建物を活用しながら中間階免震改修を実施する「免震装置プレロード工法」開発~「江東区役所本庁舎」にて初適用~

2012年7月4日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:竹中統一)は、中間階免震改修工事において工事中も建物を通常通り利用でき、施工品質を高めることが可能な「免震装置プレロード工法」を開発し、「江東区役所本庁舎」において初適用しました。本工法は、新たなプレロード機構を開発した点に特徴があります。(特許出願済)
「江東区役所本庁舎」では主に庁舎駐車場になっている1階部分の柱上部に免震装置を設置します。今回、免震改修工事中も免震階を駐車場として供用する必要があったため本工法を採用しました。
一般的に中間階免震改修は、柱の一部を切断して積層ゴムなどの免震装置を挿入し、柱が受け持っていた荷重を免震装置に載せ替えます。この作業を一部の柱だけで行なってしまうと、免震装置の縮みによって上部の建物が部分的に沈下し、有害な変形が発生する場合があります。従来の一斉ジャッキダウン工法では荷重載せ替え作業を多数の柱で一斉に行うことによって、この不均等な変形を防止していました。その結果、免震工事階の大部分が工事エリアとなり、工事中はその範囲を使用できませんでした。本工法では、柱ごとに免震装置の設置作業を実施できるので、居ながらにして実施できる中間階免震改修の更なる推進が期待できます。当社では、今後積極的な展開を行っていきます。

「免震装置プレロード工法」適用状況

「免震装置プレロード工法」適用状況

【「免震装置プレロード工法」特長】

免震装置の下部に配置した油圧ジャッキで免震装置を強制的に縮め(=プレロード)、そのまま強固に固定することにより、上部建物の沈下・変形を防止することができます。この特長を活用すると、①免震装置の設置を自由な箇所数・順番で実施できることになり、②工事エリアを最小化し、③建物利用者の都合に合わせて、工事エリアを除き免震工事階を使用することが可能です。また、本工法では一度に切断する柱本数が少ないため、④工事中の安全性・静粛性が高まります。

【「免震装置プレロード工法」工程】

「免震装置プレロード工法」工程

【プレロード機構の概要】

プレロード導入を安全・正確に行うため、油圧ジャッキと鋼製支持部材からなる専用のプレロード機構を開発しました。大きな荷重を安全に支えることができ、ねじ機構により免震装置の縮み量に合わせて容易に高さ調整が可能です。鋼製支持部材には建築構造用鋼材を使用し、最終的には本設鉄骨部材として柱の一部に組み込みます。仮設材が柱内部に残留しないので、免震装置の取付け部として高い品質と信頼性を有しています。

プレロード機構(鋼製支持部材)

プレロード機構(鋼製支持部材)

プレロード機構(油圧ジャッキを設置した状態)

プレロード機構(油圧ジャッキを設置した状態)

【「江東区役所本庁舎」建物概要】

「江東区役所本庁舎」(1973年建設)は地震発生時に江東区災害対策本部が設置されるなど、災害発生時には中核的な役割を担います。庁舎利用者などの人命を守り、庁舎の行政機能を維持するため、当社設計施工で耐震補強工事を実施しています。

工事名称 江東区庁舎耐震補強その他工事
建築地 東京都江東区東陽 4-11-28
耐震補強工事
設計・施工
竹中工務店
建物用途 庁舎
工期予定 2011年10月20日~2013年3月末日