.お取引先と一体となった調達の推進

当社は、「上下和親し共存共栄を期すべし」との社是を受けた調達方針「お取引先と一体となり社会・お客様のニーズに応える調達を推進する」を掲げています。
この根底には、「わが社と注文者、協力会社との能力を有機的に合体させ、その相乗効果によって生じる強い絆と競争力とによって、真の共存共栄を図るべし」という竹中家第15代当主・竹中錬一の思想があります。
当社は、お取引先と一体となり、相互理解に基づく緊密な協力関係のもとに、これからも多くの「作品」を世に遺していきます。

1. 竹和会

竹和会(ちくわかい)は、竹中工務店の厳しい基準をクリアした主要パートナー企業による最高レベルの施工技術集団です。1941年に結成され、現在では全国7地区、1,200社以上の会員会社で構成されています。

竹和会

Ⅲ.竹中マイスター制度

1. 竹中優良職長制度

当社は、2012年より「竹中優良職長制度」を導入しています。厳しい条件をクリアした建設技能労働者の職長を「グランマイスター」・「シニアマイスター」・「マイスター」・「ジュニアマイスター」に任命し、各地域の作業所でご活躍いただいています。

グランマイスター
グランマイスター
シニアマイスター
シニアマイスター
マイスター
マイスター
ジュニアマイスター
ジュニアマイスター

2. 竹中優良技術者制度

当社は、2017年より協力会社の主任技術者や工事技術者等を対象に「竹中優良技術者制度」を導入しています。認定資格には「シニアマイスターCE*」と「マイスターCE」があります。 *CE:Chief Engineer

シニアマイスターCE
シニアマイスターCE
マイスターCE
マイスターCE

3. 建設技能者の人材(担い手)確保と育成

建設業が引き続き「地域の守り手」として役割を果たすためには、将来の建設業を支える担い手を確保し、育成する必要があります。協力会社の皆様と連携し、建設業の魅力発信を行うと共に、若者や女性等にとっても魅力的な職場環境を整備し、担い手の確保と育成を進めていきます。

建設業の魅力発信

専門工事業で働く魅力を体験してもらい、職業選択の幅を拡げるために、当社は、協力会社組織である竹和会と協業して、高校生向けの「技能体験会」「学校訪問」「インターンシップ」を毎年開催しています。
また、当社独自のパンフレットを制作し採用活動時のPRに使用しています。技能体験会に参加したことがきっかけで竹和会所属会社に入社する高校生も多く、若年層入職のきっかけとなっています。

技能体験会を毎年開催
技能体験会を毎年開催
技能体験会で建設業の魅力を発信
技能体験会で建設業の魅力を発信
パンフレットで建設業の魅力をPR
パンフレットで建設業の魅力をPR

担い手の育成

当社は、当社保有の研修施設「竹中技術実務研修センター 想(おもい)」で技能者に対し、「体験型研修」を継続的に実施しています。技能者のスキルアップ・品質意識の向上を図り、技術と経験に見合った処遇を受けられる素地を醸成することにより、技能者の離職防止にもつながっています。

竹中技術実務研修センター 想
竹中技術実務研修センター 想
RCモックアップを使用した体験型研修
RCモックアップを使用した体験型研修
座学研修
座学研修
最新構工法の実物大モックアップ
最新構工法の実物大モックアップ

4. 建設キャリアアップシステム(CCUS)の推進

「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、技能者の処遇につなげる仕組みで、業界団体と国が連携し官民一体で普及を推進しています。当社では技能労働者のキャリアパスモデル構築や処遇改善にもCCUSを活用しています。

建設キャリアアップシステム(CCUS)の推進
建設キャリアアップシステム(CCUS)の推進
建設キャリアアップシステム(CCUS)の推進

5. 協力会社と連携したBIMの推進

BIM(Building Information Modeling)は、3次元の建物のデジタルモデルに基づき、設計~施工はもちろん、材料メーカー等の製造工程までもシームレスにつなぐことのできる仕組みです。当社は、BIM活用による効果を最大化すべく、協力会社と連携してBIMを推進しています。

協力会社とのBIM用意見交換会の実施

「当社は、協力会社と協議・調整を重ねながらBIM活用の推進を図っております。2023年8月には全国から竹和会を中心としたファブリケーター、作図会社などを招いての鉄骨工事におけるBIM活用意見交換会を開催し、BIM活用を促進するための討議を実施しております。

ファブリケーター、作図会社などを招いてのBIM活用意見交換会
ファブリケーター、作図会社などを招いてのBIM活用意見交換会
ファブリケーター、作図会社などを招いてのBIM活用意見交換会
ファブリケーター、作図会社などを招いてのBIM活用意見交換会

今後の取り組み

建設業では少子高齢化に伴う担い手不足が深刻化しており、労働生産性向上は喫緊の課題となっています。BIM活用の推進を図り、設計・施工から維持管理に至る一連のプロセスのデジタル化を進めることにより、抜本的な労働生産性の向上を実現したいと考えています。
最適なBIM活用手法は一律ではないため、工事種別毎に協力会社と連携して、協議対話を重ねながら最適なBIM活用手法の検討を進めていきたいと考えています。また、業務プロセスをBIMモデルベースに転換し、BIMモデルを中心とした業務スタイルを定着することで、お客様を含むプロジェクト関係者すべてにメリットがある建設プロセスを実現したいと考えています。

BIM推進ビジョン
●今後の取り組み