東関東支店ZEB化改修
-竹中工務店のネット・ゼロエネルギービル改修-
究極の環境配慮型建物として注目される「ネット・ゼロエネルギービル(以下ZEB)」。年間を通じて使用する一次エネルギーを自ら賄うという、夢のような建物が現実のものになってきています。
当社ではこれまで、数々の技術を駆使して事務所ビルや競技場などでZEBやそれに近い性能を有する建物(※)を数多く実現してきました。このたび集大成として、当社東関東支店社屋において、執務しながらZEB化を目指した改修を行いました。
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※ | 資源エネルギー庁では、年間の一次エネルギー消費量が一般的な建物の25%未満の建築物を「Nearly ZEB」、50%未満の建築物を「ZEB Ready」と定義し、広い意味でのZEBと位置付けています。 |
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※ | 事例などについては、当社ホームページ「竹中コーポレートレポート」をご覧ください。 竹中コーポレートレポートはこちら |
カギを握る、既存ビルのさらなる省エネ化
2015年に開催された「COP21(国際気候変動枠組条約第21回締約国会議)」では、日本は2030年に2013年比で温室効果ガスの排出量を26%削減するという目標を掲げています。なかでも事業所を含む「業務その他部門」では約40%の削減が必要とされており、目標達成の大きなカギを握っています。
一方、建物が建て替えられるのは数十年に一度ですから、既存建物の省エネ対策がとくに重要です。これらのことから、全国に多数存在する、既存事務所ビルのさらなる省エネが喫緊の課題になっているのです。
ZEB化改修の4つのコンセプト
さらなる省エネを図るうえで、省電力型の機器に交換するだけでは限界があります。新たに開発した省エネ技術はもとより、新しいワークスタイルやエネルギーマネジメントシステムの導入でZEB化を図るほか、災害時に備えるBCPの向上や快適性の向上など、さらなる付加価値を追求しています。
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温度、湿度を一定に保つことだけが快適の条件ではなくなってきています。そよ風を感じる、光が変化するなど、多様な環境の変化が人の快適性の幅を広げ、同時に熱負荷の大幅な削減につながります。
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超高性能断熱、ダブルスキン、ブラインド自動制御、自然通風の自動制御、調光LED、デシカント空調、地中熱利用、放射空調、太陽光発電等の数々の先端技術を導入した上でこれらを統合制御し、プラスエネルギービルを実現します。
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ワークごとに最適な執務環境を整えることで生産性を向上させつつ、シェアリングによって共用空間やファイリング空間を生み出し、事務機器や端末の共有化を図ります。今まで点け放しにしていたコンピュータ、空調、照明を見直し、必要な場所で、必要な時に、必要な分だけ使うメリハリのあるワークスタイルに転換することにより、結果的にエネルギー消費量を削減します。
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以上の対策を行うことで、少ないエネルギーで建物を稼働できるようになり、災害時にライフラインが喪失しても、太陽光発電、蓄電池の活用によりオフィスとしての機能を長く維持できます。
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導入技術
断熱性の高い外装、省エネ設備、エネルギーマネジメントシステムなど様々な技術を導入しています。
- 断熱性の高いガラスを使用したダブルスキン外装
- 室内に取り込む空気の除湿を行うことで、温度をそれほど下げなくても快適な環境を提供する空調システム(※)
- 創られるエネルギーと消費するエネルギーを、統合的かつリアルタイムにコントロールするクラウドシステム(※)
既存建物の改修工事でNET-ZEBを達成
当社の東関東支店として使用しているオフィスビル(2003年竣工)において、執務を続けながらネット・ゼロエネルギービルディング(ZEB)を目指した改修を行い、2016年5月から本格運用を開始し、2017年4月で1年を経過しました。その結果、建物全体の年間エネルギー収支は、創エネルギー量がエネルギー消費量を上回り、プラスエネルギーを達成しました。
今回の当社の東関東支店での取組みは、実際に使用しているオフィスで、執務を続けながら改修し、ZEB化を達成した国内初の事例となります。本格的な外装の高断熱化、自然エネルギーを最大限活用したパッシブ化、きめ細かな環境制御技術とワークスタイルの変革によって、年間エネルギー消費量は、空調・換気、照明、その他に加えてコンセントを含めた建物全体で403MJ/m2・年となり、改修前と比べて70%以上削減されました。最小限の太陽光発電によって創エネルギー量は417MJ/m2・年となりました。
1年間の運用実績により、以下の効果が確認されました。
①建物全体の断熱性を高めることで外装負荷が大きく削減されるとともに、年間を通じて窓廻りでも温度差の少ない快適な室内環境を実現しました。
②自然採光を最大限利用し、外付けブラインドの開閉を自動制御することで、室内の明るさ感を確保し、かつ照明電力を大きく削減しました。
③新規開発の小型デシカント空調機と地中熱・太陽熱を直接利用する放射空調によって、快適性を維持しながら、空調エネルギーを大きく削減しました。
④ウェアラブル端末を使った執務者の活動量計測や体感申告から個人の好みを学習し、最適な温度や気流を提供するウェルネス制御を実現しました。
⑤エネルギーが最小化されたことで、災害時にインフラがダウンしても建物の機能を維持する稼働時間が長くなり、BCPが大きく向上しました。