札幌ドーム

  • 施工
2001 北海道

世界初の浮動する天然芝アリーナ

サッカー世界一を決める2002年の大会の会場となる札幌ドームが完成した。敷地が札幌の市街地と羊が丘の農耕地との境にあるという環境を意識して、都市の一部でありながら自然の一部でもある、親自然的な「スポーツの庭」の実現を目指した。
施設の特徴はまず環境転換システムの「モビールシステム」。野球、サッカー、コンサート、展示会等各種のイベントを最良の条件で開催するため、ホヴァリングステージ、旋回式・開閉式の大型可動席、大型扉のムービングウォール、人工芝転換システム、遮光ブラインド等を連動運転することで大規模な転換を容易に行えるシステムである。
ホヴァリングステージは移動式天然芝サッカーフィールドで、85m×120m、自重約8300トンのフィールドを1.08気圧(大気圧の約8%)で浮上させ、重量を10分の1に軽減して車輪で移動させる世界初のシステムである。
このホヴァリングステージは、屋内と屋外の連接するふたつのアリーナ(デュアルアリーナ)を移動する。屋内のアリーナは観客全員がスタンド全体を見渡せるようにシングルスロープとなっており、屋外のアリーナでは天然芝を自然光のもとで育成する。ドームのトラス屋根はふたつのアリーナの境界部分で切り取られた形となって、ドームに幅90mの大開口を作り、これを跨ぐボウブリッジがドームの力学的均衡をブリッジの自重で保持する構造となっている。
ドームの周囲を巡るコンコースはガラスカーテンウォールで、内側からは周囲の羊が丘の景観を取り込み、外側からは屋根が地盤から離れた浮力を感じさせる。また屋根から外に突き出たガラス張りの展望台には3階のギャラリーから全長80mの空中エスカレータで達し、ここからの眺望は新しい体験を提供、イベントのない日でも訪れる人で賑わっている。
さらに、広いスポーツの庭にはドームを取り巻くように、国内国外のアーティストの作品を集めたアートグローブが点在し、市民の散策路となっている。

設計
原 広司+アトリエ・ファイ建築研究所
アトリエ・ブンク
施工
竹中工務店JV
延床面積
98,281㎡
構造/規模
鉄骨直交格子アーチ構造 、鉄筋コンクリート造、
鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造/地上4階、地下2階
受賞
第44回BCS賞