徳村 朋子  とくむら ともこ

2004年入社

  • 環境・社会研究部 主任研究員

学生時代の専門分野:建築環境

働きやすいオフィスを創出する健康空間の研究員

「私はゆるゆると」――本人はそう言いつつも、研究へのイキイキとした熱意が伝わってくる。

彼女は院卒で入社して以来、建築環境・設備分野の研究に携わっている。現在は、執務席を固定せず仕事の内容や状況に応じて働く場を選ぶABW(※1)というワークスタイルや、知的生産性・健康性に配慮したオフィスの設計手法について研究中だ。

今年で16年目。これからの時代を担う後輩たちに、徳村が伝えたいメッセージとは。

  Activity Based Workingの略称。自社オフィスの内・外問わず、自分にとって最適な仕事場所を自由に選択できる働き方

3年おきの産休・育休。世の中の変化とともに研究テーマも一新

「最初はパッシブ型省エネルギーという、地域の気候・風土に合わせた建築的な工夫により省エネルギー化する技術を研究していました。その後は、建物のファサードシステムや太陽光発電などの再生可能エネルギー関連。3度目の産休から戻ってきてZEB(※2)要素技術の研究をしているときに、ジョブ・ローテーション(※3)で設計部に異動しました」

彼女は入社後、3年おきの産休・育休を経験している。3度復職するたび、仕事のテーマやキーワードも変わっていったという。

「2年働いて1年で帰ってくる、というサイクルを繰り返していました。復帰のたびに、『1年休んでいる間に結構、世の中って一気に変わっているな』と気づきました。2014年あたりはZEBというキーワードがよく使われていた一方で、ここ数年はウェルネスが大きなトレンドです。新しいキーワードがどんどん出てきています」

現在は環境設備グループとも兼務しながら、2018年に発足した健康空間グループでの業務を主軸に、「オフィスにおけるワーカーの知的生産性」についての研究に従事している。

また、彼女は技研や東京本店のリニューアルにも関わってきた。現時点ではリニューアル後の運用・評価の段階まで進んでいる。

「前担当者の海外留学というタイミングに、入れ替わる形で任されました。計画段階から施工、実際に運用した後の評価までのすべてに携われる立場として、すごく貴重な体験をさせてもらっています」

  Net Zero Energy Buildingの略称。「省エネ」と「創エネ」により、快適な室内環境を実現しながら、建物の年間エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物のこと

  職務範囲の拡大のために実施しているジョブ・ローテーション制度(職務転換)のこと

ワークスタイルの変化に伴う、これからのオフィスの役割を研究

「今後、働き方はさらに多様化していくと考えています。昨今、急速に拡大してきたテレワークでの働き方に不安を覚える人もいれば、生産性が上がっていると感じている人もいて、『人は多様だな』という実感がさらに高まりました。その多様性をクラスタリングして、モデル化していきたいと思っています」

徳村は現在、健康空間グループにて「どういう席が人に好まれるのか」についても研究している。研究を基に顧客へ「こういうオフィスがよいのでは?」と提案できるよう、必死に構想や研究結果をまとめているところだ。

「人によってどういう席が好まれるのかにはいろんな側面があります。職位や職種、年代も関係しますし、外向性の高い低いなどの性格的な特性とも、相関が得られることが分かってきました」

今後の研究では、とくに「コミュニケーションの円滑化が重要なファクターになる」と徳村は睨んでいる。テレワークという働き方のデメリットは対面コミュニケーションの不足と考えており、それをクリアするハードルが一番高いと話す。

「オフィスに集まらない働き方は、ちょっとした雑談や、周囲の会話が耳に入ってくるなどの“偶発的なつながり”が起こりにくくなります。また企業の求心力や、社員の帰属意識が薄れてしまう可能性がありそうです。そこをうまく補填できるような仕掛け作りが必要だと思います。会社と社員、社員と社員を結びつけるリアルオフィスの役割は、今後重要視されるはずです」

前例がないからこそ好きなように。頑張んなきゃ!と萎縮しなくていい

「入社した当時の、女性というだけで珍しがられるような空気は、今はもうありません。私が入ったときには、働き方のロールモデルになる前例がまだあまりなかったので、萎縮する必要もなく、すごくやりやすかったです。育児と仕事の両立に苦労した時期もありましたが、上司や同僚にサポートしてもらいました。本当に周りの人に恵まれたと感じています」

研究への高い意識と意欲を持ち合わせ、ウェルネス関係や技研リニューアルなどの重要業務に従事してきた徳村。

彼女が後輩へ一番伝えたいのは、「のびのびと働けるよ」というメッセージだ。

「同世代でも子どもが2,3人という人もいますが、みんなそれぞれのペースで仕事をしている印象があります。なので、これからここで働く人には『頑張んなきゃと萎縮しなくても大丈夫だよ』というメッセージを伝えたいです。私のこういう後ろ姿を見せて、皆がやりたいようにできればいいなと思います」

2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。

プロフィール

徳村 朋子  とくむら ともこ

  • 技術研究所
  • 環境・社会研究部
  • 主任研究員

温熱光環境が専門。これまでにパッシブ型省エネルギー、再生可能エネルギー関連、ZEB要素技術などのさまざまな研究に携わってきた。
現在はワーカーの健康性・知的生産性向上に資する執務環境についての研究に従事。「健築®」にも関わっている。

専門分野

  • 知的生産性
  • 温熱環境
  • 光環境

受賞歴

2012年:

ロングライフビル推進協会 BELCA賞

2012年:

空気緩和・衛生工学会 技術振興賞

2012年:

空気緩和・衛生工学会 学会賞技術賞

CLOSE
竹中技術研究所研究員クローズアップ