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ハイグレードな制振構造を可能とする「高減衰オイルダンパー」を開発

~中之島フェスティバルタワー・ウエスト(仮称)(大阪市)に採用~

リリース

2014年9月1日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:宮下正裕)は、カヤバシステムマシナリー(社長:廣門茂喜)と共同で、1基で従来のおよそ3倍の最大減衰力(6000kN)を発揮する制振用オイルダンパー「高減衰オイルダンパー」(図1)を開発しました(特許出願中)。建物用オイルダンパーとしては世界最大の減衰力です。
大阪市で建設中の中之島フェスティバルタワー・ウエスト(仮称)では、「高減衰オイルダンパー」を地震力が集中する低層階に集中配置することにより、免震構造と同等以上の耐震性能を発揮するハイグレードな制振構造(図2)を日建設計と協業し実現しました。

高減衰オイルダンパー構成図


図1 「高減衰オイルダンパー」構成図

ハイグレードな制振構造のイメージ図


図2 ハイグレードな制振構造のイメージ図

■「高減衰オイルダンパー」の概要

「高減衰オイルダンパー」は要素ダンパー3基を長さ方向に一体化するという従来にない方法を採用することで、断面積を小さく保ったまま従来の3倍の減衰力を実現したものです。減衰力6000kNのオイルダンパーを従来技術で設計すると、「高減衰オイルダンパー」の2倍以上の断面積となり建築空間のスケール感にそぐわないものとなるため、製品化されていません(図3)。このため、従来技術では2000kNのオイルダンパーを3基並べて設置する必要があり、建築空間の使用性を阻害するおそれがありましたが(図4)、「高減衰オイルダンパー」を採用することでダンパー設置数を3分の1に低減できるので、低層階など日常的に使用される階を「制振階」として建物全体の耐震性能向上に積極的に利用することによって、ハイグレードな制振構造を容易に実現できるようになりました。
高減衰オイルダンパーと従来設計6000kNダンパーとの断面比較

図3 「高減衰オイルダンパー」と  
従来設計6000kNダンパーとの断面比較

高減衰制振方法の比較

図4 高減衰制振方法の比較

■「高減衰オイルダンパー」の特長

オイルダンパーの長所である、強風や頻度の高い小地震に対する揺れの低減効果や繰り返し挙動に対する耐久性を保ちながら、従来にない大きな減衰力を発揮できる
1基あたりの減衰力が大きいことや、その減衰力に比して断面積が小さいことにより、設置数の低減や設置スペースの削減を図ることができる
②の理由により、設計上の自由度が増すとともに、視覚的な圧迫感も少なくできる
従来技術に比してダンパー本体の熱容量を高める構成を採用し、地震時の油温上昇を大幅に抑制したことにより、長周期地震動による長時間の揺れ対策用ダンパーとしても好適である

■ハイグレードな制振構造

2011年の東日本大震災以降、建築主・ユーザーから建物耐震性能に向けた高い関心が寄せられています。高い耐震性能を有する構造形式として免震構造が広く知られていますが、建物形状などの条件によっては採用できないケースもあります。ハイグレードな制振構造は、「高減衰オイルダンパー」の活用により日常的に使用される階を「制振階」として利用することで、免震構造と同等グレードの耐震性能を付与するとともに、建物用途に供しない免震層を設ける必要がないというメリットも生み出します。この技術の適用によって、長周期地震動による揺れ対策なども含め、BCP(事業継続計画)や安全・安心を求める幅広いお客様のご期待に応えてまいります。

■中之島フェスティバルタワー・ウエスト(仮称)工事概要

建設地 大阪市北区中之島3丁目
敷地面積 約8,377m2
延べ床面積 約150,432m2
階   数 地上41階、地下4階
建物高さ 200m
構   造 鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造および
鉄筋コンクリート造
主な用途 滞在施設、事務所、文化施設、店舗等
建 築 主 株式会社朝日新聞社、株式会社竹中工務店
設計・監理 株式会社 日建設計
(構造・設備設計協力:竹中工務店)
施   工 株式会社 竹中工務店
完成予定 2017年春