大量かつ長期的に使われるコンクリートは、建設業だけでなく、日本全体のCO2排出量にも大きなインパクトをもたらすと期待されています。そのため、現在国を挙げて、CO2削減に貢献するコンクリートの研究開発が急ピッチで進められています。竹中工務店も、コンクリートを環境に良い素材=エコマテリアルに変えることを目指して、研究開発を進めています。
特に現在は、他社とコンソーシアムを構成し、NEDO・グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」のコンクリート分野としての共同研究に、力を入れています。
コンクリートは、主要材料であるセメントの製造時に、大量のCO2を発生させています。セメント産業からのCO2排出量は、建設資材全体の30%を占めるほど。そしてコンクリートは大量に使われるため、日本全体でみても3~4%を占めると言われています。建設業にとってコンクリート分野のCO2削減は、緊急かつ重要な課題です。
一方、コンクリートは、利用量の多さや、生成物の安定度の高さなどの特性から、大規模なCO2削減が期待できる材料でもあります。CO2の発生自体を減らす低炭素化技術だけでなく、CO2の再利用技術の開発も進んでいます。
コンクリートの基礎知識
コンクリートは、骨材となる砂利と砂に、セメント、水を加えることでできます。セメントは水と反応することで固まり、コンクリートになります。
コンクリート由来のCO2排出量のほとんどが、現在普及している「ポルトランドセメント」の製造時に発生します。ポルトランドセメントは製造時に石灰石などの原料を高温で焼成するため、多くのエネルギーを必要とする上、大量のCO2を発生させてしまうのです。
「環境性」の追求はもちろんですが、建築や土木の材料として使うためには、耐久性や劣化抵抗性、固まりやすさなど、コンクリートとしての「品質の高さ」が大前提です。そして、普及のためには、「低コスト」であることも大切です。これら3つのバランスを重視しながら、研究開発を進めています。
コンクリートでCO2を削減するための方策は、大きく3つに分けられます。
コンクリートの
製造時の
CO2を減らす
コンクリート
材料に
CO2を吸わせる
コンクリートでできた
構造物に
CO2を吸わせる
CCU材料(改質再生骨材)
建物解体後の廃材に含まれるセメント成分を分離し、CO2を吸収させた粗骨材や細骨材。コンクリートなどの建設資材としての活用が見込めます。
<NEDOの委託を受けて実施>
CCU:Carbon Capture Utilization=二酸化炭素利用
NEDO:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
業界横断で新素材を開発
革新的カーボンネガティブコンクリート
鹿島建設、デンカをはじめとした他社とコンソーシアムを構成し、「使用するほどCO2を削減できるコンクリート(=革新的カーボンネガティブコンクリート)」を共同研究しています。NEDO・グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」のコンクリート分野に、コンソーシアムを構成して共同提案し、採択されました。
(コンソーシアムのホームページへ)
CO2排出量を大幅に削減するECMコンクリート®をベースに、各社が持つCO2を吸収するコンクリートやCO2を吸収したコンクリート素材を組み合わせ、これまでにない高レベルのカーボンネガティブコンクリートを作っています。
(NEDO ニュースリリースへ)
2020年12月末現在、40件以上のプロジェクトに適用されています。
国立循環器病研究センター(地下躯体・基礎への適用例)
横浜市役所(地下躯体・基礎への適用例)
巴商会新砂水素ステーション(地上躯体への適用例)
名古屋駅前モンブランホテル(外装プレキャストへの適用例)
CO2排出量の多さや、骨材採取での山・川の切り崩しなどから、コンクリートは環境にマイナスなイメージがあります。しかし、強くて長持ちするコンクリートは、社会の発展と安全を支えています。廃棄物をセメント材料として受け入れるという社会貢献的な面も。
コンクリートは、決して「冷たい悪者」ではありません。ただ、環境負荷を下げなければ、これからの社会には受け入れられづらくなるでしょう。
現在、精力的に開発を進める「革新的カーボンネガティブコンクリート」は、当社だけでなく、他社の技術も組み合わせています。これは、使えば使うほど環境に貢献できる、まさに理想のコンクリート。業界一丸となって急ピッチで開発を進めますので、今後の成果にご期待ください。