2007年入社
学生時代の専門分野:建築材料
吉田は「研究者」という枠だけではとても語れない。
新卒で入社し、建設材料部門に配属。現在は、技術の販売を推進する部門に移籍し、従事している。
研究開発の中でも実用化を重視しており、これまでに「モルトール®」 「位置プラス®」などを実用化。事業としての成功を目指すその姿はまさに「事業家」。
もちろん、研究者としての功績も輝かしい。彼がこれまで開発した技術は「2020年日本建築学会賞(技術)」など、数多くの賞を受けた。
「研究者」としては異色の経歴をもつ吉田は、どんな経験をしてきたのか。
「研究は好きだったので、研究員として働き始めました。ですが一方で、大学時代からビジネスに関心がありました。だから入社当初は『5年後ぐらいには辞めますよ』なんて言っていました。でも、もう10年以上在籍していますね(笑)。南相馬市のプロジェクトの影響は大きかったと思います」
吉田の専門分野は、建築材料。仕上げ材料について研究していた。
2011年の東日本大震災で「除染技術が必要になる」と考えた吉田は、除染技術の研究開発にも力を入れはじめていた。
「それがあって、南相馬市の除染事業プロジェクトで声がかかりました。立ち上げ、仕組み作りをするために、1年間、現地の作業所へ。研究所に戻ってからも、検討結果を論文にまとめたり、現地からの依頼で研究を続けたりして、最後まで携わっていました」
当時開発した「ラジ・クリーンシリーズ」というシステムは、バーコード等の業界で有名な自動認識システム大賞のフジサンケイ ビジネスアイ賞を受け、特許も取得している。後に吉田が力を入れることになる「実用化」の原体験は、このプロジェクトだったのだろう。
「数百億円以上のプロジェクトを動かす経験は、なかなかできるものではありません。研究開発したことを大きくしていく、実用化してお客様の役に立つ、という体験をそのプロジェクトでできました」
「研究開発は新しいことですので、反対はつきものです。それを覆し、実績を出すことで、次の研究開発に進んでいく。これは醍醐味だと思っています」
吉田は、霧がかかった先を読み、果敢に向かっていくスタイルを貫いている。
南相馬市の除染事業に携わったあとは、タイル再生技術「モルトール」の実用化を行い、現在は「位置プラス」というアプリを開発し、建設現場のデジタル化を推進している。
「位置プラスは新規事業としてやっています。建設業は今、デジタル化の波がきていて、この先もまだ続いていくでしょう。位置プラスで早く実績を出し、さらにデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の事業を10億、100億に成長させていきたいです」
「5年で辞める」と豪語していたという入社時から10年以上経った。社内に後輩が増えてきている。
「位置プラスを一緒に進めるチームの若手はもちろん、他部署の中途採用メンバーとも関わっています。研究だけでなく、ビジネスにも関心があっていろいろやっていきたいという人はいるんです。でも、それを実現するエネルギーのかけどころがわからない。そんな若いメンバーに、自分の力で世の中に提案し、実現する力をつけてもらいたいと思っています」
吉田は、これまで研究開発、事業推進に携わって得たノウハウを、惜しみなく伝えていこうとしている。
「社会が求める技術は変化します。研究員には、それを読む力も必要です。そして、ビジネスがロジックで動いているということも知ってほしい。研究開発も、ビジネスも、霧がかった世界だからこそ、ロジカルな検証を重ねて、道なき道をつくっていかないといけません。研究開発をする人は、元々その才能があるはずなんです。仕事を共にしながら、自分が持つノウハウを伝えていきます」
2020年10月に行ったインタビューを元に執筆しています。
吉田 真悟 よしだ しんご
学生時代から材料の研究に携わる。入社後、建設材料部門、新生産部門を経て、現職。「モルトール」「位置プラス」シリーズなどを開発・実用化し、販売の仕組みを構築している。
受賞歴 |
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