「伝統木造建築用超塑性亜鉛アルミ合金制震ダンパー」が相次いで採用~外観・内観を変えずに耐震補強が可能でメンテナンスフリー~
2012年5月9日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:竹中統一)は、伝統木造建築を地震から守る技術として、2010年に開発した「伝統木造建築用超塑性亜鉛アルミ合金制震ダンパー」を、3件の耐震補強工事に採用しました。
「伝統木造建築用超塑性亜鉛アルミ合金制震ダンパー」は、地震エネルギーを吸収し、地震時の揺れを低減する装置で、一度設置すればほとんどメンテナンスの必要がなく、外観・内観を変えずに耐震性を向上させます。一般的な架構と比較し、本ダンパーで補強した架構は揺れを約20~30%低減します。
これまで、椿山荘三重塔(東京都文京区)、身延山久遠寺法喜堂(山梨県身延町)、堀之内妙法寺本堂(東京都杉並区)といった歴史ある伝統木造建築の改修工事の際に本ダンパーを採用しました。
また、本ダンパーは、昨年10月に、財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しました。製造品質、制震性能の安定性、長期耐久性など、設定した諸性能に関する認証基準を満たしていることについて亜鉛アルミ合金の供給担当である株式会社コベルコ科研と共同で第三者評価機関からの性能証明を取得したことにより、信頼性の高い新技術としてより多くのお客様に認知して頂けるものと考えます。当社では今後、伝統木造建築のリニューアルに際し、本ダンパーによる耐震補強もメニューの一つとして積極的に提案していきます。
■本ダンパーの特長
- ・メンテナンスフリー
「伝統木造建築用超塑性亜鉛アルミ合金制震ダンパー」は、水飴のように伸びるナノテク素材の亜鉛アルミ合金を使用しています。亜鉛アルミ合金は、通常の鋼材や免震装置に使用されている鉛に比べ変形性能に優れており、ひずみ劣化や加工硬化も極めて少ない素材です。本ダンパーは、素材の特性を最大限に生かすために形状も工夫されており、繰り返し大きな揺れを受けても、設計当初の性能をほぼ完全に維持します。さらに、亜鉛とアルミという組成から錆びることもなく、一度設置すればほとんどメンテナンスの必要がありません。 - ・外観・内観を変えずに耐震補強
本ダンパーは、コンパクトなサイズで、部材を傷めることなく容易な取り付けが可能です。また、柱と梁や貫(垂直材である柱と柱をつなぐ水平材)などの横架材の仕口(接合)部分に設置し、壁厚さの中に納めることもできるため、建物の外観・内観を変化させることなく耐震性を向上させるのが特長です。
■本ダンパーを採用したプロジェクト
- 1.椿山荘三重塔(東京都文京区)<2011年6月竣工の改修工事で採用>
「椿山荘三重塔」は、もともと広島県東広島市の篁山竹林寺にあったものを1925年(大正14年)、椿山荘に移築。旧寛永寺の五重塔(台東区上野)、池上本門寺の五重塔(大田区池上)とならび東京に現存する3古塔のひとつで国の登録有形文化財でもあります。
今回の工事では、長い間、風雨にさらされ傷んでしまった屋根の銅板を葺き替え、耐震補強や一部部材の修理を行いました。傷みの少ない部材は再利用することで、従来の美しい姿によみがえりました。
- 2.身延山久遠寺法喜堂(山梨県身延町)<2011年8月竣工の改修工事で採用>
「身延山久遠寺法喜堂」は、豊臣秀吉の姉
瑞竜院殿が我が子の菩提を弔うために「大方丈」として唐門等と共に1593年(文禄2年)に建立寄進、1829年(文政12年)焼失し、1831年(天保2年)に再建されるが、1875年(明治8年)再び焼失、1883年(明治16年)に「法喜堂」として再々建された、築128年を迎えるケヤキ造りの庫裏です。現在では団体参拝対応の休憩所として使われています。
今回の工事は休憩スペースや広間を広げ、団体参拝の利便性を高めるだけでなく、改修に合わせて耐震補強を行なう事でより安全な建物に生まれ変わりました。
- 3.堀之内妙法寺本堂(東京都杉並区)<2012年5月竣工の改修工事で採用>
堀之内妙法寺は昔から、江戸庶民の中で『堀之内のおそっさま』と言われ、厄除けのお寺として全国から大勢の参拝者がありました。本堂は三軌堂とも称され、主に檀家の方々の法要行事等が営まれます。1819年(文政5年)に建立された築200年近い本堂は、絢爛さが目を引く祖師堂と対照的に、落ち着いたたたずまいをみせています。
今回の工事はお堂の屋根替え及び耐震補強に加え、漆塗の祭壇修理や空調・LED照明改修も行なっています。使い勝手を優先し内・外観を変えない補強により、お堂が一新しました。