2017年入社
学生時代の専門分野:気象
畔上の研究分野は気象。気象モデルを用いた台風シミュレーションや屋外環境が人の行動選択にどういった影響を与えるかの調査、行動選択シミュレーションを行っている。
ゼネコンの中でも珍しい気象専門という立ち位置の彼は、どのように仕事と向き合っているのだろうか。
「元々偏西風や海洋などのマクロ的な気象ではなく、ヒートアイランド現象のような人に近い、建築に落とし込めるスケール感の気象に興味がありました。それで就活のときに『この気象の技術や知識を生かすには』と徹底的に調べた結果、ゼネコンの研究所に行き着いたんです。大学の恩師が建築分野にも近い応用的な気象を研究している方だったことも、強く影響しているかもしれません」
「『ものを作って社会に実装できるところ』がゼネコンの良さ」と語る畔上。
実際に彼は2020年9月4日にリリースされた、数値風洞(NWT)「kazamidori®」(※1)の開発に携わっている。
「リリースされたあと、インタビューや取材を受けて…うれしかったです。自分の作ったもの、携わったものが世に出て社会に何かしらの影響を与えるかもしれない、と取材を受けている中で感じました。それが、自分のモチベーションにもなっていると思います」
「時々刻々と変化する風」を高精度に予測できる数値シミュレーション技術
気象分野という珍しい立ち位置ではあるが、一匹狼で仕事をしているかといえばそうではない。
「所属している風・温熱環境グループには、私のほかに風工学や温熱環境、地下水の専門家がいます。このグループは設計や他の研究部門とのつながりが非常に強く、グループメンバーだけでなく他部門の方とも連携する場面が多いです。大学時代とはまた違って、いろんな分野の方がいろんな目線で見てくれる分、孤独は感じないですね」
「専門分野の枠を広げ、多くの人を巻き込んで楽しく活動的にやっている」と、周りは畔上を評する。そんな中でも「ニュートラルでいたい」という彼なりのこだわりもある。
「自分がメインの研究でも、温熱環境や人流の専門家、開発系、設計、大学の先生など多くの方々に参加いただいています。新しい発見もありますし、まちづくりや設計に生かすなら、専門家たちの知見がないと良いものはできない。自分の研究はいろんな視点が必要です。独りよがりの研究にならないよう、常に“ニュートラル”でいたいなと思います。」
一方で、発言にひとり歩きされてしまうことが、一番怖いという。「あの人がそう言っていたから」と、畔上の発言がそのまま正解になってしまうこともある。
「社内では専門分野に関して誰にも聞くことができない分、大学の先生の見解を聞いたり論文を読んだりなどの裏取りは気をつけていますね。責任が伴うと思っているので」
畔上は今、kazamidoriの他に「屋外環境が人の行動選択に与える影響」について、他部門と連携して研究を進めている。
「街の中を歩くと、日差しを避けたり暑いところを通りたくなかったりしますよね。そういう屋外の環境が人の行動にどういう影響を与えるのか、『ソトコミ®(※2)』の研究員の方と連携して研究を進めています。被験者実験や機械学習を用いた人の行動シミュレーションを行うことで、温熱環境が変わった際に人の行動がどういった理由でどのように変わるかを明らかにしようとしています。今後は、『新しい建物が完成した際に人の行動がどう変わるか』といったことも含め、調査していきたいと考えています」
今後もしばらくは今抱えているkazamidoriと人間の行動選択、この2つの研究を突き詰めたいという。
「今抱えている2つの研究には、やらなきゃならないことも、できていないこともたくさんあって。今はそれに片をつけないと」
担当の研究に注力したいと語る一方で、「気象に関わるさまざまな分野に興味があります。気象の人として採られているので、設計や作業所にプラスとなるような気象の研究をしたい」と、遠くはない将来の展望に思いを馳せる。
これからも畔上は竹中工務店の“気象の人”として、自分のなすべきこと、やりたいことを社会に実装していく。
「分散型コミュニティスペース」「ワーカーの移動を促す誘導システム」「パーソナル環境システム」の3つを駆使し、ワーカー自身がオフィス内外の利用可能なスペースを選べることで、省エネと知的生産性を向上させるワークスタイルを促す空間デザインのこと
2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。
畔上 泰彦 あぜがみ やすひこ
学部・修士課程で気象解析を専攻(現在は博士課程在学中)。3年目にして数値風洞(NWT)「kazamidori®」の開発にも携わった。
現在は気象モデルを用いた台風シミュレーションや、屋外環境が歩行者の行動選択に与える影響の調査・シミュレーションなどを進めている。
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