ポーラ美術館

  • 施工
2002 神奈川

自然と美術の共生

ポーラ美術館は、富士箱根伊豆国立公園の仙石原・小塚山の麓に位置し、樹齢300年を超えるブナの巨木やヒメシャラ群生など、自然の樹木に囲まれた森の中の美術館である。ポーラグループのオーナーであった故鈴木常司氏が、40数年に亘り収集してきた9,500点余にもおよぶ世界に誇る規模のコレクションを展示する。
「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトとして掲げ、本来この土地が保有していた植物生態系を極力損なうことなく、どのように美術館建築が自然環境と共存するかが設計の課題であった。広大な敷地内の動植物や地形、地質、水流の調査を詳細に行い、沢や谷を避けた、最も影響の少ない位置に美術館を配置し、地上部分の高さを8mに抑えて木々の間に隠れるように計画した。また完全免震構造によって建築を円形壕から浮かせることで、人と美術品を地震や高湿度から守り、将来にわたり建物のすべての部位にアクセスすることが可能な永久メンテナンス建築とした。アプローチブリッジからガラス張りのエントランスホールに足を踏み入れると、大きなガラス面を通して左手に小塚山の風景が開け、さらに地下2階まで吹抜けたアトリウムロビーが見渡せ、初めて訪れた人にも一目で美術館全体の構成が把握できるようになっている。
施工的には、建物のほとんどが地盤面より下にあることによる地下工事での66,000m3の膨大な搬出土量と、約30%含有される転石をいかに効率良く搬出するかが大きな課題となった。さらに環境アセスメントに基づく法的規則、諸官庁・近隣の指導事項も重要な条件となった。建物中央の大規模ガラスによって構成されるトップライト、ロビー壁一面のモールドガラスを使った光壁、展示室並びにロビー天井を構成するコンクリート打放しPC板等、非常に高い品質精度を要求される内外装仕上げが採用され、設計段階から施工的検討を行うことによって高い施工品質が確保できた。

設計
日建設計
施工
竹中工務店
延床面積
8,098㎡
構造/規模
鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、免震構造/地上2階、地下3階
受賞
第45回BCS賞