2002年入社
学生時代の専門分野:建築構造
曽根は「振動制御」の研究を担っており、特に、風や地震による建物の揺れを抑えるためのTMD(チューンド・マス・ダンパー)やAMD(アクティブ・マス・ダンパー)という制振技術を専門領域としている。
担当分野を率いていく人物として期待されている曽根。積極的に新しい知識・技術を習得しながら研究領域を広げている。
「研究開発をずっと続けてきましたが、いつもつらかったですね…」という語り口とは裏腹に、研究者としての情熱が見え隠れしている。
大学では、大スパンドームの風荷重の評価など、耐風工学について研究していた。
入社後はさらに、強風による建物揺れの制振技術へと、研究分野を広げることになる。
「TMD/AMDは1980年代後半から研究開発が大きく進展しました。私は先輩たちの研究を受け継いで、実際のプロジェクトへの適用を推し進めています。特殊なものを開発することもありますよ」
その一方で、制振技術とは関係のない火山関係の研究にも携わった。当時、地震工学部門の領域で手つかずのテーマだったという。
「例えば富士山が噴火したら建物はどのような影響を受けるか。そういったことを研究しようという話になり、興味があって手を挙げたのがきっかけです。実際に火山をいくつかまわるなどして、経験と知識を得ました」
好奇心が強い曽根は、一貫して「おもしろさ」に惹かれて、研究を続けているようだ。
「おもしろい建物に携わりたいという思いがあって竹中工務店に入りました。竹中工務店が設計する建物は、常に新しい工夫が盛り込まれていておもしろいです」
「新しいことの研究は、当然わからないことがたくさんあって、いつもイチから勉強で…つらいですよ(笑)。つらいですけど…勉強をして、いつかは宇宙にも関わってみたいです」
きっと、彼が感じるつらさは、彼が求めるおもしろさと表裏一体なのだろう。語り口とは裏腹に、情熱が見え隠れしていた。
現在は、制振構造や免震構造を対象としたモニタリング技術の開発を進めている。
そのアイデアを考えるところから始まり、センサーメーカーと共同開発をしているとのこと。
「これも専門ではなかったので、イチから勉強しました。世の中の技術をくまなく調査し、世界中の研究を調べ、知識や自信を蓄えていきます。その量は膨大なので、いや、大変ですよ…」
今は、専門家が見るためのモニタリングではなく、ユーザーのためのモニタリングとして進化させようとしている。
「モニタリングの必要性を一般の方に理解してもらうのは一苦労です。建物の安全にとって、本当に必要なものですので、専門家である我々がユーザー目線に立って情報発信をしていかなければなりません」
竹中工務店では、技術研究所研修生制度(※)があり、曽根はそれが研究開発に良い影響を与えているという。
「実験で建物部材が実際に壊れるところを見てもらったり、実験結果と計算結果の違いから実現象を理解してもらったりしています。一方、彼らから、私たちが教わることもたくさんあります。実務視点での意見をもらうことでアイデアが生まれ、新しい開発につながることもあるんですよ」
曽根は今、担当分野を率いていく人物として期待されている。
「AIなどの新しい技術が飛び交う昨今ですが、新しいからといって鵜呑みにせず、その正しさを判断しなければなりません。そのために過去の研究者の足取りを調べることや、基礎的な検討を自分で積み重ねることが大切です。その大切さも、若手に伝えていきたいですね」
持ち前の好奇心と意欲、そして他者との関わりを大切にして研究を進めていく。
設計や施工に携わる技術系社員が、技術研究所で2年間の実習と研究を行う制度。設計、施工の中核となる人材の育成が目的。毎年選考を通過した10名程度が、研究開発に携わっている。
2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。
曽根 孝行 そね たかゆき
免震・制振構造の専門家。特に、マス・ダンパー(TMDやAMDなど)に精通。『あべのハルカス』や『新宿野村ビル』などでは特殊なマス・ダンパーの開発も行った。また、モニタリング技術の開発にも力を注ぎ、メーカーと共同開発を推進している。その他、建築物の火山災害対策も研究中。
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