国内初となる耐火木造のオフィスビル「大阪木材仲買会館」着工~「大阪木材仲買会館」を1時間の火災に耐える木造オフィスに!~
2012年7月3日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:竹中統一)は、鉄筋コンクリート造と同等のスパン(柱と柱の距離)9mの建築空間を実現可能な木造建築の柱・梁に使う耐火集成材「燃エンウッド」を開発、1,000m2超の木造オフィスビル「大阪木材仲買会館」(大阪市西区)の2~3階の主架構(柱、梁)に採用いたします。「大阪木材仲買会館」は、本年7月2日に着工、2013年3月竣工の予定です。
「燃エンウッド」は、1時間耐火部材として国土交通大臣認定を取得していることから、通常の建築確認申請の手続きのみで4階建ての木造耐火建築物もしくは最上階から数えて4階下の階までを木造化した耐火建築物を建設することが可能です。また、当プロジェクトでは建築主の大地震に対する「安全・安心」を確保するため、鉄筋コンクリート造耐力壁を耐震要素とする構造計画としています。
今後は、政府の進める公共建築物等の木造化に寄与するとともに、大規模木造建築物の普及・展開に貢献していきます。
■木造市場背景
国内の森林資源の活用や人にやさしい木素材による居住環境の創出推進のために、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(2010年10月施行)が制定されました。現在、国が率先して木造率が低い公共建築物(平成20年時点で総延床面積の7.5%)にターゲットを絞り木材利用に取り組むとともに、地方公共団体や民間事業者にも国の方針に即して主体的な取り組みを促し、住宅など一般建築物への波及効果を含め、木材全体の需要拡大を目指しています。
今後「燃エンウッド」は、防火・耐火の規制により大規模木造建築の計画が困難であった、防火地域等での学校や病院などへの適用により公共木造建築物の普及・展開に寄与し、また、同地域等での商業施設や大規模事務所などへの適用により、人にやさしい居住空間の提供と、建設産業や林業の発展および自然環境の保全に貢献していきます。
■「燃エンウッド®」による大スパン化を実現
「燃エンウッド」は、2007年にスパン(柱間の長さ)4.5メートル程度の木造建築の柱や梁に使うスギ材による1時間耐火集成材として開発し※、国土交通大臣認定を取得しました。その後、都心部の商業施設やオフィス等で求められる9メートルのスパンに対応するため使用木材を材料強度の高いカラマツに変更し、2011年12月、改めて1時間耐火集成材としての国土交通大臣認定を取得しました。このことから「燃エンウッド」を使用することにより、通常の建築確認申請手続きのみで4階建ての木造耐火建築物、もしくは最上階から数えて4階下の階までを木造化した耐火建築物を建設することが可能です。
2007年 | 2011年 | |
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使用木材 | スギ | カラマツ |
木材料強度比 | 1.0 | 1.3 |
柱間隔(スパン) | 約4.5m | 約9.0m |
当社では、2009年に、日本最大級の能力を有する新耐火実験棟(載荷能力30MN・8時間加熱)を建設し、大断面の構造部材を実物大レベルで実験が可能となったため、「燃エンウッド」の新たな展開が可能となったのです。
- ※(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と国土交通省の助成を受けています。
■「燃エンウッド®」の耐火性能を確保する仕組み
「燃エンウッド」とは、積み重ねられた板(ラミナ)を接着剤で一体化した集成材と呼ばれる「荷重支持部」に、耐火性能を付与するための「燃え代層(もえしろそう)」と「燃え止まり層」を表面に貼り付けた耐火集成材です。
「燃え代層」には、カラマツ集成材を使用しています。火災が発生した場合には、最外層の「燃え代層」が断熱性能の高い炭化層になり、内部への燃焼進行を抑制します。また、「燃え止まり層」にはモルタルとカラマツ集成材を交互に配置し、モルタルで熱を吸収しながら完全に燃焼を停止させ、部材の中心部にある「荷重支持部」を火災から安全に保護します。
■「大阪木材仲買会館」概要
建築主 | 大阪木材仲買協同組合 |
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建物用途 | 事務所 |
建築地 | 大阪市西区南堀江4-18-10 |
階数 | 地上3階 |
構造 | 木造+RC造(耐震要素) |
建築面積 | 457m2 |
延床面積 | 1,093m2 |
設計施工 | 竹中工務店 |
工期予定 | 2012年7月~2013年3月 |
「大阪木材仲買会館」では、木材利用促進・大規模木造建築物の普及を目的に、木材の特性を活かし、デザインの可能性を追求することをコンセプトとして新会館建築計画がスタートしました。関西地方における新しい木造建築普及モデルの役割を果たし、公共・民間建築での木造・木質化の推進に貢献することが期待されています。
なお、当プロジェクトは、先導的な設計・施工技術が導入される大規模建築物の木造化・木質化を実現する事業計画に対して国土交通省が補助を行う「木のまち整備促進事業」に採択され、建設費・設計費が助成の対象となっています。