2015年中途入社
学生時代の専門分野:電気通信
中途で入社し今年で5年目。専門は、前職から一貫して電磁だ。独自に開発した電力線通信用フィルター技術を基盤に、建設現場IoTプラットフォーム「TSUNAGATE®(ツナゲート)」を構築。多数の作業所に導入展開している。さらに、溶接不具合検知など、電気・通信を中心とした研究開発を進行中。一見、建築からは遠く思える分野を専門とする西野だが、活躍の場は広い。
建設業界は慢性的な人手不足という課題に直面している。解決策としてロボットの活用やIoT化を進めるにあたり、まず必要となるのが通信設備だ。
「IoTの導入には通信環境が必須です。でも作業所では携帯の電波が届かない時がありますし、Wi-Fiも建物が建ってからでないと設置できない。建設中というのは死角なんですね」
作業所をIoT化するプラットフォーム「TSUNAGATE」が、そんな課題の突破口となる。PLC(電力線通信)機能を搭載した仮設分電盤を作業所に設置することで、トンネルや地下など、電波の届かない現場でも通信網を構築でき、クラウド上でのICTツールの一括管理を可能にする画期的なシステム。開発には、西野がこれまで培ってきた電磁の専門知識が発揮された。
「5G時代も到来した今、建築において電波や通信をより有効に生かすにはどうしたらいいか、ということを模索しています。いろんなICTツールを使うことで、作業所の生産性を高める手助けができるんじゃないかと思って。そういうことをやらせてくれる現状が、すごくうれしいですね」
スピード感も西野の武器だ。「TSUNAGATE」を着想したのは2016年ごろ。作業所で試適用するまでの期間は約1年という早さである。
「大学でロボットの研究をしていた経験があるので、最初のプロトタイピングは自分でやりました。基盤になる分電盤のアイデアを試作するために、ホームセンターで材料を買ってきたりして。プログラムを自分で作って実際の仕様や動作を確認して、コンセプトが正しいかを検証する、というのはたくさんやりますね。思い付いたことをすぐ具現化できるのは強みかなと思います」
そうした身軽さは、社風による後押しも大きい。
「電磁環境で一緒にやっている仲間もバックグラウンドはさまざまです。一人一人が専門性を持っていて、それを生かしながら、会社やお客様が求めてくれる研究開発をやっている感じ。『やりたいんだったらやっていいよ』という雰囲気はすごくあります」
一方で、品質への責任にはシビアな視点を持つ。
「社内ではみな比較的自由に発言します。一見突拍子もないアイデアでも新しい視点を持っていたりするので、周囲も真剣にそれを受け止める風土がありますね。一方で、お客様への発言は非常に慎重で、常に最善の品質のものを提案しようという姿勢が根付いていると思います。社内でどんどんアイデアを創発するとか、そういったところは自由に発言して、そのうちのいくつかが研究開発につながり、やがてお客様に提案できるような技術になっていくイメージですね」
現在は、「TSUNAGATE」の作業所での実証を繰り返しながら、導入拡大に向けたアップデートを続けている。「走りながらやっていかないと、ユーザーの要望や技術的な課題が分からない」という西野。作業所と研究所を行き来する毎日だ。
これからの展開にも夢が膨らむ。
「分電盤にコンピューターを入れているので、アイデア次第でいろんなことができるんです。漏電センサーを入れて漏電を防いだり、熱中症センサーを入れてサイネージに表示させたり。カメラシステムにも将来性を感じています。360°カメラでストリートビューのように作業所を歩くことができれば、施工担当がオフィスにいながら作業所を巡回できる。『そこのごみ片づけて』とか『ここ危ないよ』といった指示を写真で出して、終わったらすぐ別の現場へ。そういったことも目指しています」
自由な発想力と、経験に裏打ちされた専門性が、建築に新しい風を吹き込んでいる。
2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。
西野 高明 にしの たかあき
前職ではメーカーで家電製品の機能試験やノイズ対策などに従事。竹中工務店に入社後は、建設現場IoTプラットフォーム「TSUNAGATE®」を構築するなど即戦力として活躍する。現場の作業効率化など課題解決を目指し、電気・通信を中心に研究開発を実施中。
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