2017年入社
学生時代の専門分野:建築環境
見えない空気を「見える化」させること――。それが野村のミッションである。
工場や美術館・博物館、事業所(オフィス)など、さまざまな建物で空気を最適化することが求められ、野村はそれに対応しつつ研究者としてアドバイスする。その姿はまさに「空気のコンサルタント」。
学生時代から空気環境を研究しているが、「ゼネコンの研究員は、よりやりがいを感じる」と語る。その理由を語ってもらった。
技術研究所内にも、空気の状態を知らせるサイネージが設置されている
「空気の見える化」とは、空気中に含まれるさまざまな成分を測り、評価すること。もちろん、悪い空気の改善まで研究分野である。
「何を測るのかを決めて、測り方を考えるところが肝ですね。例えば臭気が発生したとき、最初は何が原因なのかはわかりません。それを私たちが予想して、測り方を計画します」
こういった汚染環境の改善や対策はもちろん、建物の快適性に関わる研究も行っている。
「あるお客様のオフィスに、空気の状態を知らせるサイネージ表示も導入させていただきました。どんなセンサーで何を測るのか、その設定値を決め、表示画面のデザインまで担当しました」
新しく建築する美術館では、空気環境の面で設計のコンサルティングを行った。美術館は、収蔵するものによって、求められる環境のレベルが変わるという。
「適した環境をつくるためにどう設計すればよいのか、絶対的な解がないため、本や資料などを読みながら勉強ですね。設計者の意図も聞きながら、最適な設計案を探します。コンクリートなどの材料も空気環境に影響しますので、材料グループと一緒に研究することもありますよ」
こういったお客様あってのプロジェクトの場合、大学の研究室に比べると条件が多いとも言える。それに対しては…
「お客様がいるプロジェクトでは、誰かのためにやっている実感があっていいんです。もちろん、今も自分でテーマを起案して自主的に研究に取り組んでいますし、それもやっぱり楽しい。でも、お客様がいると、一層やりがいを感じますね」
技術研究所内にも、空気の状態を知らせるサイネージが設置されている
多くのプロジェクトに携わっているため、現場に赴くこともしばしば。意外にも力仕事が多く、それは大変だという。
「測る空気は軽いですが、測定器は重い機材が多いんです。ちょうど昨日も現場へ行ってきたのですが、脚立を持って行って、上り、窓に養生テープを貼って密閉して、測定器を設置して…という状況でした」
見えない空気を測るのは一苦労ということ。
「イメージは、もっとスマートなものだったんですけどね(笑)それはもう少し未来の話かな…」
2020年、新型コロナウイルスの影響で、空気に対する意識の変化、関心の高まりを感じているという。
「空気に求められるものは変わっていきます。今なら、ウイルスという観点は重要です。他にも、オフィスなら生産性向上につながる空気が必要です。工場は生産するモノや工程によって必要な空気が変わります。それによって研究内容は変わっていきます。『良い空気とは何か』それは永遠のテーマですね」
竹中工務店で空気を研究しているのには理由がある。
「建物にも興味があり、建物に関わりたくてゼネコンを選びました。人は食べ物や水に比べて、何倍も多くの空気を摂取していますが、吸い込む空気を選ぶことはできません。空気が見えることは安心につながりますので、それを追求して、建物に付加価値を出せるようにしたいです」
空気の見える化で安心を――。野村の今後の研究に期待したい。
2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。
野村 佳緒里 のむら かおり
室内空気質、特に空気の「見える化」が研究領域。高度クリーン環境構築や、文化財を長期保存する環境づくりなどに従事している。その他、人が健康・快適に過ごせる空気環境づくりを目指して研究中。
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