耐火集成木材「燃エンウッド®」の柱・梁接合技術を適用~耐火性能・意匠性・構造性能を確保した耐火木造用の接合方法~
2013年4月15日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:宮下正裕)は、耐火集成木材「燃エンウッド」の柱と梁の接合部に最適な、耐火性能・意匠性・構造性能を確保した接合技術(特許出願中)を開発し、国内初の耐火木造大型商業施設「サウスウッド」(横浜市都筑区)に適用しました。
「燃エンウッド」は、積み重ねた板を接着剤で一体化した集成材で建物の荷重を支える「荷重支持部」と、主にモルタルで構成される「燃え止まり層」と、燃焼した際に炭化して断熱効果を発揮する「燃え代層」の3層から構成される柱および梁の耐火集成木材です。
この「燃エンウッド」の柱と梁の接合部分には高い構造性能を保持するために金具を用いていますが、金属は木材に比べて熱伝導率が非常に高く、火災時に「燃エンウッド」自体の燃焼を助長する恐れがありました。そこで、接合金具を柱と梁のモルタル部分「燃え止まり層」の内側に埋め込むよう配置することにより、熱を金具に伝えないようにし、接合部の構造性能と耐火性能を確保することに成功しました。「燃エンウッド」を活用したこれまでのプロジェクトには、すべてこの接合方法を適用しています。
- ※「燃エンウッド」は竹中工務店の商標です。
プロジェクト適用に際しては、当社の技術研究所において、実物大の柱・梁の接合部を用い、建物に作用する荷重と同等な力をかけた状態で燃焼実験を行いました。この実験は計画から結果の評価まで、第三者機関へ検証を依頼し、「燃エンウッド」と同等の1時間耐火性能を確認しています。また、接合部に作用する荷重をかけた構造実験も当社研究所で実施しました。
【技術概要】
本技術は特殊な技術を必要としないため施工性に優れ、今後の普及が期待できます。
- ①梁を取り付ける側の柱の「燃え代層」を削り取り、固定用の穴を「荷重支持部」まで開け、ボルトとナットを使ってT字型の金具を固定。
- ②梁側の「荷重支持部」に柱と垂直になるように溝を開け、そこにT字型金具の長辺の部分を差し込む。
- ③梁に開いた穴とT字型金具の長辺部分に開いた穴を貫通させ固定するようにドリフトピンを通し、さらに金属部分が外から見えないよう木栓を穴の両端から差し込む。
【鉄骨造との比較】
通常、鉄骨造の建物では、柱と梁の接合部分が外から見える位置でボルト類を用いて接合し、その上から熱に弱いボルト類を守るために耐火被覆で覆います。耐火被覆材は意匠性に乏しいため、その上から仕上げを行うのが一般的です。
今回開発した柱・梁接合技術の場合、強度を保つためにドリフトピンを使用して接合します。しかし、接合金具は完全に木材内部の熱の影響を受けない荷重支持部分に取り込まれているため、耐火被覆は必要なく、木質感のある意匠性に優れた外観を実現します。